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第1部 高校編

Project.02 あきらめなければ何とかなる

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 私を見てくれた彼女の口から飛び出したのは興味がないという一言。その一言を残し彼女は生徒たちが自然と作っていた彼女の歩くスペースを歩いて教室に入っていった。期待こそ大きすぎたのかもしれないが今は断られた、という事よりも彼女が振り向いてくれたということの方が私にとっては大きかった。
 それから放課後になり変わらずアプローチを続けるが事あるごとにすべて断られていった。

 しかしそれでもあきらめきれない私はその後も何度かのアプローチを彼女に行うもそのすべてを拒否される。二度目、三度目と回数を重ねるごとに彼女の表情は少しずつ変わっていった。そして数えるのを忘れて大体10数回目。彼女の方から話をしてあげると誘われ近くのカフェに入ることになった。当然彼女からしたらうっとおしい私をいい加減追い払いたい、ということなのだろうけれどそんなことを気にせず私は勧誘を続けようとする。
 カフェに入って最初に口を開いたのは彼女の方だった。その口は少しだけお店の明るい雰囲気とは相反していた。

「私はモデル。それはわかってるんだよね?」
「もちろん。だから頼んでるんだよ」
「……モデルだけやってたいんだよ私は」
「でもアイドルやりたかったって聞いたことあるよ……?」
「それは過去の話。今はもう関係ないの」

 聞いたことがある、と少し濁したように言ってはいるが本当は彼女が昔雑誌のインタビューでモデルになったきっかけは?と聞かれたときにアイドルを目指そうとしていろいろあってモデルの道に進みました。そう答えたことがあるのである。理由こそ直接聞いてはいないが何かがあり彼女の中でアイドルというものは目指すものではなくなってしまった、と。だけどもしも彼女の気持ちとは別に諦めることを強いられたのだとしたら。諦めなければいけない理由があったのなら。

「そうね……あなたのその何度断られてもアプローチを続けてくる根性に免じて一個だけ条件を出してあげる」
「え?」

 今は関係ない。その言葉の後沈黙していた空気を壊したのは彼女の方からだった。条件があるけどそれをもし達成できるほどの本気があるなら一緒にやることを検討してくれる、というものだった。すっかり彼女はこれ以上は無駄、とかいって完全に断ると思っていた私にとってそれはうれしい反面少し怖かった。彼女の考えていることはわからないし、だからこそ怖い。だけどもそれでも私は彼女が勇気を振り絞って条件付きではあるけれど話になってくれるのなら、どんな条件だろうと受け止めるつもりだった。
 もちろん私の出来る範囲で。……だけども彼女の出した条件はそんな私の気持ちとは別に、めちゃくちゃに難しい条件を要求した。

「私だけの曲。それをもしあなたが作れるのならば私はあなたのやりたいことに協力してあげる。だけど私が納得のいくものを用意すること。話はそれだけ」

 彼女が出した条件はメンバーが今より増える、とかそういうレベルのものとははるかに違う最初からレベルの高さだけを求めるような無茶ぶりだった。
 アイドルが作詞も作曲も?私が想像してたものとは違ったこともありその場で少しだけ沈黙する。
 彼女だけの曲、それを作ることを条件に彼女はこの場から逃げるようにカフェを出ていった。

「……あっ!? しれっと私のおごり!?」

 代金を押し付けるようにふらっと消えていった。今月の給料が少しだけ無駄になったようなむしろ安いような……
 とはいえ彼女の納得のいくレベル。となると遊びレベルのものとかそういうものではない正真正銘「本物」の曲なんだろう。要は彼女がもしアイドルをやるならば半端な覚悟では乗らない。最初から本気でやるということだろう。そうと決まれば早速行動するまで。曲作りはどっちにしろ今後ぶつかる課題なんだ。どうせ詰まるなら最初から詰まってやる。
 とりあえずはちょっとは詳しい人に聞いてみた方がいいだろう。例えば……そう、例えば軽音部とか。
 彼女の想像を超えるような......そう。私ですらワクワクできるような曲を。
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