剣客居酒屋 草間の陰

松 勇

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仇討娘入門始末

童女の仇討ち

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仙台藩徒士頭せんだいはんかちがしら貴田周五郎きだしゅうごろうの娘、深雪みゆと申します」
「ほう、お深雪みゆ殿はいかようなわけでこの道場に?」

 まだ、十に届いたかどうかと言う娘が、随分と丁寧な物言いをするので、思わず正助も改まった口調で尋ねる。

「私、父の仇を打つために母と共に諸国を旅しておりました。この度、母が病に倒れたため、私一人で仇を打たねばなりませぬ。とは言え、非力な娘の身、是非、噂に名高いこの道場にて、修行をつけていただきたいと思い参りました」
「お父上の仇と……」

 江戸時代、仇討ちと言うのは一種の制度であった。
 封建社会故に、犯罪者を藩の領外に捕えに行くことが難しかった為、殺人の場合は殺害された本人の家族が下手人を追い、果たし合いによって誅するのである。

 武士である以上、殺された側にもとががあるとされる。
 武道不覚悟ぶどうふかくごである。
 よって、被害者の身内による仇討ちをもって、家督の相続を許すのである。

 普通は被害者の嫡男が仇討ちを行う。
 しかし、稀にではあるが、妻や娘が仇討ちを担い、ことを成した後は婿を取って家の再興を許されると言うこともないでもなかった。
 それにしても、年端もいかぬ童女が仇討ちとは、なんとも無理がある。
 母親まで病に倒れたと言うが、この近くにいるなら、何某かの手助けの方が必要かも知れない。
 雪枝が優しく問いただした。

「母上はどこにいらっしゃいますか?」
「母は、江戸の近くにたどり着いたところで、身まかりました。近くの村の百姓の方々が手厚く葬ってくださいました」

 言葉も出なかった。
 見ればお深雪はだいぶ旅埃りょじんに汚れている。
 母親が亡くなった村というのが何処かはわからないが、そこから一人でここまでやってきたのだ。
 気丈な娘である。

 正助はさらに問う。

「ここまではどうやって?どこでこの道場のことを聞きなさった?」
「道端で連れ立って歩いていた元気なお姉様方に道場はないかとお聞きしました。大変評判の良い道場だと聞き及んでおります」

 冬吉は何となく、嫌な予感がした。
 元気なお姉様方、この辺りではあの娘たちが思い浮かぶ。

 それはさておき、どうしたものか。
 道場に入門したいというが、雪枝の手解きは女子おなごから評判なのでできなくはない。
 とは言え、その前にこのわらべの生活を考えねばならないだろう。



 とりあえず、雪枝がお深雪を湯屋ゆやに連れて行くことにした。
 この頃の江戸には町ごとにと言っていいほど湯屋、いわゆる銭湯せんとうがあった。
 湯屋は女性は午後から入る慣習である。

 その間、残った男たちで、どうすべきかを考えねばならない。

「仙台藩の藩邸はんていに問い合わせた方が良いのだろうか」

 江戸には諸藩の屋敷がある。
 多くは上屋敷と下屋敷の二つが多いが、上屋敷は参勤交代で大名自身が江戸にいる時の私邸である。
 下屋敷の方が、江戸幕府に対応するための大使館のような役割を担い、藩の物産の取引なども担う。
 両者を合わせて藩邸と言うこともあるが、この場合は、実務的な側面を持つ下屋敷にいる江戸勤番の藩士に確認をすると言うことになる。

 木村の問いに答えたのは冬吉であった。
 江戸の人間は武士であっても、地方の藩の事情には詳しくない。

「いえ、やめた方が良いでしょう。母と娘、それも年端のゆかぬ子どもに仇討などと、普通は考えられません。なにか、よくない事情があるものと思います」

 藪蛇やぶへびになるかもしれないというのだ。
 仇討は、この頃には必ず行うものではない。
 幕府も推奨してはいなかった。

 母と娘、仇討ちの相手を見つけることができても、返り討ちにされる方が可能性が高い。
 であれば、妻子が藩内に残っていては、藩かその重役にとって、都合が悪い事情があるのだろう。
 藩邸に連絡などしては、逆に危険が及ぶかもしれない。

「そこは、私に任せてもらいましょう。以前出稽古で顔見知りになった仙台藩士がおります。信の置ける者なので、それとなく事情を尋ねてみます」

 探りを入れて、何があったのかを聞き出すぐらいは、敏腕の火盗改頭を父に持つ、この男に任せて心配ない。

「では、当面のことだけじゃな。しかし間が悪い。こんな時期でなければ、しばらく預かってもよかったのだが……」

 樋口道場は近々閉鎖されるのである。
 正助は道場に続く部屋で暮らしているので、その間は水野家の屋敷に仮住まいする予定なのだ。

 童女どうじょの一人ぐらい、連れて行っても鷹揚な水野老であれば、受け入れてはくれるだろう。
 しかし。先の事情を考えると、何かの騒ぎの原因となりかねない。
 むしろ、血の気の多い爺さんが、助太刀致すなど言っていきり立ってしまう。
 そうなると、仙台藩も含め、何やらのっぴきならぬ問題を引き起こしかねないのだ。

 みな、うんうん唸りながら考え込むが、答えは出ない。
 木村は妻子がいる上に、裕福ではなく、家は狭い。
 辰蔵はここからは遠い目白台に住んでおり、旅で疲れているお深雪を連れて行くのもしのびない。
 正助は当面居候になるし、先の理由で難しい。
 冬吉は今は長屋暮らしだし、童女を連れ込むとなると、いろいろ怪しからぬことになる。

 雪枝はこの場にいないが、可能性があるのはその女武道だけであった。

「とりあえず、腹が減っているでしょうから、飯でも作っておきましょう。一走ひとっぱしり戻って、何ぞ見繕ってきます」

 冬吉はそう言って、自分の長屋に向かった。
 前日まで店をやっていたので、余った食材がある。
 それらは煮しめなど、日持ちするように調理して、奉公人たちと分けたのだ。

 考えても仕方ない時は、悩むことをやめる。
 気分転換をすれば良い考えが浮かぶかもしれない。
 これは冬吉なりの思考法であり、お夏などは密かな美点であると思っていた。



「おや、冬吉っつぁん、そんなに急いでどうしたね?」

 走って長屋にまで帰ってきた冬吉と、玄関先でたまたま顔を合わせたお静が訪ねた。

 草間が建て替えで休みの間、奉公人達はそれぞれに、違う過ごし方をすることになっている。
 熊七はまだ見習いであるから、暇をさせるわけにはいかないので、この翌日から猪頭に手伝いに出ることになっている。
 草間が休みの間、常連の一部は代わりに猪頭に通うものと思われるから、老齢で忙しくなる猪五郎に頼まれたのである。
 草間と違って、腹の膨らむ料理を出してなかったので、熊七の煮しめを出すことで凌ごうと考えたのだ。

 仗助とお夏の親子は、この機会に仗助の亡妻、お夏の母親の墓参りに行くことになっている。
 さして長い旅ではない。
 川越に行く街道の途中にある村なので、二、三日で帰って来れるのだが、冬吉は気前良く路銀まで渡して、ゆっくりしてくるように言い渡した。
 これも準備があるので、旅立つのは数日後のことである。

 お静は長屋の大家、つまり管理人も兼ねているので、どこにも行かないが、建築中は大工たちの飯の面倒を見なければならない。
 この時代は人を使うときには、報酬の一部として、働いている間の食事を用意するのが普通であった。
 冬吉がいる時は本人がやるが、休みの間とは言え、あちこち出かけることの多い男なので、基本的にはお静がやることになる。

 というわけで、休業一日目のこの日は、まだ全員が長屋にいる。
 住居は別々になっているが、長屋は壁が薄く、ほとんど今で言うプライバシーと言うものがない。
 職場も共にしているのだから、家族みたいなものである。
 何か気になることがあれば、どうしたどうしたと、みんな出てきて談合が始まってしまうのだ。


「まあ、気の毒に。冬吉っつぁん、うちにつれてこればいいじゃないか」

 お静である。
 情に熱い老婆は、武士の慣習などには理解はないが、子どもの一人旅が如何に危険かはよく分かっている。
 子ども、それも娘となれば、どんな酷い目にあってもおかしくない。

「そうなんだ。雪枝様が引き取ることができないようなら、お静婆に頼もうかと思ってたんだよ」

 お夏は意外に思った。

 冬吉は義理人情を疎かにする男ではないが、人に関わることには積極的ではない。
 雪枝が引き取れるかもしれないなら、それで良いと考えそうなものなのだ。
 これはむしろ、草間で引き取りたいと考えているように思える。

 思わず口に出た。

「珍しいですね。冬吉さんが簡単に人を受け入れるだなんて。小さい娘だからですか?」
「こらっ、お夏っ!」

 対等に近い関係を求められてるとは言え、奉公先の主人に気安い口を使いすぎるお夏を、仗助が嗜めた。
 この言い方では、冬吉が幼女趣味だと遠回しに言っているようでもある。

 とは言え、冬吉はこういう事は気にもとめない。

「お静婆が面倒を見てくれるなら、世間体も悪くないよ。仇討ちだなんて、あの歳でやれるものじゃないんだから、行き所が見つからないなら、給仕を手伝わしても良いかなと」
「それはまあ、助かりますけど」

 なにか、他に理由があるようにも思う。
 大きくなる店の手数は足りないのは確かで、特に給仕を担う女中が、お夏と老婆のお静の二人だけでは不安であった。
 子どもと言えども、この時代は飲食店などの手伝いをしていることは珍しくない。
 しっかりした娘らしいので、やれないことはないだろう。

「それにしても……」

 お夏はまだ気になる。
 女中の確保には、必要性は認めつつも、積極的には動かないのが冬吉なのだ。

同病憐どうびょうあわれむ、かな」

 ぼそり、と聞こえるか聞こえないかの小声で冬吉は言った。

 奉公人たちは誰も冬吉が生国を出てきたわけを知らない。
 知っているのは、元はどこかの藩士かその子弟であろうことと、数年は諸国を旅して過ごしていたことだけである。
 『同病』と言うなら、冬吉が藩を出たのも仇討ちが理由で、それものっぴきならぬ事情で、やむを得ず出てきたと言うことであろうか。

 お夏は軽くため息をついた。
 本人が話さないのなら、知る必要などないのである。

 今は居酒屋草間の主人で、一流の包丁人にして、凄腕の剣客。
 少々面倒くさがりで、すぐ不貞腐れるところがたまに傷だが、それぐらいで、自分達にとっては良い主人なのだ。
 過去などどうでも良いはずなのだが、こうして、何かを匂わされると気になってしまう。

 お夏は、持ち前の観察力の源である好奇心ゆえか、あるいは他になんらかの自覚できない感情か、急に冬吉の過去が気になって仕方がなかった。



 冬吉がお静を伴って道場に戻ると、雪枝とお深雪も帰ってきていた。
 汚れた体と顔を洗い、湯屋の女将さんから譲ってもらったと言う着物に着替えたお深雪は、意外に美しい娘であった。
 顔立ちは整っており、武士の娘らしい凛とした、背筋を伸ばした姿は、幼いながらも雪枝より女らしくさえ思える。

 その場の誰もが、この娘の苦労を思い、涙を堪えた。



 冬吉が飯の準備をしていると、深刻な顔で雪枝が近づいてきた。
 お深雪はお静と話している。

「本人は仇討ちと言ってますが、実際は厄介払いされたようです。父親は上司の不正を訴え出ようとしていたようで、それで同僚に斬り捨てられたのだと……」
「そんなことをあの娘が話したのですか?」

 しっかりしているとは言え、子どもがそこまでの事情を知るものだろうか。
 いや、そこまで知っているなら、そもそも無事で済まない。
 冬吉は、母親の死についても、単に病に倒れたのではないと睨んでいた。

「いえ、実は父が……」
「丹斎先生が?」

 言い淀む雪枝であるが、そこで思い切って続けた。

「父は仙台藩の藩邸に出入りしてたことがあるのです。江戸詰の藩士の指南役としてですが、まだ付き合いのある方もいます。そこで出た話を思い出しました。詳しいところまではわかりませんが、寡婦と幼い娘を所払ところばらいにするなど理不尽にも程があると、憤っておられました」

 丹斎と付き合いのある藩士は、たまたま、最近何度目かの江戸詰として出てきたのだと言う。
 さすがに、仙台藩で何が起こっているのかまでは分からないが、少なくとも、冬吉や腕利きの剣客たちが助太刀して仇討ちを成したとしても、お深雪には帰る当てはない。
 むしろ、仇討ちを成功させることで、命を狙われる事になりかねない。

「私たちにできるのは、普通の娘に戻してやることだけです。仇討ちは何も産みません」

 聡い娘だから、仙台藩のややこしい事情など分からなくても、自分が故郷に帰れないことぐらいはわかっていよう。
 武士の娘として教育されたが故に、せめて父親の無念を晴らしたいと考え、樋口道場の門を叩いた。
 しかし、それではこの娘の一生はそこで終わってしまう。

 幼い娘を見れば、それはあまりに無残に思えた。
 冬吉自身がそうであるように、武家のしがらみなど断ち切って、庶民としての幸せを得られる方が、亡くなった両親も喜ぶに違いないと思うのだ。

「ことの次第に同情している者とは言え、仙台藩の者が関わるところには置かない方が良いですね」

 冬吉は、むしろ説得するような口調で雪枝に言った。
 雪枝が本当はお深雪を引き取りたがっているのはわかる。
 しかし、仙台藩の関係者が出入りする可能性があるという武衛館に、お深雪みゆが身を置くことは避けねばならなかった。

「ご心配なく。お静が引き取って、私の店で面倒を見ます。本人が良ければ、うちの奉公人にします」

 これは、一生に渡って面倒を見る覚悟を決めたと言うことである。
 店の主人は奉公人の今の生活だけでなく、将来に渡って責任を持つ。
 男なら一人前に育て上げ、何らかの形で一生食うに困らないところまで、女なら幸せな結婚をできるまでは、少なくとも責任を持つのだ。

 雪枝も武家の人間であるから、ある程度想像はつく。
 冬吉も何かのっぴきならぬ理由があって、どこかの藩から出てきたのだ。
 今は町人となり店を持っているが、まだ二十歳にも満たぬ頃から諸国を放浪していたと言うのは既に聞いている。
 他人事ではないから、放って置けないと考えているのがわかった。

 なんと情に熱い男だろうと、さらに惚れ直す。


 雪枝が強引に冬吉に迫らないのは、雪枝なりに冬吉を観察してみてのことである。
 追っかけ娘たちと同じことをやっていては、嫌われるだけだと気づいたのだ。
 ならばあくまで、剣術の愛好者同士として親しくなってからの方が、何かと可能性も出てくると読んだのである。

 なので、いきなり舞い上がったりはしないが、軽く頬を染めて、思わずじっと冬吉を見つめてしまった。
 台所の入り口からは、憐れにも、辰蔵が絶望的な表情でその様子を眺めていた。


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