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ボクと狐ちゃんのキャンパス巡り 10
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扉の向こうは、先ほどまでの展示室の半分もない広さの部屋であった。
奥にパーティションが置いてあり、部屋の真ん中にはレースのテーブルクロスが敷かれた机と、結構高級そうなアンティークな椅子が置いてある。
広さ的に一瞬倉庫かとも思ったけれど、部屋にはそれ以外には何も置いていなかった。休憩室かなにかか? とも思ったが、置いてある机や椅子が高価すぎる気がする。
「なんか、貴族のお茶会みたいな感じだね」
「アリスとかに出てきそう」
「じゃあここは不思議の国なのかなー」
やっと興味が湧くものが出てきたようで、クーちゃんは嬉しそうにその机と椅子に駆け寄る。多分駆け寄っている。ボクの歩くのより遅い気がするが、今までのクーちゃんの歩行速度と比べて1.2倍ぐらいの速度が出ているから多分駆け寄っているんだと思う。
そんなクーちゃんをやさしい気持ちで見守りながらボクは部屋を見回す。壁紙はアンティークな白地に模様の描かれたもので結構高価そうである。ただ、窓がどこにもなく、若干圧迫感がある気もする。ここも展示室の一部なのだろうか。
机の上に大量のティーカップが置いてあったら本当に不思議の国のアリスなのだが、テーブルの真ん中に花瓶が置いてある以外、何も置いてなかった。
「ここでお茶会やったら高貴な気分になれそう!」
「でもこぼさないように気を遣うの大変そうだよね」
「大丈夫でしょー」
楽しそうにレースのテーブルクロスを触ったり、椅子の座面をなでたりしているクーちゃん。触り心地がよいのだろうか。
「ほら、このテーブルクロス、花の模様になってるよ」
「へー、本当だ。バラかな?」
「なのかなー すごいおしゃれ―」
「本当に高そうだね」
真っ白なテーブルクロスのレースは日焼けもほつれもなく、本当にきれいなものだ。触るのに若干躊躇するレベルだが、クーちゃんは遠慮なくそれの端を持ち上げる。
「椅子の方もすごいすべすべ」
「ベルベットっていうんだっけ? この生地」
「ベルベットかー、いいなー、私の椅子もこれにしたい」
背もたれまで深紅の布張りの椅子も、すごい重厚感あって高そうである。高級品に縁がないので、本当に高いものなのかはわからないが、すごい高級そうなオーラだったのは間違いなかった。
「ここでお茶会とかしたら楽しそう」
「そうだねー、さっきの九十九さんにお願いしてみたら? ここでアルバイトしているみたいだし」
「……え~」
露骨に嫌そうな顔をするクーちゃん。そんなかかわりたくないか。まあ同級生がいきなり女装をはじめたら動揺するのはわかる。というか現状ボクのポジションは全く同じである。付き合いが深い人がいなかったのもあるが、何より気まずくてボクは高校時代の知り合いとは一切連絡を取っていない。相手からボクを見るときっと今のクーちゃんみたいな反応になるのだろうな、と思った。
「そういえば、このパーティションの裏に何があるんだろう」
「なんだろう。見てみよう」
座っていいのかもよくわからず二人してテーブルの周りでしゃべっていたのだが、パーティションの裏側が気になってのぞき込む。
お宝があったりしたら面白かったのだが奥に続く扉と、ガラスケースが一つあるだけだった。
中には古びたスーツが飾ってあった。ただ古びているだけではなく、左足の部分が半分以上ちぎれていて、左手もボロボロになっていた。全体的に見ると立派なスーツっぽいのに、左半分のボロボロ具合がまるで戦場帰りかなにかのようだった。
「なんだろう、これ?」
「なんだろう?」
「何も書いてないね」
「書いてないね」
一通り見まわしたが解説文もタイトルも何もなかった。ただただ、そのボロボロのスーツがボクたちを見守っているようだった。
「なんだかわからないや」
「そうだねー」
ボロボロだけど別に怖い雰囲気もないし、かといってなんだかよくわからないし、いったい何なんだろう、そんな疑問がボクたちの頭を占めた。
そのあともそのボロボロの服の周りを調べたりしたが、結局何もわからずじまいだった。
ここでお茶会出来たらいいねー、なんて話をしながら、ボクたちは博物館を後にした。
博物館を後にしたボクたちは、そのあと結局キャンパス周辺を散歩し酔うとしたのだが、あまり時間も置かずに別れることになった。どこもかしこも人が多くて、ボク自身人に酔ってしまったのだ。若干体調が悪そうに見えたのだろうボクをクーちゃんは心配そうにしていたが、どうせ家に帰ってのんびりしていれば治る類のものであるので、心配しないように言って家に帰った。帰りに近くのスーパーで買ったかつ丼を夕飯に、ボクは一日を終えた。
奥にパーティションが置いてあり、部屋の真ん中にはレースのテーブルクロスが敷かれた机と、結構高級そうなアンティークな椅子が置いてある。
広さ的に一瞬倉庫かとも思ったけれど、部屋にはそれ以外には何も置いていなかった。休憩室かなにかか? とも思ったが、置いてある机や椅子が高価すぎる気がする。
「なんか、貴族のお茶会みたいな感じだね」
「アリスとかに出てきそう」
「じゃあここは不思議の国なのかなー」
やっと興味が湧くものが出てきたようで、クーちゃんは嬉しそうにその机と椅子に駆け寄る。多分駆け寄っている。ボクの歩くのより遅い気がするが、今までのクーちゃんの歩行速度と比べて1.2倍ぐらいの速度が出ているから多分駆け寄っているんだと思う。
そんなクーちゃんをやさしい気持ちで見守りながらボクは部屋を見回す。壁紙はアンティークな白地に模様の描かれたもので結構高価そうである。ただ、窓がどこにもなく、若干圧迫感がある気もする。ここも展示室の一部なのだろうか。
机の上に大量のティーカップが置いてあったら本当に不思議の国のアリスなのだが、テーブルの真ん中に花瓶が置いてある以外、何も置いてなかった。
「ここでお茶会やったら高貴な気分になれそう!」
「でもこぼさないように気を遣うの大変そうだよね」
「大丈夫でしょー」
楽しそうにレースのテーブルクロスを触ったり、椅子の座面をなでたりしているクーちゃん。触り心地がよいのだろうか。
「ほら、このテーブルクロス、花の模様になってるよ」
「へー、本当だ。バラかな?」
「なのかなー すごいおしゃれ―」
「本当に高そうだね」
真っ白なテーブルクロスのレースは日焼けもほつれもなく、本当にきれいなものだ。触るのに若干躊躇するレベルだが、クーちゃんは遠慮なくそれの端を持ち上げる。
「椅子の方もすごいすべすべ」
「ベルベットっていうんだっけ? この生地」
「ベルベットかー、いいなー、私の椅子もこれにしたい」
背もたれまで深紅の布張りの椅子も、すごい重厚感あって高そうである。高級品に縁がないので、本当に高いものなのかはわからないが、すごい高級そうなオーラだったのは間違いなかった。
「ここでお茶会とかしたら楽しそう」
「そうだねー、さっきの九十九さんにお願いしてみたら? ここでアルバイトしているみたいだし」
「……え~」
露骨に嫌そうな顔をするクーちゃん。そんなかかわりたくないか。まあ同級生がいきなり女装をはじめたら動揺するのはわかる。というか現状ボクのポジションは全く同じである。付き合いが深い人がいなかったのもあるが、何より気まずくてボクは高校時代の知り合いとは一切連絡を取っていない。相手からボクを見るときっと今のクーちゃんみたいな反応になるのだろうな、と思った。
「そういえば、このパーティションの裏に何があるんだろう」
「なんだろう。見てみよう」
座っていいのかもよくわからず二人してテーブルの周りでしゃべっていたのだが、パーティションの裏側が気になってのぞき込む。
お宝があったりしたら面白かったのだが奥に続く扉と、ガラスケースが一つあるだけだった。
中には古びたスーツが飾ってあった。ただ古びているだけではなく、左足の部分が半分以上ちぎれていて、左手もボロボロになっていた。全体的に見ると立派なスーツっぽいのに、左半分のボロボロ具合がまるで戦場帰りかなにかのようだった。
「なんだろう、これ?」
「なんだろう?」
「何も書いてないね」
「書いてないね」
一通り見まわしたが解説文もタイトルも何もなかった。ただただ、そのボロボロのスーツがボクたちを見守っているようだった。
「なんだかわからないや」
「そうだねー」
ボロボロだけど別に怖い雰囲気もないし、かといってなんだかよくわからないし、いったい何なんだろう、そんな疑問がボクたちの頭を占めた。
そのあともそのボロボロの服の周りを調べたりしたが、結局何もわからずじまいだった。
ここでお茶会出来たらいいねー、なんて話をしながら、ボクたちは博物館を後にした。
博物館を後にしたボクたちは、そのあと結局キャンパス周辺を散歩し酔うとしたのだが、あまり時間も置かずに別れることになった。どこもかしこも人が多くて、ボク自身人に酔ってしまったのだ。若干体調が悪そうに見えたのだろうボクをクーちゃんは心配そうにしていたが、どうせ家に帰ってのんびりしていれば治る類のものであるので、心配しないように言って家に帰った。帰りに近くのスーパーで買ったかつ丼を夕飯に、ボクは一日を終えた。
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