傷者部

北斗

 現場に到着した。その場の空気は最悪であり、ありとあらゆる現場にいる人間全員がバチバチな雰囲気だった。警察以外にも制服を着た運転手のような人、荷物を持った人、色々とその場に立ち尽くしていた。彼らが目撃者なのか関係者なのかはわからかい。だけど全員が警察に話を聞かれており、中にはあきらかに怒りを顕にしている人もいる様子から色々と察するものがある。
 そして奥の方には誰も近づけなくなっているがなにかに覆いかぶせるようにして敷いてあるブルーシートが。……その中身はわかるが想像したくない。してしまうと気持ち悪くなってしまう。

「あの、先生！」
「よかった。合流出来たか」
「今はどういう状況ですか？」
「見ての通りだよ。全く死因がわかってない。『 目撃者』が居ないんだよ」

 いなければおかしい状態で目撃者が居ない。その矛盾だけを抱えた現場であるからこそ警察の方の怒りなどがふつふつと伝わってくる。そして俺たちは何も聞かれることは無いだろうがどうやら最初に警察に通報したのがタクシーの運転手らしい。たまたまタクシーを止めようとした際に人が倒れているのを目撃し、警察に連絡。その後、死亡が判明したと。
 尚更何が原因なのか話だけではわからないのは間違いなかった。わからないからこのままでは自殺で処理され迷宮入り。実に簡単な話だったがそれで終わらせていいほどの心を持ち合わせていない。事故なら責任を取らせたい。自殺なら北斗に何があったのかを調べなければならない。
 どちらにせよ最悪な結末がこれであることに変わりはなく、連絡さえ取れれば変えられたかもしれない………心にこれから残り続けることになるかもしれない、後悔が押し寄せる。

「うっ……」
「菜緒ちゃん、少し向こうで休もう」
「お願いします」

 菜緒は先生に任せて俺は警察の話している内容を聞いたりして何か手がかりを見つけようと思う。