傷者部

ジャンマル

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菜緒と〇〇と

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 菜緒と二人でデートをしている中の事だった。ひとつの電話が俺の元にかかってきた。連絡先は先生だ。そして電話に出る。要件を聞いても何かに焦っているようで咄嗟になにも答えてくれない。要件が分からないから電話のきりようもない。電話だけがひたすら続いて沈黙の時間が続く。そしてそれが10分ほど続いてからやっと先生が口を開いた。菜緒は居る?と。

「はい。菜緒です」
「菜緒ちゃん、よく聞いて」

 そして菜緒の顔が青ざめていた。なにがあったのから分からない。本人が教えてくれないから。先生からの電話をもう一度受け取り先生の言葉を待った。菜緒の時も相当な心で言ったんだろう。俺にそれを伝えるのにも相当な時差があった。何を伝えようとしているのか。どうしようというのか。そしてそれは俺の耳に入る。

「北斗くんが……死んだ」
「は……?」

 人聞きの悪い冗談だとしか思えなかった。だってあいつは夢が出来たって言って俺たちの前から姿を消したんだ。それなのに死んだ?なんで?

 先生からのさらに詳しい話を聞く。詳細はまだ分からないが警察からの連絡では自殺の可能性が高いんだと。ますます分からない。なんでそんなことになったのか。そして菜緒は顔色がどんどん悪くなる。自分のせいだも思い込んでいるのが目に見える。

「なんで北斗が……」
「とりあえず先生と合流しよう」

 先生と合流し、警察に詳しい話を聞くことになった。まさかデートをしようって話をして流れでこんなことを聞くなんて……先輩の方もすごく心配だけど今はそれどころではなくなってしまった。
 そして問題は菜緒をどうやって連れていくかだ。今ものすごく気分が悪いだろうから、少しだけ休んでから行くのは間違いないが、多分先生のところまで行くまでにまた気分が悪くなることがあるだろう。それを繰り返し、向かった先には死の詳細が待っている。
 正直、本人にとってかなりの地獄になる。
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