〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫

文字の大きさ
上 下
67 / 73

66

しおりを挟む
「あゝ、そういえばあなた達親子の罪状が途中だったかしら?」
王妃がこともなげに言い、騎士たちが周囲を囲む。
まるで暴れだすことを確信しているかのようだ。

「な、なんの真似よ?!」
「自国でやりたい放題が通じたからといって他国でもやらかせばただの犯罪だという常識くらい、身につけておくべきだったわね。まあもっとも関税の誤魔化しだけでも国交断絶には充分なのだけれど」
「こ、国交断絶だと……?しかしそれで不利になるのはそちらではないのか?此度の戦で領土とした国には我が国を通過するのが一番早いのだから」
「もちろん普通に通るに決まっているでしょう、最早ミレスナを通るのに貴方の許可は必要ないと言っているのよ」
「……は……?」
「属国にでも領土の一部にでもしてしまえばいいのよ。フェンティ伯が喜んでやってくれるでしょう、これだけフェンティ伯をコケにし、夫人を侮辱したのだから__あゝもしかして焦土にしてしまうかもしれないわねぇ?」

楽しげに言う王妃に、
「なっ……、」
とミレスナ王は絶句するが、当然ここに味方はいない。
「もういっそ焦土にしてしまった方がすっきりするでしょうね。ですが、ミレスナの民にも罪のない者はいるでしょうし__」
そう続けたエドワードが一旦言葉を切ると、
「そうですわエドワード様!私達に罪はありません!!」
と宣う王女。
って、誰を指すんだろ?)

「やっぱり焦土にするか?」
「その方が早そうですわねぇ」
国王夫妻が頷き合うが、エドワードが、
「リーアはどうしたい?」
と訊ねる。
「特にどうも。そもそもミレスナという国にもこの王女さまにも興味がないので。まあ不快なことしか言って来ないので、二度と目の前に現れないで欲しいな とは思いますけど」
「そうか。ならばそうしよう」
エドワードが請け負い、
「アルスリーア嬢、いやフェンティ夫人は本当にレベッカ王女を相手にしていないのだな」
国王が感心して呟く。
「そうね。眩しいくらい自分をきちんと持っている。だから貴女は他人の言などに左右されないのね……」
(王妃さまとレベッカ王女の母親って昔何があったんだろ……)
聞いてみたい気もするが、訊いてはいけないことの気がする。

アルスリーアからすれば行動力はあってもそれについての説明力が圧倒的に不足しているエドワードに対し、その行動から読み取るしかなかっただけで、ちゃんと言ってくれるようになった今疑う理由もない(上手く誤魔化せる人でもないという確信もある)だけだが、周囲からは違って見えるらしい。

何故かエドワードも誇らしげだ。

「国王陛下、ご裁可を」
エドワードが騎士の姿勢で促すと、
「ふむ。共謀していた貴族は資産没収のうえ平民に落とし、ミレスナの王家は解体とす「畏れ入りますがそれは待っていただけませんか?」、なに?」
国王の言に、違う声が割って入った。

























しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

処理中です...