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引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。(NEXT)
執事
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「お待ちしておりました」
待っていたのは、リムジンと、黒服の執事だった。
「えっと、これはいったい……」
「あなた様が、施設を作るという噂を我が主が聞いたものですから」
主? 誰だ? でも、わかることはある。その人は、金持ちだということだ。
「あの、主って一体」
「行けばわかりますよ。何しろ、あなた様に助けられたんですから」
いつの話だ? 心当たりがなかった。千葉ではないものの、千葉に近い場所にあるという。
車の中には、若い女性がいた。どこか、見覚えがあるような……
それにしても、どこから噂をかぎつけたのやら。そう言えば、三国さんに言わずに来ちゃったな。まあ、いいか……
女性に話しかけられる。その意味は、よく分からなかったが。
「あなたは、世界の分岐を選べますか?」
「え?」
そう言っていた。質問の意図はわからないが。でも、分岐という言葉にはいい思い出がないことは確かだ。また、箱の事で何か起こるのか?
その質問の後、車内は沈黙が続いた……
沈黙を破ったのは、運転手、もとい、執事だった。
「もうすぐ着きますよ」
もうすぐ着く。そう言えば、話が続き、沈黙も続いたから、外とかあまり見なかったよな。窓の外を見渡し、現在地がどこかわかるような、標識を探す。
しかし、次第に僕は思い出す。この道は、一度通ったことがある。
「もしかして、助けたいって言ってるのは、社長ですか?」
「はい。あ、でも、社長の部屋に連れていくまでここがどこか言わない約束なんです。ここで喋ったのは黙っててくださいね?」
そう言う事だったか。確かに、あの時、「いつか例は絶対にする」そう言ってくれてたよな。
「噂というより、今回の件はたまたまあなたのところのメンバーさんが教えてくれたんですけどね」
三国さんか? そう言えば、どこに任務に行ったのかは聞いてなかったや。
そうか。ここでの任務だったのか。
「いやあ、あの時にあなたが助けてくれなかったら、今頃ECO社は潰れてましたよ」
「あはは……たまたま、たまたまですよ」
そうだ。たまたま、あの時の任務がこういった結果でお礼をされるのだってたまたまだ。
「さて、そろそろつきますよ。でも、その前に」
執事の男は、一緒に乗っていた女性の方を向くと、ここでよろしいですか? と、車を降りる彼女を見つめていた。
「あの、あの人は?」
「あの人は、ハイネさんです」
ハイネって、あのハイネ=ブルッフェンか? 世界有数の歌手の?
「あの人が劇団に用があるから乗せてってくれって頼まれたものですから」
劇団? そう聞いて、外を見渡す。
『シェイクスピア記念劇場』
シェイクスピアと言えば、「ロメオとジュリー」や、「ハムレット」等、数々の「戯曲」と呼ばれる悲劇を手掛けた天才作家だ。しかし、何故?
「理由はよくわからないんですがね」
そうですか……そう言うと、再び車は走り出す。
「伊勢谷さん、こんな言葉知っていますか?」
突然、言われたものだから、反応できなかった。
「『偶然すらも引き寄せてしまう運のいい猫』って」
……? それって、確かシェイクスピアの話の「切り裂き魔」の中に登場するジャックが、偶然自分を見た猫に言った言葉だっけ?
「それって、切り裂き魔の中の一説ですよね?」
「ええ。私が思うに、あなたはまさしくその猫だと思うのです」
そんな事言われても、父さんが僕に世界線を回ってきた中でやっと見つかった世界線だ。とか言ってたし。偶然じゃない気も……
「今の言葉はどうとらえてもらっても結構です。でも、これだけは覚えていてください。猫は、必ず飼い主の元に返ってくるって」
? よく、わからなかった。猫なんて飼ってないし、飼う予定もないし。一体どういう?
「さあ、つきました」
ついたといわれ、外を見渡す。確かに、あの時から結構変わっているが、ECO社だ。
「さあ、ここからはあの女性に案内してもらってください」
と、指をさされ、待っていたのは、少し薄暗い雰囲気を持っている女性だった。なんだ? この嫌な感じは。
「ああ、彼女はボッチになりたくてあんな感じなだけですので。気にせずに」
いや、それもどうかと思う。
取りあえず、言われた通り女性に案内してもらう――
待っていたのは、リムジンと、黒服の執事だった。
「えっと、これはいったい……」
「あなた様が、施設を作るという噂を我が主が聞いたものですから」
主? 誰だ? でも、わかることはある。その人は、金持ちだということだ。
「あの、主って一体」
「行けばわかりますよ。何しろ、あなた様に助けられたんですから」
いつの話だ? 心当たりがなかった。千葉ではないものの、千葉に近い場所にあるという。
車の中には、若い女性がいた。どこか、見覚えがあるような……
それにしても、どこから噂をかぎつけたのやら。そう言えば、三国さんに言わずに来ちゃったな。まあ、いいか……
女性に話しかけられる。その意味は、よく分からなかったが。
「あなたは、世界の分岐を選べますか?」
「え?」
そう言っていた。質問の意図はわからないが。でも、分岐という言葉にはいい思い出がないことは確かだ。また、箱の事で何か起こるのか?
その質問の後、車内は沈黙が続いた……
沈黙を破ったのは、運転手、もとい、執事だった。
「もうすぐ着きますよ」
もうすぐ着く。そう言えば、話が続き、沈黙も続いたから、外とかあまり見なかったよな。窓の外を見渡し、現在地がどこかわかるような、標識を探す。
しかし、次第に僕は思い出す。この道は、一度通ったことがある。
「もしかして、助けたいって言ってるのは、社長ですか?」
「はい。あ、でも、社長の部屋に連れていくまでここがどこか言わない約束なんです。ここで喋ったのは黙っててくださいね?」
そう言う事だったか。確かに、あの時、「いつか例は絶対にする」そう言ってくれてたよな。
「噂というより、今回の件はたまたまあなたのところのメンバーさんが教えてくれたんですけどね」
三国さんか? そう言えば、どこに任務に行ったのかは聞いてなかったや。
そうか。ここでの任務だったのか。
「いやあ、あの時にあなたが助けてくれなかったら、今頃ECO社は潰れてましたよ」
「あはは……たまたま、たまたまですよ」
そうだ。たまたま、あの時の任務がこういった結果でお礼をされるのだってたまたまだ。
「さて、そろそろつきますよ。でも、その前に」
執事の男は、一緒に乗っていた女性の方を向くと、ここでよろしいですか? と、車を降りる彼女を見つめていた。
「あの、あの人は?」
「あの人は、ハイネさんです」
ハイネって、あのハイネ=ブルッフェンか? 世界有数の歌手の?
「あの人が劇団に用があるから乗せてってくれって頼まれたものですから」
劇団? そう聞いて、外を見渡す。
『シェイクスピア記念劇場』
シェイクスピアと言えば、「ロメオとジュリー」や、「ハムレット」等、数々の「戯曲」と呼ばれる悲劇を手掛けた天才作家だ。しかし、何故?
「理由はよくわからないんですがね」
そうですか……そう言うと、再び車は走り出す。
「伊勢谷さん、こんな言葉知っていますか?」
突然、言われたものだから、反応できなかった。
「『偶然すらも引き寄せてしまう運のいい猫』って」
……? それって、確かシェイクスピアの話の「切り裂き魔」の中に登場するジャックが、偶然自分を見た猫に言った言葉だっけ?
「それって、切り裂き魔の中の一説ですよね?」
「ええ。私が思うに、あなたはまさしくその猫だと思うのです」
そんな事言われても、父さんが僕に世界線を回ってきた中でやっと見つかった世界線だ。とか言ってたし。偶然じゃない気も……
「今の言葉はどうとらえてもらっても結構です。でも、これだけは覚えていてください。猫は、必ず飼い主の元に返ってくるって」
? よく、わからなかった。猫なんて飼ってないし、飼う予定もないし。一体どういう?
「さあ、つきました」
ついたといわれ、外を見渡す。確かに、あの時から結構変わっているが、ECO社だ。
「さあ、ここからはあの女性に案内してもらってください」
と、指をさされ、待っていたのは、少し薄暗い雰囲気を持っている女性だった。なんだ? この嫌な感じは。
「ああ、彼女はボッチになりたくてあんな感じなだけですので。気にせずに」
いや、それもどうかと思う。
取りあえず、言われた通り女性に案内してもらう――
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