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21、攻防と策士と軍師
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響季は電話で柿内君に相談を持ちかけた。とりあえず、事の経緯を話す。
「よかったじゃないか、おめでとう」
「メルデレだと思うんだ」
柿内君の言葉を無視して、響季は結論から伝える。
メルデレ、要は普段はツンツンなのに、メールではデレデレ。
「つまり?」
「からかってるのかと。メルデレキャラを演じて」
「メールは?零児君にはなんて返した?」
「何も返してない」
「まあ、そういう作戦だろうなぁ」
柿内君が電話の向こうで何かを熱そうにずずーっと啜る。
「カッキー、なに飲んでるの?」
「ほうじ茶。この前ゲーム雑誌でメール採用された時に貰ったマグカップで。架空の女子校の嘘校歌が書いてあるやつ」
「何それかわいい。っていうかこんなクソ暑いのにあったかいやつ飲んでるの?」
「そう。冷たいものばっかり飲むと腹壊すから」
「へえー、ジジイみたい。ああ、そういえばマグカップでケーキ作れるんだって。なんかホットケーキミックス使ってレンジでチンするだけで…、そうじゃねえよ!そんなのどうでもいいわ」
柿内君の弱いお腹も、簡単スイーツレシピも今の響季にはどうでもいい。
「たぶん向こうは、鬱陶しいから逆にこっちから攻めて突き放そうっていう。そんなメール来たら引いてもう関わってこないだろうって魂胆だと思うんだ」
「そうだと思う」
響季の見解に、柿内君が同意する。
だが響季は自分の見解を述べてみたものの、確信は持てなかった。
近づきたいのに離れていく。いや、向こうも近づいてきているように思っていた。なのに、零児は好きだなんて嘘をついてまで逃げていく。
響季に恋愛感情がないと最初からわかっているからだ。
響季が仕掛けた貴女が好きですコントに、本気で乗り込んでこようとしていた。
零児が常に拒否し、響季が常に追うことで成立していた友達になりたいんだ追いかけっこが、零児が立ち止まり響季と向き合うことで距離が縮まり、ゼロになってしまう。
友達の距離で立ち止まり、振り向いてくれればいいものを、もっと近くで立ち止まり、振り向かれてしまった。
あるいは好きだという言葉でバリケードを作り、こちらが入って来れないようにしている。
そうまでして遠ざけようとしているのなら、そこまで嫌われているのなら、もう友達にすらなれない。
しかし、もし本当に好きだったら?
そんなことがあるのか?
ウケ狙い半分、おフザケ半分の告白をしてきた同性を、いつの間にか好きになるなんてことがあるのか?
そんな都合のいい、響季が壁にアンダースローで思い切り投げつけてきたライトノベルのような展開が本当にあるのか?
女子高生が、思考の渦に取り込まれる。
「響季はどうなんだよ」
「なにが」
「本当に好きなのか?」
「だから…、言ったじゃん。関係を繋ぎ止めたいだけだって」
「好きじゃないのか」
「…友達になりたい」
情けない顔と声で響季が言う。
「でも向こうは恋人になりたいと」
「それも本当じゃないでしょ?たぶん」
「わっかんないぞー?抹茶クッキー、うんめー」
柿内君は明らかに楽しんでいた。おまけに何か甘いモノをお茶請けに食べていた。
「とにかくメール送れよ」
「なんて?」
「お友達になってくださいって」
「やっとか」
夏休みにも関わらず、あまりにも暇な零児が自室の食玩フィギアをいるものといらないものに分け、いらないフィギアに魔改造でも施そうかと思っていた頃。響季からやっと返信メールが来た。
件名には、何もない。
本文にはたった一言『お友達になってください』とあった。
それを見て零児が乾いた笑い声をあげると、
「やなこった」
すぐにメールを返した。
「来た」
零児に送ったメールはすぐに返ってきた。響季がおそるおそるメールを開く。
『友達じゃいやだ。もっともっと、その先の関係として付き合ってくれなきゃいやだ』
とあった。
受け止めきれなかった。
「よかったじゃないか、おめでとう」
「メルデレだと思うんだ」
柿内君の言葉を無視して、響季は結論から伝える。
メルデレ、要は普段はツンツンなのに、メールではデレデレ。
「つまり?」
「からかってるのかと。メルデレキャラを演じて」
「メールは?零児君にはなんて返した?」
「何も返してない」
「まあ、そういう作戦だろうなぁ」
柿内君が電話の向こうで何かを熱そうにずずーっと啜る。
「カッキー、なに飲んでるの?」
「ほうじ茶。この前ゲーム雑誌でメール採用された時に貰ったマグカップで。架空の女子校の嘘校歌が書いてあるやつ」
「何それかわいい。っていうかこんなクソ暑いのにあったかいやつ飲んでるの?」
「そう。冷たいものばっかり飲むと腹壊すから」
「へえー、ジジイみたい。ああ、そういえばマグカップでケーキ作れるんだって。なんかホットケーキミックス使ってレンジでチンするだけで…、そうじゃねえよ!そんなのどうでもいいわ」
柿内君の弱いお腹も、簡単スイーツレシピも今の響季にはどうでもいい。
「たぶん向こうは、鬱陶しいから逆にこっちから攻めて突き放そうっていう。そんなメール来たら引いてもう関わってこないだろうって魂胆だと思うんだ」
「そうだと思う」
響季の見解に、柿内君が同意する。
だが響季は自分の見解を述べてみたものの、確信は持てなかった。
近づきたいのに離れていく。いや、向こうも近づいてきているように思っていた。なのに、零児は好きだなんて嘘をついてまで逃げていく。
響季に恋愛感情がないと最初からわかっているからだ。
響季が仕掛けた貴女が好きですコントに、本気で乗り込んでこようとしていた。
零児が常に拒否し、響季が常に追うことで成立していた友達になりたいんだ追いかけっこが、零児が立ち止まり響季と向き合うことで距離が縮まり、ゼロになってしまう。
友達の距離で立ち止まり、振り向いてくれればいいものを、もっと近くで立ち止まり、振り向かれてしまった。
あるいは好きだという言葉でバリケードを作り、こちらが入って来れないようにしている。
そうまでして遠ざけようとしているのなら、そこまで嫌われているのなら、もう友達にすらなれない。
しかし、もし本当に好きだったら?
そんなことがあるのか?
ウケ狙い半分、おフザケ半分の告白をしてきた同性を、いつの間にか好きになるなんてことがあるのか?
そんな都合のいい、響季が壁にアンダースローで思い切り投げつけてきたライトノベルのような展開が本当にあるのか?
女子高生が、思考の渦に取り込まれる。
「響季はどうなんだよ」
「なにが」
「本当に好きなのか?」
「だから…、言ったじゃん。関係を繋ぎ止めたいだけだって」
「好きじゃないのか」
「…友達になりたい」
情けない顔と声で響季が言う。
「でも向こうは恋人になりたいと」
「それも本当じゃないでしょ?たぶん」
「わっかんないぞー?抹茶クッキー、うんめー」
柿内君は明らかに楽しんでいた。おまけに何か甘いモノをお茶請けに食べていた。
「とにかくメール送れよ」
「なんて?」
「お友達になってくださいって」
「やっとか」
夏休みにも関わらず、あまりにも暇な零児が自室の食玩フィギアをいるものといらないものに分け、いらないフィギアに魔改造でも施そうかと思っていた頃。響季からやっと返信メールが来た。
件名には、何もない。
本文にはたった一言『お友達になってください』とあった。
それを見て零児が乾いた笑い声をあげると、
「やなこった」
すぐにメールを返した。
「来た」
零児に送ったメールはすぐに返ってきた。響季がおそるおそるメールを開く。
『友達じゃいやだ。もっともっと、その先の関係として付き合ってくれなきゃいやだ』
とあった。
受け止めきれなかった。
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