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未来予知…?
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「な、なんですか……?」
ひ、一人……? まさか、一人でゲームを? いや、そんなはずはない……
「あれ、言いませんでした? 今回の保護対象です」
「保護対象?」
「ええ。保護に乗れば任務完了です」
なるほど……なんて単純な任務なんだ……僕でもできるな、これ。というか、引きこもり派って事は美雨さんも晴ちゃんも引きこもりって事か。たまに外に出て任務をする程度なのだろう。多分。とはいえ、今回の任務はこれからだ。保護に乗らなければいけないらしいのだから。
「もしかしてYIKの皆さんですか?」
「ええ、そうですよ」
「助けてください!!」
「もう大丈夫ですから」
なんだこの包容力は(驚愕)。それになんだ、こいつ、勇者育成協会を知ってる? YIKってそうだよな。略だよな……そのはずだ。
そんなことはさておき、ここはECO社じゃなかったのか……あれ? ブラック企業撲滅って言ってたよな? こんな簡単でいいのか? いや、駄目だろ。もしかして――これからが本番?
「伊勢谷さん察しましたか。そうです、ここからが骨の折りどころです」
いやなんだよ、骨の折りどころって。いや、意味は伝わるか……って、そうじゃない。ここからが大変って何するんだよ。ブラック企業に乗り込むのか? 乗り込んで表からぶっ壊すのか? 組織を?
不可能だろう。到底無理だろう。だけどやってのける自信を彼女は、美雨さんは持っていた。だからどうする? だからなんだ? やってやる。やって見せる。やってのけてひと泡吹かせてやる。そんなところか。長い自問自答を終えたのか、美雨さんは準備をしていた。って、人の家の冷蔵庫勝手に開けるなあああ! 駄目だから! 犯罪に近い行為だから!! 窃盗はまずいってば!!
「これ、準備してたんですか?」
「え?」
「え、ええ。あなた達が来るとは聞いてたので」
「カロリースティック……に、エナジードリンク……気の利いた差し入れありがとうございます」
笑顔だけは可愛いんだよなあ、この人。
「今余計なこと言いましたか?」
静かに高い声でそう言われる。
「い、いえ、ナンデモナイデス」
こう返すしかないだろう。というか、これしか返せないだろう。ごめんなさい、いや、ほんとごめんなさい……許してくださるのならあなたに一生ついてゆきます。という冗談もほどほどにしておいて、任務の概要を再び聞かないとな。じゃないと何しに来たんだこいつってなるし、何より王族派と勘違いされるかもしれないのはキツイ。中には王族派と勘違いされて引きこもり派に殺された人もいるらしいしな。まあ、とにかく。ここで僕の人生を終わらせないためにはそれ相応の覚悟と行動がいるわけですよ。それが任務の概要を聞くことという。笑えない冗談なんですね、これが。間違った行動をとればその時点でおじゃん。すべてがゼロからやり直し……とはいかず、ゲームオーバーだ。それはさすがにキツイ。
「美雨さん、概要を聞いても」
「ええ。そうですね。今から乗り込んでひっ潰す。ですね」
「え……?」
おいおい、笑えない冗談が返ってきたぞ。王族派をひっ潰す!? 犯罪だぞ!! 王族派を潰すことは憲法違反だ。それに、そんなことしたら犯罪にならなくても命が危ない。危なくなくても何かが危ない。えっと、何言ってるかわからねえと思うが――
「大丈夫ですよ。王族派からしたら既に悪名とどろくYIKですし」
「悪名とどろいてたら勇者じゃなくなっちゃうんじゃ……」
「突っ込みはなしです」
「あ、はい」
とはいえ、どうするかだな。王族派に乗り込んで命を危険にさらしたくない気持ちもある。うーん、どうする。降りるか? いや、ここで降りたら妹を助けるなんて大口叩いたのが無意味になるしな……そうか、ここは神に祈るか。天の神様の――
「杏子、本当にお前ってやつは……」
「ごめ、んね……」
「もうしゃべるなよ、もうしゃべるなよ……」
また――また幻想が見えた。妹が血を出して倒れている……? それを僕が支えてる……一体何なんだ、これは。普通に考えたら未来予知? なんだろうけど僕にそんなスキルはないし。言えることは――なんだ? 何もない。何でもない。あくまで僕の仮説だからね。何でもないことにした。何でもなかったことにするしかなかったのだ。
「伊勢谷さん、いいですか?」
「はい」
「下手しても手抜きはしないでくださいね」
「手抜き……?」
「ええ。取り締まるんですからしたら困るでしょう?」
「まあ、そうですね」
「ということではい、どうぞ」
「なんです? これ……」
「武装キットです」
ファっ!? なんでそんなものがいるんですかねぇ……もしかしてやばい事始めるとかですか? そうですよね? この状態明らかにそうだ……何を始めるんだろう……
終わらないパーティーが始まっちゃう気がした。終わらせてはいけない何かが。杏子と僕のいたちごっこに美雨さんを突き合せていいのだろうか。様々な疑問が飛び出す。だけど、その中から僕が選び出したのは――そうだな。平和な未来だ。
ひ、一人……? まさか、一人でゲームを? いや、そんなはずはない……
「あれ、言いませんでした? 今回の保護対象です」
「保護対象?」
「ええ。保護に乗れば任務完了です」
なるほど……なんて単純な任務なんだ……僕でもできるな、これ。というか、引きこもり派って事は美雨さんも晴ちゃんも引きこもりって事か。たまに外に出て任務をする程度なのだろう。多分。とはいえ、今回の任務はこれからだ。保護に乗らなければいけないらしいのだから。
「もしかしてYIKの皆さんですか?」
「ええ、そうですよ」
「助けてください!!」
「もう大丈夫ですから」
なんだこの包容力は(驚愕)。それになんだ、こいつ、勇者育成協会を知ってる? YIKってそうだよな。略だよな……そのはずだ。
そんなことはさておき、ここはECO社じゃなかったのか……あれ? ブラック企業撲滅って言ってたよな? こんな簡単でいいのか? いや、駄目だろ。もしかして――これからが本番?
「伊勢谷さん察しましたか。そうです、ここからが骨の折りどころです」
いやなんだよ、骨の折りどころって。いや、意味は伝わるか……って、そうじゃない。ここからが大変って何するんだよ。ブラック企業に乗り込むのか? 乗り込んで表からぶっ壊すのか? 組織を?
不可能だろう。到底無理だろう。だけどやってのける自信を彼女は、美雨さんは持っていた。だからどうする? だからなんだ? やってやる。やって見せる。やってのけてひと泡吹かせてやる。そんなところか。長い自問自答を終えたのか、美雨さんは準備をしていた。って、人の家の冷蔵庫勝手に開けるなあああ! 駄目だから! 犯罪に近い行為だから!! 窃盗はまずいってば!!
「これ、準備してたんですか?」
「え?」
「え、ええ。あなた達が来るとは聞いてたので」
「カロリースティック……に、エナジードリンク……気の利いた差し入れありがとうございます」
笑顔だけは可愛いんだよなあ、この人。
「今余計なこと言いましたか?」
静かに高い声でそう言われる。
「い、いえ、ナンデモナイデス」
こう返すしかないだろう。というか、これしか返せないだろう。ごめんなさい、いや、ほんとごめんなさい……許してくださるのならあなたに一生ついてゆきます。という冗談もほどほどにしておいて、任務の概要を再び聞かないとな。じゃないと何しに来たんだこいつってなるし、何より王族派と勘違いされるかもしれないのはキツイ。中には王族派と勘違いされて引きこもり派に殺された人もいるらしいしな。まあ、とにかく。ここで僕の人生を終わらせないためにはそれ相応の覚悟と行動がいるわけですよ。それが任務の概要を聞くことという。笑えない冗談なんですね、これが。間違った行動をとればその時点でおじゃん。すべてがゼロからやり直し……とはいかず、ゲームオーバーだ。それはさすがにキツイ。
「美雨さん、概要を聞いても」
「ええ。そうですね。今から乗り込んでひっ潰す。ですね」
「え……?」
おいおい、笑えない冗談が返ってきたぞ。王族派をひっ潰す!? 犯罪だぞ!! 王族派を潰すことは憲法違反だ。それに、そんなことしたら犯罪にならなくても命が危ない。危なくなくても何かが危ない。えっと、何言ってるかわからねえと思うが――
「大丈夫ですよ。王族派からしたら既に悪名とどろくYIKですし」
「悪名とどろいてたら勇者じゃなくなっちゃうんじゃ……」
「突っ込みはなしです」
「あ、はい」
とはいえ、どうするかだな。王族派に乗り込んで命を危険にさらしたくない気持ちもある。うーん、どうする。降りるか? いや、ここで降りたら妹を助けるなんて大口叩いたのが無意味になるしな……そうか、ここは神に祈るか。天の神様の――
「杏子、本当にお前ってやつは……」
「ごめ、んね……」
「もうしゃべるなよ、もうしゃべるなよ……」
また――また幻想が見えた。妹が血を出して倒れている……? それを僕が支えてる……一体何なんだ、これは。普通に考えたら未来予知? なんだろうけど僕にそんなスキルはないし。言えることは――なんだ? 何もない。何でもない。あくまで僕の仮説だからね。何でもないことにした。何でもなかったことにするしかなかったのだ。
「伊勢谷さん、いいですか?」
「はい」
「下手しても手抜きはしないでくださいね」
「手抜き……?」
「ええ。取り締まるんですからしたら困るでしょう?」
「まあ、そうですね」
「ということではい、どうぞ」
「なんです? これ……」
「武装キットです」
ファっ!? なんでそんなものがいるんですかねぇ……もしかしてやばい事始めるとかですか? そうですよね? この状態明らかにそうだ……何を始めるんだろう……
終わらないパーティーが始まっちゃう気がした。終わらせてはいけない何かが。杏子と僕のいたちごっこに美雨さんを突き合せていいのだろうか。様々な疑問が飛び出す。だけど、その中から僕が選び出したのは――そうだな。平和な未来だ。
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