上 下
49 / 70
八章

夜の蝶は秘密を抱いて苗床となる③②~side by 美比呂~

しおりを挟む
「戻ったよ、美比呂。」



「おかえりなさい、晃介さん」



部屋へ戻ってきた晃介さんは、私が迎えに出る事もなく、駆け寄る事もないことに不思議そうに部屋に入って来て、その光景を見ながら笑った。



「なんだ、出迎えがなくて拗ねるところだったが随分懐かれたものだな。」



晃介さんからジャケットを預かったヒナさんがハンガーへと掛け、先輩ノラとして「申し訳ありません」と苦笑した。



「俺がいない間好きに・・できたか?美比呂。」



ソファーに座った私にか屈みこんでキスをした晃介さんが、私の膝に頭を乗せて大きな犬のように身体を丸め穏やかな寝息を立てているユウキくんの頭を撫でた。



「はい、とても愉しかったです。」



ユウキくんの滑らかな頬に触れると「ん・・・」と僅かに眉を寄せて、私のお腹に顔を埋めた。



「なんだかデカい息子みたいじゃないか(笑)」



「ふふふ、随分可愛らしく私を愉しませてくれたんですよ」



「そうか・・・それは俺も見たかったな・・・」



惜しいことをしたと残念そうに呟く晃介さんに、



「お客様を愉しませるどころか、美比呂様のテクニックにユウキが翻弄されてしまって・・・女性をちゃんとお相手したのは美比呂様が初めてのことだったので疲れ果ててしまったようです、申し訳ありません。そろそろ起こしますね」



「(笑)いや、気にしなくていいよ、ヒナ。眠らせてやりなさい。それに美比呂も随分ご機嫌で満足したようだからね。」



私の隣に座って肩を抱き、髪を梳きながら首筋に触れる晃介さんは、そう言いながらも私がユウキくんとどんな風に戯れたのか気になり、少しヤキモチを妬いたことが伝わる触れ方で私の肌に指を這わせる。


一番好きなのは・・・愛しているのは晃介さんなのに・・・可愛い。



「けど、他の男性が私に触れることをどうしてお許しになったんですか?」



晃介さんに甘えるように身体を預け、その間も手はサラサラとしたユウキくんの黒髪を撫でていた。



「客で来ている他の男や、美比呂を脳内で穢すような目で見ていた男共に触らせる気は無いが、ユウキなら美比呂も愉しめそうだと思ってね。」



「・・・・・・ふぅん・・・?」



「よくわかっていないようだな(笑)」



「・・・はい」



「だが嫌だったかい?」



「・・・・・・いえ・・・愉しかったです。」



ユウキなら・・・・・と言った晃介さんの意図はよくわからなかったけれど、



「・・・」



「・・・そうだろうな。美比呂の気持ちは知っていたからね。」



膝で眠っているユウキくんに聞こえることがないよう念のため私は晃介さんの耳に唇を寄せて耳打ちをした。



『義弟のようだと思ってしまって。』と・・・。



「ごめんなさい・・・」



「何を謝る必要があるんだ。俺は最初からそのつもりだったんだから。」



「え・・・?」



「・・・似ているのだろう?」



晃介さんの視線を追った私の瞳は、起きる気配もなく眠るユウキくんの整った顔を捕らえ、その顔は私に対して義姉以上の感情を持ち、短い期間家族としてあった男の子を思い起こさせた。



「・・・はい・・・とても・・・」



家族なのに、家族だからいけない、そう思って家を出てから家族の誰とも連絡は取っていないし、実家にも帰っていない。


・・・あの子が今どうしているのかも私は知らない。



これでよかった、そう思っていたし、家族と縁を切るように実家を出て来たことも後悔は一切ない。



「美比呂、今晩とあるショーがあるんだが、ユウキも一緒に参加しないか?」



「ショー、ですか?」



「あぁ。悪い事をすると罰が・・・お仕置きがあるんだってわかるショーだよ。」



・・・にっこり笑う晃介さんの目は、全く笑っていなかった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

処理中です...