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11 幽霊ちゃんは掃除機がこわい

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俺の家事スキルは、料理は一通りできるが洗濯は適当でシャツはクリーニング、掃除は苦手な程度だ。
だが、あまりに掃除しないと埃っぽくなっていく。面倒だが掃除機を出した。

『なにこれ?』
「掃除機だ」
『掃除機?』

普段はコロコロとフローリングワイパーしか使ってないからな。
でもこいつ来て半月は出してないのか…… もうちょっと掃除しようと心に誓った。

「これでゴミを吸い取るんだ」
『へー…… これ、ボク吸い取られないよね?』
「あー、わからん。除湿器でも駄目だったからなぁ」

除湿器の時みたいに吸い込まれるかもしれない。
さすがにそれはちょっとかわいそうだが、コロコロとフローリングワイパーだけでは限界がある。

「吸い込まれる場所に居なければ大丈夫じゃないか?」
『例えば?』
「持ち手のところとか」

どうせだから、こいつに掃除機かけてもらうか。
はい、と渡すと素直に受け取った。

「ここのスイッチ押せば動くからな。先のところには近づくなよ。吸い込まれそうだし」
『はーい』

そういうと楽しそうに掃除機で掃除し始めた。
不器用なのか、四角い部屋を丸く掃くような、角まできれいにならないやり方だが、まあ楽しそうだしいいだろう。
ずごごごご、と大きめの埃なんかを吸い取るときの音がするたびに反応していてかわいらしい。




ご機嫌に掃除するこいつを放置して、台所のシンクを洗っていたのだが、しばらくしたら音がしなくなった。

『おにーさん、掃除機ちゃん静かになっちゃった』
「充電切れたかね」

コードレスの充電式掃除機なのだが、バッテリーの持ちがそんなに良くない。10分も使うとバッテリーが切れてしまう。うちの部屋の大きさなら普段はそれで済むのだが、こいつがご機嫌に振り回していたから持たなかったらしい。

『掃除機ちゃん、元気出して?』
「おい、やめろっ」

あろうことか、あいつは吸引口に手を当てながらスイッチを連打し始めた。

ういぃいいいいいん
『ぴきゃあああああああ!!!』
「いわんこっちゃない!!!」

バッテリーが切れても全く動かなくなるわけではない。スイッチを押せばまた少しは動いたりするものだ。
スイッチを入れて掃除機が動いた瞬間、当然のようにあいつは吸い込まれていった。



『えぐっ、えぐっ』
「ほら、なくなって」
『おにいざああん』
「埃っぽいから寄るな」
『ひどい!!!』

すぐにスイッチを切ったのだが、それでも掃除機の中で存分に回されたあと、埃まみれになったようだ。
開けた時に中のごみを全部ぶちまけたので、掃除した意味がなくなってしまった。

ひとまずこの埃たちを片付けたら、こいつを風呂場で水洗いしようと思いながら、ゴミ袋にごみを捨てていくのであった。
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