傷者部

ジャンマル

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その気持ち、ちょっと待って

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「じゃあ菜緒が女装してるのは北斗への親心的なところがあるってこと?」
「はい」
「そっか。なるほどな」

 改めて菜緒視点から話を聞いてみると、北斗とはまた違った形の目線で面白さはあったがそれでも共通しているのがお互いに依存していないとやってこれなかった、ということだ。依存という行為自体がおまり良くは無いと思っている俺からすると浮いた話っていうわけではないけど二人がお互いに存在して、求め合っていないと生きてこられなかった、というのは事実なんだろう。そのために、飽きられないために菜緒は沢山尽くしてきたし、北斗はそれに答えていたと。
 でも、そんなのがずっと続くはずもなく、高校に入ってから北斗はだんだんと菜緒との距離が見えるようになる。お互いのことを思いながらもその心はすれ違い始めていて、菜緒の依存が激しくなると同時に逆に北斗自身の菜緒への依存度は減っていった。完全に心のバランスがふたりの間で変わり始めていた証拠でもあったんだろう。彼の最後に俺たちに向けた言葉は菜緒をよろしくだったし。
 人間は依存すればするほどどこかでタカが外れて本当に取り返しのつかないくらいにおかしくなってしまう。それをすることで大切な人を無意識に傷つけてしまうことをきっと依存してしまっている方は気づかないだろう。

 それは菜緒も例外ではない。それだけの話だったと思う。北斗の親が居ないとかそういうのは建前で、自分がズルをしている自覚はあっても求められてしまうとそれがだんだんと嬉しくなってしまう。錯覚……とはちょっと違うのかも。
 菜緒自身も人間としては当然のことだと思うし北斗もまた人間としては当然だ。
 小学生だった当時の北斗からすれば、菜緒が受け入れてくれなければ孤独に耐えきれなかったはずだし。でも北斗が大人に近づくにつれて、一人でもやっていける。そういうことを示したくなるのもまた人としては当然なんだと。

「君は僕のこと……どう思ってるの?」
「菜緒は優しくされたいのか?」
「それはーー」
「慰めなんて誰でもできる」
「違うよ!誰でもいいわけじゃないよ!」

 わかっている。彼の気持ちは。北斗自信が前に話してくれたこともある。だけどズルはしない。ちゃんと菜緒が気持ちと向き合ってからでも遅くない。少なくとも俺はそうした上でまた伝えてくれた方が嬉しいと思った。
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