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エクストラターン

施設

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 施設に戻った僕たちは、花園くんを探した。

「おーい、花園くーん!」
「圭ちゃーん!!」

 ……返事がない。それどころか、人影すら感じられない。

「……箱の、力か?」
『ええ、そうですよ』
「糞野郎が!!」
『あの箱は望んだ願いの真逆を叶えるもの。つまり、あなた達の望んだ因果から外れた平和な世界線。を、最悪の状態で叶えたんですよぉ!』
「……因果からはるかに遠い……それどころか、因果の干渉できない、何もない世界……」

 それは、何もなかった。パッチワークゾーンとはまた違う、何かだった。
 町もない。水もない。食料もない――そんな世界線だった。

「あ、伊勢谷さん、あれ」
「っ!!」

 いた。人が、いた。あれは――

「花園君!!」

 唯一の生存者――いや、唯一因果から外れることのできたとしたら、それは箱の力を持った僕やヘレンのような人間だけだ。
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