昴の輝く空の下で

ジャンマル

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四十二節/夢

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 博士から僕はいろいろな話を聞いた。そしてその中で力についてのいろいろを聞いた……彼を紹介してくれたソフィさんはこの力についてある程度把握していたのだろうか? だとしたらそれが本来駿人に伝えたかった事なのかもしれない。だけど焦るあまりうまく言葉にできなかった、と。彼女はきっと恩人である探偵の男と駿人が巡り合う未来を予見したんだろう。だからこそ出会った時はよろしくと……それくらい彼女にとっては大切は人なのだろう。

「ところでだが」
「はい?」
「そろそろ帰るなら送っていくが」
「あ……そうですね。そろそろ帰ります」
「ここで聞いた話はソフィ君以外と共有しないように」
「口止め料でも取りますか?」
「いいや、いらないよ。それに――君はたぶんそろそろ選択の時、なんじゃないかな?」
 見透かされたような言葉。話した覚えはないのにこの人は僕が悩んでいることについてズバッと言い当てた。それは未来を見ての話なのか分からないけれどそれが口止め料、ということなのだろう。そろそろ、か……
 文化祭はもう来週に迫っている。そしてその時が来れば冴城さんの気持ちに対して答えを出してあげなきゃいけない。いつまでうじうじ迷っているんだ――といわれてしまうだろうけどそれでも僕にとっては重要な問題なのだ。

 博士には山を下りるための特殊なルートを案内してもらい、山を出れるようにしてくれた。その途中、いくつか意味深なことも言っていた気がするけれど――夢を現実にするかどうかは己の自由。だけど未来予知は運命であり、明確な経緯までは見えない。だからこそ見てしまったら特に注意した方がいいという警告。もし未来予知が同じものが二日ほど続いてしまった時は、博士の開発した特殊な薬により一時的に脳を覚醒させて、一定時間睡眠時間をずらすこと。そうしなければそれが日常の一部として次第に違和感が消えていき、夢を見る時間の方が多くなってしまうから、だそうだ。

「僕の予知……あの事また巡り合う、ってことなのか?」

 今日は特に空が住んでいて博士としても今日は未来予知をするには絶好な予知日和だと。僕は家に帰る途中の道で、いろいろと考えて家に帰った。
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