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「お願いだからフィー!そこから降りてくれ!」

不安定な体制で足を浮かせるフィーに僕は腰を上げる。

「こないで!」

その声に思わず動きが止まる。

「ねえ。ウィル。私貴方を愛してるの」

その言葉に僕は何も答えられずただただフィーの瞳を見つめていた。

「ウィルの優しい所が好き。頭を撫でるのも、私が悲しいときぎゅっと抱きしめてくれる腕も、優しく見守ってくれる優しい笑顔も!ずっと.ずっと.....前から大好きよ」
「フィー....」
こんな彼女見た事なかった。確かに好意は感じていた。ただそれは、兄を慕う様なそんな情だと。
フィーのこんな熱い言葉も感情も見た事なかった。
僕には、みせてもらえないんだと思っていた。

「だから私のせいで、ウィルが悲しむのも辛い思いをするのは嫌!」
フィーは何を言っているんだ?
フィーのせいで僕が傷つく?
寧ろ傷つける様な事しているのは、僕なのに?

「何を言っ「ソフィアさん!」」

まさか。
フィーから彼女の名前が出てくるとは思ってなかったので
身体を硬らせる。

「私知っているの」
「ウィルとソフィアさんがお互いを想い合っている事」

「ち、違うんだ!ソフィアとは.....」

必死に探すが言葉が出てこない。


「ウィル。いいの。私2人が話しているのを聞いてしまったの。2人が想いあってる事。お互い政略的な婚約者がいるから学園だけのお付き合いの事」

そこまで知っていたのか.....。

「フィー。すまない!!確かに俺とソフィアは惹かれあっていた。それでもお互い割り切ってもいるんだ!学園の間だけだと.....」

そこまで言って僕はフィーに何て残酷な事を話しているんだと思った。さっきフィーは僕に好きだと言ってくれた。
そんな僕からこんな事言われて。
それに。フィーは前から知っていたと言った。

僕は言い様のない後悔から、それ以上言葉が出せず、
只々彼女を見つめた。
一瞬でも瞳を逸らしたら彼女が消えてしまいそうな
そんな気がしたから。


「ウィル?私達婚約を解消しましょう?」

「なっ!?」

僕はフィーの言葉に頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。

「何を言っているんだ?僕達は学園を卒業したら結婚するんじゃなかったのか?」
「ウィル...。きっとこのまま結婚しても私達お互い幸せにはなれないわ。貴方はソフィアさんの事を想って、私はウィルの事を想ってお互い一方通行だもの」
「だからそれは!学園だけの事で卒業したら僕はフィーをっ!」
「そんなのいらない!無理矢理の気持ちなんかいらない!政略だからってお互い冷めた家族もいらない!私はわたしはっ......」
「ウィルの幸せが私の幸せよ」
そう言って彼女は涙を流す。


ああ。
彼女が僕の前から去ろうとしている。
今までもこれからも当たり前の様に
隣にいるはずの彼女が?
そう思ったら僕は想像するのも怖くて足が震えてしまう。

僕はなんて馬鹿なんだ。
何があろうとこれから先は彼女と共に歩むのだと疑いもしなかった。
彼女の存在に甘えて胡座をかいて、蔑ろにしていた癖に。
失いそうになって初めて気づいた。
僕は彼女がいないと駄目だ。
彼女がいないなんて想像できないしたくもない!




















「フィー!さあ、此方においで?」

頼むから。
これから先君を裏切る事なんてしない。絶対に!
だから、だから僕の手をとってくれ



「ウィル。貴方の事愛しているわ」



「僕もだよ。だから僕に君を抱きしめさせてくれ」


ああ。やっと気付いたんだ。
僕はフィーを愛してる。
熱く焦げる様な恋ではない。そんな簡単なモノじゃない。
当たり前の様に、君との未来があったから僕は。


「ふふ。ウィルは本当に最後まで優しい人ね」



そう言いながらうっそり笑う君は、いままでの少女とは違った美しさだった。




「愛してるの。だから貴方の本当に大切な人と、幸せになってね」





そう言って彼女はゆっくりと空を仰いだ。







「フィーーーーーーーーーッッ!!!!!」

すぐさまフィーに手を伸ばすもかする事もなくくうを掴んだ。





う"わああああああああああああああぁぁ_______.















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