上 下
5 / 8

5 マ王は魔族の王でも、魔法を極めた王でもありません

しおりを挟む
「うぎぎぎぎぎ、どっせい!!!!」

コンは激怒した。
今日の天気は何なのだ、晴れ時々筋肉が降るでしょう、なんて聞いてないぞ!!
怒りに肩を震わせながら、コンは上に落ちてきた筋肉を投げ飛ばした。
筋肉は三回転半ひねりを空中でして、こちらを向いて綺麗に着地した。

「だれであるか?」
「気を付けてください。あれはおそらく魔族です。人類と対立している種族ですよ」

おちてきた筋肉は、黒い肌をした男性であった。全裸にふんどしだが、頭の大きな角が非常に目立っている。
あの大きな角が魔族の特徴である。あそこに闇の魔力を蓄えて、強力な魔法を使うのが、魔族の特徴だった。

「ふむ、主らが呼び出したのではないのか?」
「呼出し?」
「ならば誰かに追放で模されたか…… しかしそこの光ってるの」
「なんであるか?」
「いい胸筋をしているな。相当マッスルスタディを行っているのだろう」
「わかるか?」

胸筋を嬉しそうにピクピクさせるマッチョさん。ちょっと、いや、かなりキモイ。
そもそもマッスルスタディってなんやねん。コンは思った。

「筋肉をトレーニングするのは二流。一流は筋肉を学ぶのだ。それがマッスルスタディ!」
「心読まないでください。あとその説明聞いても全く意味わからないです」
「なるほど、確かに」
「マッスルさんも黙っていてください」

筋肉の世界に迷い込んだ狐のコンちゃん、泣きそうである。

「相当な筋肉偏差値をもっているな。魔大陸でもそのレベルの者は見たことがない。それに比べもう一人は……かわいそうなほどの落第点だな」
「女の子なんだし筋肉モリモリは怖いだろ!!!」

コンの体型は、まあ、本人の名誉のために描写は控えておこう。

「見かけによらず頑丈であるぞ、コン殿は。なんせ、我と主の二人のボディプレスを喰らってもケガをしておらん」
「フォローになってないよ!」
「そうコンコン怒るな小さいの。余計小さくなるぞ小さいの」
「小さいのいうな! ボクにはコンスタンシア・アーデルトラウト・ゾフィーティア・ゲルステンビュッテルっていうちゃんとした名前があるんだからね」
「コン? アート? ゲル?」
「コン殿である」
「コンだな」
「略すな! 呼び捨てするな!!」
「そうコンコン怒るな、コン」
「コンコンってなんだよ!!」

ぴょんぴょん跳ねて、尻尾を逆立てながら怒りを全身で露わにするコン。
ただかわいらしいだけであった。

「しかし、名乗られたなら名乗ろう! 我はマ王マーマオ! 筋武両道を極めた王の中の王なり!」
「知っているかの、コン殿」
「魔王マーマオの名前は有名ですよ。魔族にいる6人の王、魔族の王のうち最強かつ最も凶悪といわれる存在です」
「ラスボスであるな!」
「うう、何で初めての冒険でこんなヤバいのにいくつも出会うんだよぉ……」
「コン、一つ訂正する!」
「だから呼び捨てするな!」
「じゃあコンちゃん! 一つ訂正する」
「呼び捨てではなくなったであるな。で、何であるか?」
「……」

コンちゃんの目は死んでいた。

「我は確かに魔族最強だろう」
「すごい自信である」
「凶悪といわれると少し思うところがあるがまあそこは見逃そう」
「寛大であるな」
「我は魔族の王ではない。マッスルを極めし王。略してマ王だ!!!!」
「なんだよそれ! なんだよそれ!!!!」
「確かに、すさまじいマッスルである」
「認めるな! ついていけないだろ!!!」

コンちゃんは泣いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

【天才】ダラダラしていたら、家を追い出されたけど、結局、王都の学園で無双する

スリーユウ
ファンタジー
商会の三男坊のフェリクスは才能には恵まれていたが、ダラダラと生活を送っていた。そのことを父に心配され家を追い出される。そして、父の手引きにより学園に無理やり入る事になる。しかし、フェリクスはトラブルに巻き込まれて、その才能を発揮することになる。それによってフェリクスはさらなる陰謀に巻き込まれて行くことになる。果たしてやる気のない天才はやってくるトラブルを跳ね返してダラダラした生活に戻れるのか。 なろうでも投稿してます。 【定期】YouTubeで月曜から金曜まで小説作る配信します。開始時間は13時半ぐらいからです。スリーユウで検索すれば出てきます。尚、祝日とかは休みです。

欲しいのならば、全部あげましょう

杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」 今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。 「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」 それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど? 「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」 とお父様。 「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」 とお義母様。 「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」 と専属侍女。 この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。 挙げ句の果てに。 「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」 妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。 そうですか。 欲しいのならば、あげましょう。 ですがもう、こちらも遠慮しませんよ? ◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。 「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。 恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。 一発ネタですが後悔はありません。 テンプレ詰め合わせですがよろしければ。 ◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。 カクヨムでも公開しました。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

名も無き農民と幼女魔王

寺田諒
ファンタジー
魔王を倒すため、一人の若き農民が立ち上がった。ようやく魔王のいる神殿を訪れたものの、そこにいたのは黒髪の幼女魔王。 戦いを経て二人は和解し、共に旅をするようになった。世間知らずの幼い魔王は色々なことを学びながら成長し、やがて自分を倒しに来たはずの農民に対して恋心を抱くようになる。女の子は自分の恋を叶えるため、あの手この手で男の気を引こうと躍起になるが、男は女の子を恋の相手として見ようとしない。 幼い女の子と若く逞しい農民のほのぼのラブコメディ。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...