上 下
5 / 65

5 幽霊ちゃんは巫女さんがこわい

しおりを挟む
日曜日。
休日に休んでいると、家のインターフォンが鳴った。
荷物も届く予定もないし、誰だと思ってカメラを除くと、そこには巫女さんがいた。

そう、巫女さんである。
高校生ぐらいの年齢の巫女さんである。
コスプレっぽいが頭に枝まで挿していて、なかなか本格的である。簪とか言うんだっけか。
小さな紫陽花の花が綺麗に咲いている枝だった。

「えっとどちら様でしょうか」
「神社庁妖課の巫女、神薙といいます。少し、怪奇現象についてお話したくて」
「間に合ってます」
「え、ちょっとま(ガチャッ)」

すさまじく心当たりがあるが、よくわからない人だったし無視することにした。
そもそもあんな若い子上げたら青少年育成条例とかに引っかかりかねない。
綺麗な子だったから美人局の可能性も十分あるし、絶対にあげないことを誓った。

『だれだったの?』
「知らない怪しい人。揚げちゃまずいから無視する」
『怪しいの? なんかこわいねえ』

まあこいつほど怪しいものはいない気がするが。幽霊だし。
なんにしろ無視だ。いきなり来たって相手が本当にそういう人なのか確認できない。
日曜じゃ省庁も閉まっているから確認の問い合わせもできないのだ。
何度かインターフォンを押すがすべて無視する。
諦めて帰るだろう、そう思っていたのだが、どうやら家の前にいるようだ。

「あけてくださいぃ」

涙声で扉をたたき始めた巫女さんかっこかり。
俺は容赦なく110番通報をした。



結局警察官が来て、長いやり取りの末彼女が本当に神社庁妖課とかいう国家機関の所属員であることが判明した。
無茶苦茶面倒だったが、背に腹は代えられない。
事情をちゃんと説明したら、警察官は非常に冷たい目で神薙とか言う巫女さんをにらんでいた。
事前連絡もなく来たら不審者だろうが。しかも身分証とかも持ってないから、確認に非常に手間がかかった。
後日上司の方が謝りに来るという話までついて、警察官は帰っていった。

「で、結局用ってなんなんですか?」
「お宅にたぶん、幽霊がいると思うんですけど……」
「いますよ。今奥でテレビ見てると思います」
「やっぱりいるじゃないですか!!! 警察呼ばなくたっていいでしょ!!」
「知ってるか、一人暮らしのおっさんがあんたみたいな若い子家にあげるとへたすると条例違反で捕まるんだよ。超常現象の前に常識を勉強しろ。ついでに上司にしこたま怒られてこい」

こちらの家族構成とかわかっていなかったのか。男をよこせ男を。そもそも一人暮らしの男の家に女一人で来るな。
そう説教したら涙目でフルフルと震え始めた。

「まあいい。おーい、ちょっとこっちこい」
『んー、終わった?』
「終わってないが、こいつがお前に会いたいんだとさ」
『…… なんで?』

俺の後ろに隠れた。人見知りなのか? フルフルと震えているのが肩に伝わる。
今まで第三者を家にあげたことがなかったから人見知りかどうか知らなかったがそこまでいやか。

「退治しますか?」
『ひぃつ!?』
「いや、人んちの子に勝手に手を出すなよ」
『おにいさあああん!!!』
「でも悪霊ですよね、それ」
「いいからお前はもう帰れ、菓子折りもって上司と明後日またこい」

実際にこいつが何だかはよくわからんが、説明もなく退治しようとするんじゃない。
なんかごちゃごちゃ言っていたが、電話を手に持つと大人しく帰っていった。

幽霊の方は幽霊の方で、結局そのあと俺に引っ付いて離れなくて、若干うっとおしかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

少年少女怪奇譚 〜一位ノ毒~

しょこらあいす
ホラー
これは、「無能でも役に立ちますよ。多分」のヒロインであるジュア・ライフィンが書いたホラー物語集。 ゾッとする本格的な話から物悲しい話まで、様々なものが詰まっています。 ――もしかすると、霊があなたに取り憑くかもしれませんよ。 お読みになる際はお気をつけて。 ※無能役の本編とは何の関係もありません。

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー

イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」 時は平安。 養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。 散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。 働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。 人体自然発火焼死事件― 発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに 着衣は全く燃えていないというものだった。 この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。 この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか… 妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。 ※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」 (https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141) の第2弾となります。 ※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです ※ノベルアップ+でも掲載しています ※表紙イラスト:雨神あきら様

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...