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入学式と新歓活動とお花見 5
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大学から歩いて3分。大学に来るときに通りかかった公園は、新入生歓迎のお花見でごった返していた。
先ほどまでと違い、人がかなり集まっていた。人々が思い思いに話をしたり、飲んだり食べたり、歌ったりしていた。ほとんどが大学生のようだが、もっと年配の人も居るので、近所の人もお花見していたりするのかもしれない。
広場の周りは桜の木、おそらくソメイヨシノが植えられていて、満開の桜がきれいだった。
塗々木さんもそんな公園の広場の一角に場所取りしているのかな、と思いについていくが、塗々木さんは広場のほうへは向かわず、木々の間に隠れるようにあった散歩道へ入っていった。
「今日はボクたちのほかに何人ぐらい来るのですか?」
「んー、新入生除けば、クーと、俺と、あと一人、サラナっていう俺の同期が遅れてくるだけだね」
「私も新入生なんですけどー」
「クーは愛玩動物枠だからな」
「なんでよー!!!」
両手をあげて抗議するクーちゃんのおでこを掌で押さえて笑う塗々木さん。仲がよさそうな二人を見て、ボクはある考えが浮かぶ。
「…… もしかして、塗々木さんとクーちゃんのデートの邪魔をしました?」
この二人の距離感は非常に近く、呼び方も呼び捨てだ。幼馴染とは言っていたが、ボクから見たら恋人同士に見える。
塗々木さんのボクへの対応は紳士的そのものだ。紙袋は持ってくれているし、その際手が当たっても、失礼、といってくれる。そんな塗々木さんは、しかしクーちゃんに対してはすごく気安い。新入生歓迎の花見といっていたが、もしかして、新入生であるクーちゃんと恋仲の塗々木さんが二人っきりなる口実であって、それを邪魔してしまったのではないか、そんな思いが頭をよぎったのだが……
「え、これと恋人? ないわー。名探偵ショウちゃんも、恋愛はまるでダメと見ました」
「俺だってお前みたいなちんちくりんお断りだわ。身長150cm超えてから出直してきな」
「なにおー! 150cmもう超えてるもん!!!」
「入学前の健康診断の測定で、148.2cmだったのは、すでにおばさんに聞いている」
「身内に裏切り者が!!! あと頭抑えないでよ!!! 縮むでしょ!!!」
クーちゃんの濡羽色の、狐のようなモフモフした尻尾が袴の裾とともにぴょんぴょん跳ねる。必死に跳ねようとしているようだが、頭を押さえつけられて足が宙に浮かないようだ。クーちゃんの耳は耳だけだと犬か猫か何の動物かわからなかったが、尻尾を見る限り狐の耳だったようだ。
なんにしろクーちゃんと塗々木さんは何か特別な関係だと思ったのだが…… 照れ隠しにも見えないし、本当にただの幼馴染なのだろう。しかし、そうすると別の推測が成り立つ。
「じゃあ、その遅れてくる人、サラナさんでしたっけ? その人が、塗々木さんの恋人なんですか?」
「え?」
「ぷぎゃー!!! サラナちゃんと折壁ちゃんが恋人とか、マジウケるー! これは腐っていますよ。折壁ちゃん」
「一応言っておくと、サラナは男だからな」
「失礼しました。女性っぽいお名前に思えたので」
サラナ という名前がどういう漢字なのか、いまいちわからなかったのだが、「な」で終わるから女性かと思っていた。こんな親しげな異性がいるのに恋人じゃないとしたら、別のお相手が、と思ったのだそれも違ったらしい。
「でも、サラナちゃんとオリベちゃんがデキているっていう噂は結構真実味をもって、大学内で流れているのでした。まる」
「おい、それ本気で流れたことがあるんだからやめろ!!!」
「サラナちゃんって、あとで会えばわかるけど、筋肉隆々のイケメンなわけですよ。で、オリベちゃんは見ての通り細身のイケメンでしょ。で二人は親友で、結構一緒にいること多いし、二人とも恋人居ないから、恋人なんじゃないかって一時期うわさが流れたんですよねー」
「詳しく解説するんじゃねえ!!」
「ぎゃー!!! おさえるなー!! 縮むー!!!!」
「縮め!! 縮んでしまえ!!」
別に同性愛に偏見はないが、クーちゃんと塗々木さんの会話を聞いている限り、塗々木さんとサラナさんは親しいのだろう。イケメンが二人仲良くしていれば、そういう下世話な噂が流れることもあるだろう。しかし、そっちもカップルじゃないとすると……真実は一つだよね。
「じゃあ、クーちゃんとそのサラナさんが、恋人同士なんですね。わかりました」
「はは、よかったなくクー。婿が来たぞ」
「それこそあり得ないー!!!」
しかし、クーちゃんと塗々木さん、塗々木さんとサラナさんがカップルでないとすると、消去法で、サラナさんとクーちゃんがカップルになると思ったのだが、それも違ったようだ。残念、ボクは探偵には向いていないようだ。そもそもボクは恋愛沙汰は昔から苦手なのである。こういった恋愛関係に察しのいい人というのはときどきいるが、そういう人は他人の恋愛沙汰を察しているのだろうか。
「サラナは、性格よし、見た目も筋肉で好みもあるがかなり良し、頭もいいし、財力もある。何が不満なんだ?」
「私は女の子が好きなの!! こう、キレイ系で、かっこいい感じの女の子がいいの!」
「……自意識過剰かもしれませんが、貞操の危機を感じます」
自意識過剰かもしれないが、ボクは身長も170cm近いからかなり高いほうだし、ちょっと釣り目だがそれなりに見た目はいいほうだと思っている。かわいい系よりキレイ系といわれる外見である。唐突なクーちゃんのカミングアウトであったが、その条件に自分が当てはまっている気がする。
「いや、自意識過剰じゃないだろう。ショウさんきれいだし、俺も普通に同じことを思った。クー、おまえ、人見知りのくせに初対面相手に妙になれなれしいと思ったけど、ショウさんに一目惚れしたわけだ」
へー、一目惚れねぇ…… まあ好かれるのに悪い気持ちはしないし、クーちゃんのかわいらしい感じとか、あのモフモフしてそうな尻尾は好きだけど、何とも反応しずらい。ひとまず態度保留にしておこう。
「愛でるだけ! 愛でるだけだよー!!! ピュアピュアだよ!! せいぜい膝枕ぐらいだけだよ!! お布団の中の全裸プロレスはさすがに妄想してないよ!?」
「クーちゃんの想像の中のボクは結構穢されている気がします。塗々木さん。壁になってください」
「ごめんね。あとでちゃんと躾けておくから」
ボクは塗々木さんを挟んでクーちゃんの反対側に避難する。クーちゃんはなんでー!! と叫ぶのだった。
先ほどまでと違い、人がかなり集まっていた。人々が思い思いに話をしたり、飲んだり食べたり、歌ったりしていた。ほとんどが大学生のようだが、もっと年配の人も居るので、近所の人もお花見していたりするのかもしれない。
広場の周りは桜の木、おそらくソメイヨシノが植えられていて、満開の桜がきれいだった。
塗々木さんもそんな公園の広場の一角に場所取りしているのかな、と思いについていくが、塗々木さんは広場のほうへは向かわず、木々の間に隠れるようにあった散歩道へ入っていった。
「今日はボクたちのほかに何人ぐらい来るのですか?」
「んー、新入生除けば、クーと、俺と、あと一人、サラナっていう俺の同期が遅れてくるだけだね」
「私も新入生なんですけどー」
「クーは愛玩動物枠だからな」
「なんでよー!!!」
両手をあげて抗議するクーちゃんのおでこを掌で押さえて笑う塗々木さん。仲がよさそうな二人を見て、ボクはある考えが浮かぶ。
「…… もしかして、塗々木さんとクーちゃんのデートの邪魔をしました?」
この二人の距離感は非常に近く、呼び方も呼び捨てだ。幼馴染とは言っていたが、ボクから見たら恋人同士に見える。
塗々木さんのボクへの対応は紳士的そのものだ。紙袋は持ってくれているし、その際手が当たっても、失礼、といってくれる。そんな塗々木さんは、しかしクーちゃんに対してはすごく気安い。新入生歓迎の花見といっていたが、もしかして、新入生であるクーちゃんと恋仲の塗々木さんが二人っきりなる口実であって、それを邪魔してしまったのではないか、そんな思いが頭をよぎったのだが……
「え、これと恋人? ないわー。名探偵ショウちゃんも、恋愛はまるでダメと見ました」
「俺だってお前みたいなちんちくりんお断りだわ。身長150cm超えてから出直してきな」
「なにおー! 150cmもう超えてるもん!!!」
「入学前の健康診断の測定で、148.2cmだったのは、すでにおばさんに聞いている」
「身内に裏切り者が!!! あと頭抑えないでよ!!! 縮むでしょ!!!」
クーちゃんの濡羽色の、狐のようなモフモフした尻尾が袴の裾とともにぴょんぴょん跳ねる。必死に跳ねようとしているようだが、頭を押さえつけられて足が宙に浮かないようだ。クーちゃんの耳は耳だけだと犬か猫か何の動物かわからなかったが、尻尾を見る限り狐の耳だったようだ。
なんにしろクーちゃんと塗々木さんは何か特別な関係だと思ったのだが…… 照れ隠しにも見えないし、本当にただの幼馴染なのだろう。しかし、そうすると別の推測が成り立つ。
「じゃあ、その遅れてくる人、サラナさんでしたっけ? その人が、塗々木さんの恋人なんですか?」
「え?」
「ぷぎゃー!!! サラナちゃんと折壁ちゃんが恋人とか、マジウケるー! これは腐っていますよ。折壁ちゃん」
「一応言っておくと、サラナは男だからな」
「失礼しました。女性っぽいお名前に思えたので」
サラナ という名前がどういう漢字なのか、いまいちわからなかったのだが、「な」で終わるから女性かと思っていた。こんな親しげな異性がいるのに恋人じゃないとしたら、別のお相手が、と思ったのだそれも違ったらしい。
「でも、サラナちゃんとオリベちゃんがデキているっていう噂は結構真実味をもって、大学内で流れているのでした。まる」
「おい、それ本気で流れたことがあるんだからやめろ!!!」
「サラナちゃんって、あとで会えばわかるけど、筋肉隆々のイケメンなわけですよ。で、オリベちゃんは見ての通り細身のイケメンでしょ。で二人は親友で、結構一緒にいること多いし、二人とも恋人居ないから、恋人なんじゃないかって一時期うわさが流れたんですよねー」
「詳しく解説するんじゃねえ!!」
「ぎゃー!!! おさえるなー!! 縮むー!!!!」
「縮め!! 縮んでしまえ!!」
別に同性愛に偏見はないが、クーちゃんと塗々木さんの会話を聞いている限り、塗々木さんとサラナさんは親しいのだろう。イケメンが二人仲良くしていれば、そういう下世話な噂が流れることもあるだろう。しかし、そっちもカップルじゃないとすると……真実は一つだよね。
「じゃあ、クーちゃんとそのサラナさんが、恋人同士なんですね。わかりました」
「はは、よかったなくクー。婿が来たぞ」
「それこそあり得ないー!!!」
しかし、クーちゃんと塗々木さん、塗々木さんとサラナさんがカップルでないとすると、消去法で、サラナさんとクーちゃんがカップルになると思ったのだが、それも違ったようだ。残念、ボクは探偵には向いていないようだ。そもそもボクは恋愛沙汰は昔から苦手なのである。こういった恋愛関係に察しのいい人というのはときどきいるが、そういう人は他人の恋愛沙汰を察しているのだろうか。
「サラナは、性格よし、見た目も筋肉で好みもあるがかなり良し、頭もいいし、財力もある。何が不満なんだ?」
「私は女の子が好きなの!! こう、キレイ系で、かっこいい感じの女の子がいいの!」
「……自意識過剰かもしれませんが、貞操の危機を感じます」
自意識過剰かもしれないが、ボクは身長も170cm近いからかなり高いほうだし、ちょっと釣り目だがそれなりに見た目はいいほうだと思っている。かわいい系よりキレイ系といわれる外見である。唐突なクーちゃんのカミングアウトであったが、その条件に自分が当てはまっている気がする。
「いや、自意識過剰じゃないだろう。ショウさんきれいだし、俺も普通に同じことを思った。クー、おまえ、人見知りのくせに初対面相手に妙になれなれしいと思ったけど、ショウさんに一目惚れしたわけだ」
へー、一目惚れねぇ…… まあ好かれるのに悪い気持ちはしないし、クーちゃんのかわいらしい感じとか、あのモフモフしてそうな尻尾は好きだけど、何とも反応しずらい。ひとまず態度保留にしておこう。
「愛でるだけ! 愛でるだけだよー!!! ピュアピュアだよ!! せいぜい膝枕ぐらいだけだよ!! お布団の中の全裸プロレスはさすがに妄想してないよ!?」
「クーちゃんの想像の中のボクは結構穢されている気がします。塗々木さん。壁になってください」
「ごめんね。あとでちゃんと躾けておくから」
ボクは塗々木さんを挟んでクーちゃんの反対側に避難する。クーちゃんはなんでー!! と叫ぶのだった。
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