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2部 再起編
Project.24 あなたのために
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その後薬をなんも何度も求める浅篠さんに対して、何回と何回もそれを止める十六夜くん。最初こそ何も変わらなかったが、最近は少しだけ十六夜くんに止められると薬を求める手が泊まるらしい。まあそれでも一時しのぎに過ぎないかもしれないけれど、それでも今の浅篠さんにとっては取らない理由がない手なのだ。今絶望の縁にいる彼女を救える人間は限られている。十六夜くんがその人なのかは分からないけれど、少なくとも今彼女の傍に必要なのは十六夜くんみたいな1度道を間違えようとした人間だろう。
辛いほど薬に手を伸ばす気持ちがわかる十六夜くんだからこそだ。
「なあ、またアイドルやりたいんじゃないのか?」
「やりたい......やりたいけどもう無理でしょ......?」
あの一件以降の彼女は生きる目標そのものを奪われたからこそその気力のなさが生活に現れているほどだった。正直、あんな状態の人間がその手の人間に薬とかを持ちかけられたらひとつ返事でうんと答えるかもしれない。もう戻れないならなんでもしてやると、そういう気持ちになってしまうのだ。
そういうのは一種の鬱状態なのかもしれないが、彼女の場合は恩人である社長に裏切られた、ということなのだろう。
「あの社長とはどういう関係だったんだ?」
「社長は私を母親から引き離してくれた恩人......それだけよ」
「じゃあ枕なんてのは全くの嘘なのか?」
「そりゃそうよ......」
しかし世間はあらぬ証拠に色々と跳ねあげた結果を求める。なんの変哲もない石とか、そういうのに古代の化石です!とかそうやってありもしないでっち上げをするのだ。でもそれってきっと何かニュースがないとやっていけないとかそういう事情もあるんだろう。
でも......そういうのに私たちを巻き込まないで欲しい。その気持ちだけが強かった。たとえどんなに面白い情報が欲しかったとしても私達は芸能界で生きる人間である前に一人の人間だ。プライバシーはあるし、他人に付け入って欲しくない事だってある。そういう事情に対してでっち上げ、お金を稼ぎ......そこまでしないとやっていけないのかもしれない。だけども、守るべきものは守って欲しい。そう思う。
辛いほど薬に手を伸ばす気持ちがわかる十六夜くんだからこそだ。
「なあ、またアイドルやりたいんじゃないのか?」
「やりたい......やりたいけどもう無理でしょ......?」
あの一件以降の彼女は生きる目標そのものを奪われたからこそその気力のなさが生活に現れているほどだった。正直、あんな状態の人間がその手の人間に薬とかを持ちかけられたらひとつ返事でうんと答えるかもしれない。もう戻れないならなんでもしてやると、そういう気持ちになってしまうのだ。
そういうのは一種の鬱状態なのかもしれないが、彼女の場合は恩人である社長に裏切られた、ということなのだろう。
「あの社長とはどういう関係だったんだ?」
「社長は私を母親から引き離してくれた恩人......それだけよ」
「じゃあ枕なんてのは全くの嘘なのか?」
「そりゃそうよ......」
しかし世間はあらぬ証拠に色々と跳ねあげた結果を求める。なんの変哲もない石とか、そういうのに古代の化石です!とかそうやってありもしないでっち上げをするのだ。でもそれってきっと何かニュースがないとやっていけないとかそういう事情もあるんだろう。
でも......そういうのに私たちを巻き込まないで欲しい。その気持ちだけが強かった。たとえどんなに面白い情報が欲しかったとしても私達は芸能界で生きる人間である前に一人の人間だ。プライバシーはあるし、他人に付け入って欲しくない事だってある。そういう事情に対してでっち上げ、お金を稼ぎ......そこまでしないとやっていけないのかもしれない。だけども、守るべきものは守って欲しい。そう思う。
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