上 下
46 / 53

『お人好し』 2キャラ目

しおりを挟む
 んんー?
 あんれれー?
 なんかー。
 変だぞー?
 わかるぞこの感じー。
 何かを期待しているぞー。
 電話の彼はー。
 なんというか出歯亀的なー。

「した、って?」

 なので、少し泳がせてみた。
 聖は相変わらず大人しく隣りにいる。
 まだ髪が乾ききっていなくてかわいい。
 こんな可愛い子が自分のものだなんてと思うと急に愛しくなり、抱き寄せた。
 頬に唇をつけるだけのキスをし、

『せやから、あの』
「エッチ?」

 なかなかその単語を言えないヤガミくんの代わりに言ってあげた。
 あるいは、ヤガミくんではなく目の前にいる聖に言った。
 しかし。
 あれ、やばい。エッチじゃなくてセックスの方が男の子っぽいか?今の言い方であってたかなと自分の芝居に不安がってると、

『エッ、そっ、せや。もうしたんか』
「ああ、うん。今」
『えっ!?』

 びっくりして声が上ずっている。
 どんどん思春期男子になってる。
 いやいやヤガミくん、もっとがんばれ。キャラと設定維持しろ。

『えっ、今?今日したんか?』

 おっ、いいぞ。戻ってきたぞ。

「いや、今あの、今さっき終わって」
『うん』

 うんじゃないでしょ。維持しろって。

『今日?今日したんか?初めて』

 ああ、今日初めてしたのかと訊いてるのか。
 筆降ろしとか何かを捨てたとか、そういうのが重要なのだ。

「俺は、ゲームしてて」
『うん』

 ああ、俺って言っちゃったよ。
 なんかすんごい恥ずかしわー。
 っていうかうんじゃないでしょヤガミくん。
 ヤガミくんの中の人出てきてるよ。
 関西弁じゃない素直な少年出てきてるよ。

「えっと、彼女はシャワー浴びて出てきて、あ」
「ん」

 チュッ、わざと音が鳴るようなキスをされた。

「今、なんかキスされた」

 なぜか自慢したい欲とともに言う。

『なんで』
「わからん」

 いやわかるけど。わからん方が鈍感男子っぽくて粋な感じがした。

『えっ、いま裸?裸?カノジョ』

 更にクサナギくん(仮)が出てきたが声が焦りすぎだ。

「僕は着てるけど」
『おめえじゃねえよ。彼女っ』

 そんなのわかってるけど。
 必死なクサナギくんに笑みが浮かんでしまう。

「うん…。裸かな」

 聖を見ながら言うと、聖が自分の身体を見下ろす。タオル一枚の身体を。
 電話越しにひょおおーみたいな声にならない声がした。
 寒くない?と口パクで聖に訊くと、平気、と口パクで返ってきた。
 ごめんねと申し訳なさそうな顔で声に出さずに謝ると、ううん、と首を振る。
 先程より幾らか優しい、というか怒ってはいない普通の顔に戻っていた。
 やっぱりこの子が一番好きだなと思っていると、

『あのさ』
「うん」
『あれ、二回戦とかしねえの』
「ん?」

 一瞬なんだと思ったがすぐに意図がわかった。
 おいおいマジか。

「えっ?なんの」
『いやだから』
「エッチ?」
『うん。そう』

 維持しろって関西弁。

「ええー?でも体力が、さあ」
『二、三回くらいヨユーでいけんだろ』

 やったことねえのに言うなよ。
 一人でやんのとはちげーんだよ。男女のやり方ともちげーし。やったことねーけどさ。

「いやでももう若くないし」
『はあ?お前何言うてんねんっ』

 遂にキレだしてしまった。今日イチのキレ声かもしれない。

「なに?」

 喚き声が聞こえたらしく聖が状況を尋ねてくる。

「なんか、二回戦しないのかって」

 ケータイを離し、小さな声でそう言うと聖は一瞬考え、

「してるとこ聞きたいの?」

 そう言ってきた。
 んー?と私は首をかしげる。
 どーなんでしょと。
 あるいはわかってないふりをした。
 その顔をじいっと見つめると、

「あ、ちょっと」

 聖がケータイを取り上げ、

「ねえ」

 なぜか少し上を向いてヤガミくんに話しかける。
 見えない相手に、こっちのが上よとばかりに。

『はい』
 
 素直ないいお返事が返ってきた。

「聞きたいの?」
『え?』

 聖がスピーカーモードに切り替えた。

「あたし達がしてるとこ」

 しばしの無言。そりゃそうだ。

「ねえ。どうなの?」
『あ、や、あの』

 あーもう完全に地が出ちゃってるよ。
 維持できないとこまで来ちゃった。
 答え如何でこの後の流れが大きく変わるのだし。
 それは私もだけど。

「ねーえー」
『あっ、聞きたい!聞きたいです!』
「だって」

 聖が笑顔を向ける。
 自分はもう一度くらいしたい、電話の相手は聞きたい、直々にリクエストされた、じゃあするしかないでしょ と、その笑顔が言っていた。

「ぅぇぇー」

 対して私は全力で嫌な顔をする。
 聞かれるのもだが二回戦がキツイ。

「なんで」
「だって全然、」

 知らない人だよと言いかけるのを飲み込む。
 それはあまりにも悲しい。
 一緒に芝居を作り上げてきた仲間だ。
 北中のやつらを倒すと誓った仲間だ。
 そんな彼らが聞きたがってる。
 もう知らない仲じゃない。

『あの、』

 焦れたようにヤガミくんが訊いてくる。

「待って、今」

 どうする?ここでする?ベッド行く?と聖が口の動きだけで伝えてくるが、

『あの、ちょっと待ってくださいっ!』

 言うなりバタバタバタ、ガサガサという音がケータイから聞こえてきた。
 その後もタッタッタ、ガチャ、バタンという音も聞こえ、

『どうぞ』

 はあはあという音とともにヤガミくんが言う。
 どうやらどこかへ移動したらしい。
 周りの音から公園かどこかに居たようだが。

「周り、人いない?」
『はい』

 聖が確認するとはっきりとした返事が返ってきた。
 なんとなく移動先はトイレかなと思った。
 頼むから一人用の簡易トイレ風のではなく、いくつか個室があるようなとこに移動しといてくれと思った。
 更に、ジィーッ、カチャカチャカチャという音もした。
 ジッパーを下ろしてベルトを外す音か。
 今夜ではない、これからのご飯のおかずにするらしい。
 うわあもう、生々しいこと。やあだもう。
 その音を一緒に聞いた聖と顔を見合わせる。
 彼女からは、だから、聞かせてあげようよという意図すら見えた。
 いやあ、それはちょっと、とヘラヘラ顔で誤魔化していると、

「うぉわあっ」

 突然押し倒され、下着を脱がされた。

「いや、待って、待って、待って!」

 本気の待ってなので待ってくれた。そして、

「向こう、男の子だと思ってる?」

 声に出さず、ほとんど口の動きだけで聖がそう伝える。男の子、と私の方を顎でしゃくりながら。
 たぶん、と私が声に出さずに答える。
 私が二回戦を渋るのはこっちが受けに回ってしまうからだ。
 声を出す側になる。
 声は聞かれたくない。
 なのに、聖はケータイを私の顔の横あたりに放る。
 衣擦れの音がしだす。
 向こうにも聞こえてるだろう。

『いいいい今何されてる』

 ヤガミくんが興奮した声で訊いてきた。

「何って、うっ。舐め、られてる、うああっ」

 自分の声が高くて嫌だった。
 出さないようにするが無理だ。

『ど、どこ、どこっ』
「うっ、くっ」

 ガチャガチャとベルトの音がした。
 これをおかずにメシをもりもり食ってらっしゃるらしい。

「言って」
『言って!言って!』

 聖が命令し、ヤガミくんが懇願する。

「お、」

 オマンチョスは違うよな。でも、だったらそれ言うの?ついてないのに?
 だが、本来のモノの先端にも足らない質量を、舌でしごくように舐められ、

「く、ああああ」
『おいイオリ!答えろや!』

 快感と恥ずかしさに悲鳴を上げると、音が割れそうなほどの怒声でヤガミくんが訊いてきた。

「お、おちんち」

 恥ずかしくて最後まで言えなかった。
 それでもケータイ越しにオアアアー!!!みたいな雄叫びが聞こえてきた。
 そんな大声をあげて大丈夫なのかと心配になる。

「ああ、ああああん」

 更に聖は冷たい手で私のお腹や背中、内ももを撫でまくる。
 私が弱いやつだ。
 なぜかいつも以上に女の子みたいな声が出てしまう。
 俺は今、いや僕は今イオリくんなのに。
 ケータイ越しにはあはあという荒い息遣いが聞こえた。
 その声がこちらの快感に油を注ぐ。

「待って、やめて、いっちゃうから」

 聖にだけ聞こえる声量で言うと、

「いけばいいよ」

 私をねぶっていた口を休めてそう言った。
 その目が熱っぽい。
 見ると自分の手で自分の股間を弄っていた。
 ああ、それ弱いやつ。
 視覚的に。
 卑猥で、従順で、大変申し訳なくて、すごく愛おしい。
 だから、

「んっ、く」

 視覚、聴覚、状況。
 すべての刺激が快感に代わり、腰が浮く。
 歯を食いしばって耐えようとするがダメだった。

「うっ、うっ」

 びくんびくんと尚も身体が跳ねる。

「あ、あ」

 波が過ぎ去ると身体が弛緩し、力が抜けていく。
 目が涙で潤む。
 はあ、はあという自分の声がうるさい。
 聞かれたくない、なのになぜか二人に聞かせてあげたかった。

『……お前、イッたんか』
「ああ!?イくわけねーだろ!早漏かよ!」

 声を作り、強がってそう言った。
 こんなもんでイクかよ、早過ぎんだろとバカにしたように。
 それに対し、聖の目がギラリと光ったのを私は見逃さなかった。

「ヒっ」

 喉から恐怖の声が出る。
 両足を引っ張られ自分の元に引き寄せると、聖は自分から出た液体と私から出た液体でぐちょぐちょの部分を合わせた。
 そして男がするみたいに腰を振り出した。

「ん、ぎいっ」

 更なる快感に私は歯を食いしばる。

『どないしたんや!』
「あ、あ」

 ぶつけられる腰に声が勝手に出る。

「上に、乗っ、かられてる」

 おおおとまたケータイ越しに声が上がる。
 あれ?違う?正常位?
 女性上位?
 騎乗位?
 なんていうのこの状況。男女では。
 そんなことを考えてるうちに、聖が大きく膨らんだ粒を私の中に入れてこようとする。

「んっ」

 思わず手で口元を抑えるが、簡単に取られ、覆いかぶさってきた。
 女の子の柔らかさと熱と重みがダイレクトに伝わる。
 これにだったら押しつぶされてもいいという大好きな質量。

「あ、ああ。や、あ」

 幸せ過ぎて声が出る。その時、

『ねえ。この人、女の人なんじゃないの?』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...