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ボクと狐ちゃんとテニスサークル 2

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運動用の服なんてろくに持っていないのだが、衣装ボックスから部屋着に使っている黒の太もも丈レギンスに白いTシャツを取り出して、さて着替えようというタイミングでクーちゃんから待ったがかかった。

「ショウちゃん、日焼け止めは?」
「日焼け止め?」
「日焼けしちゃうよ」
「何か問題なの?」
「ショウちゃん、ちゃんと美容には気を付けなきゃ」
「でも日焼け止めなんて持ってないよ」

昔なんて日焼けするのはしょっちゅうだったし。そんな女子のようなグッズなどぼくは持っていないにきまって…… なんて考えて自分も今は女子だったことをようやく思い出す。

「仕方ないなぁ、私の貸してあげるよ」
「なんかその手つきがいやらしい」
「嫌らしくないよ―塗ってあげるから♪」
「……じゃあお願い」

非常に邪な視線をクーちゃんから感じるのだが、日焼け止めは使ったことないし、結局塗ってもらうことにした。クーちゃんがもっていた大きな肩掛けかばんから、一本のプラスチック製のボトルを取り出し、ボクに手渡した。日焼け止めのふたを開けて、自分の手に日焼け止めを取ってから、クーちゃんの手にも日焼け止めを注ぐ。手足ぐらいは自分でぬれるよなーと思い自分の二の腕から塗っていくと、クーちゃんはボクの首のあたりに塗り始めた

「ショウちゃん、うなじキレイだねぇ」
「そう?」
「実に色っぽいのです。くすぐったくない?」
「ちょっとくすぐったいけど我慢する」
「じゃあ手早く塗っちゃうね」

そういいながらクーちゃんはかなり広い範囲に塗り始めた。
首だけではなく背中の真ん中まで塗っていく。下着の内側まで塗られてちょっと恥ずかしいしくすぐったい。手足は自分で塗りながらなされるがままにしていると、今度は前側を塗り始めた。鎖骨あたりから胸元まで塗りはじめる。

「そんなに塗らなくてもいいんじゃないの?」
「少しでも日の光が当たる可能性のあるところは塗らなきゃダメなの。ショウちゃん肌白いから痛くなっちゃうよ」
「そんなもんなのかなー」

高校時代は焼けたら焼けっぱなしみたいな生活だったのでよくわからない。女性というのは甲も大変なもののようだ。胸元まで日焼け止めを塗りこんだクーちゃんは、次は顔に塗るようだ。頬っぺたをムニムニされてやっぱりくすぐったい。
ボクは自分の腕は塗り終わったので、足に取り掛かることにした。





できるだけ急いだので、着替えまでしても集合時間まであと15分ぐらい残っている。そのまま着替えのTシャツとレギンスをリュックサックに投げ込み、出発準備完了である。

「クーちゃん、どうかな?」
「……」
「クーちゃん?」

ひとまず格好が変じゃないかをクーちゃんに確認するとクーちゃんはぽつりとつぶやいた。

「ショウちゃんの格好がかわいすぎてつらい」
「雑な格好だと思うけどなぁ」

まあ、クーちゃんのその萌黄色のジャージよりはましなのかもしれない。ただ、それについては触れない程度の情けがボクにもあった。
本当は飲み物も準備したいのだけれども…… 春先でまだ暑くないとはいえ、だからこそ運動したらちゃんと水分をとらないといけない。ただ、ペットボトルに自家製のスポーツドリンクを作っている暇はなさそうだ。自動販売機ぐらいあるだろうし、どこかで何かを買うことにする。時間もないしすぐに出よう。
テニスコートの場所はこの前キャンパスを巡った時に大体の場所はわかっているが、あと15分程度しかないから早めに向かわないといけない。ボクの足なら走れば5分以内につくだろうが、走っているはずなのに歩いている人より遅いクーちゃんの遅さは伊達じゃないのだ。

「じゃあクーちゃん、出るよ」
「あ、はーい」

クーちゃんと一緒に家を出てテニスコートに向かう。やはりクーちゃんだけスローモーションの世界っで生きているんじゃないかというぐらい足が遅かった。抱えて連れていくことを真剣に考えながら、ボクたちは時間ぎりぎり目的地に到着した。
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