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「二つめ、先日の戦においてフェンティ伯率いる騎士団に拠点として城を解放した際に、我が国から補助を兼ねた見舞金を受け取っていたにも関わらず、それを使わず懐に入れ、そのうえ国民からその費用と称した税を再度徴収したこと」
(うわー、悪どい。けど、)
「まぁ小さな地方領主にありがちな小銭稼ぎとはいえ、見逃すわけにはいきません」
(ですよねー)
「更にはそのハネた上前で豪華な食事会をお城では何度も開いていたそうね?国民は日々食べる量を減らして耐えていたというのに」
「あ、あれはフェンティ伯をもてなすために……!」
「フェンティ伯が来る前も去った後も行われていたでしょう、あれだけの量の食材が度々運ばれれば嫌でも目につくし、記録にも記憶にも残るのですよ」
「う、それはそのぅ、我が家には育ち盛りの子供もいますし」
「育ちきった子供の間違いでしょう、そこのレベッカが末っ子ということは上の王子はもう三十に届くのではなくて?」
(あ“ー王子二人って言ったっけ、二十三が一番下なら確かに)
「全く、二十三にもなって自分は華美に着飾り我儘を通すことしかしない。そんなだからまともな結婚申し込みも来ないのでしょう、その不良債権を我が国に押し付けようなんて、なんて不愉快な!」
王妃様、容赦って言葉辞書から消したんですね……いや、破って捨てたのかな。
「「……っ」」
あまりの言われように反論が出てこない親子の口が復活する前に、「三つめ」と王妃の声が響く。
「我が国の騎士の中である騎士エドワード・フェンティに拒絶されているにも関わらずその身分を利用し擦り寄り、何度も既成事実を作ろうと企んだこと。またその妻アルスリーア・フェンティに自分とフェンティ伯は愛し合っていると嘘を吹き込み離婚を迫り、その際フェンティ伯の名誉と夫人の尊厳を傷つけたこと、どちらも重罪・極刑に値します!」
(不貞は重罪だけど、極刑?そんな法あったっけ??)
目の前のエドワードはうんうん頷いているが、人より学んできた自負のあるアルスリーアにもそんな法は聞いた覚えがなかった。
「じ、重罪?極刑?」
出てきた言葉の不穏さに急に挙動不審になる父王をよそに、
「愛した人にたまたま妻がいたからといって罪にはあたらないわ。私がお母様にそっくりだから気に入らないのよね王妃様は。そうでしょう?」
レベッカの思考はどこまでも斜め上をいく。
が、王妃はそれに付き合う気はさらさらないようで、
「四つめ。我が城に滞在中、許可なく外出することは禁じられていたはずなのに勝手に城内を彷徨き、護衛兵の手を煩わせたこと。また、買収したメイドからの情報で得た人気のない場所で誘惑した下級兵士と淫らな行為に及んだこと」
「「!!」」
この時の二人の顔は見ものだった。
そんな馬鹿な、という王と。
「そんな……」と、真っ青になる王女。
ほんとにバレないと思ったのだろうか。
王宮内において人目が一切ない場所などない。
しかもこの王女ははなから“要注意人物“として見られていたのだから、王家の影のひとりや二人張りついていても不思議ではない。
(うわー、悪どい。けど、)
「まぁ小さな地方領主にありがちな小銭稼ぎとはいえ、見逃すわけにはいきません」
(ですよねー)
「更にはそのハネた上前で豪華な食事会をお城では何度も開いていたそうね?国民は日々食べる量を減らして耐えていたというのに」
「あ、あれはフェンティ伯をもてなすために……!」
「フェンティ伯が来る前も去った後も行われていたでしょう、あれだけの量の食材が度々運ばれれば嫌でも目につくし、記録にも記憶にも残るのですよ」
「う、それはそのぅ、我が家には育ち盛りの子供もいますし」
「育ちきった子供の間違いでしょう、そこのレベッカが末っ子ということは上の王子はもう三十に届くのではなくて?」
(あ“ー王子二人って言ったっけ、二十三が一番下なら確かに)
「全く、二十三にもなって自分は華美に着飾り我儘を通すことしかしない。そんなだからまともな結婚申し込みも来ないのでしょう、その不良債権を我が国に押し付けようなんて、なんて不愉快な!」
王妃様、容赦って言葉辞書から消したんですね……いや、破って捨てたのかな。
「「……っ」」
あまりの言われように反論が出てこない親子の口が復活する前に、「三つめ」と王妃の声が響く。
「我が国の騎士の中である騎士エドワード・フェンティに拒絶されているにも関わらずその身分を利用し擦り寄り、何度も既成事実を作ろうと企んだこと。またその妻アルスリーア・フェンティに自分とフェンティ伯は愛し合っていると嘘を吹き込み離婚を迫り、その際フェンティ伯の名誉と夫人の尊厳を傷つけたこと、どちらも重罪・極刑に値します!」
(不貞は重罪だけど、極刑?そんな法あったっけ??)
目の前のエドワードはうんうん頷いているが、人より学んできた自負のあるアルスリーアにもそんな法は聞いた覚えがなかった。
「じ、重罪?極刑?」
出てきた言葉の不穏さに急に挙動不審になる父王をよそに、
「愛した人にたまたま妻がいたからといって罪にはあたらないわ。私がお母様にそっくりだから気に入らないのよね王妃様は。そうでしょう?」
レベッカの思考はどこまでも斜め上をいく。
が、王妃はそれに付き合う気はさらさらないようで、
「四つめ。我が城に滞在中、許可なく外出することは禁じられていたはずなのに勝手に城内を彷徨き、護衛兵の手を煩わせたこと。また、買収したメイドからの情報で得た人気のない場所で誘惑した下級兵士と淫らな行為に及んだこと」
「「!!」」
この時の二人の顔は見ものだった。
そんな馬鹿な、という王と。
「そんな……」と、真っ青になる王女。
ほんとにバレないと思ったのだろうか。
王宮内において人目が一切ない場所などない。
しかもこの王女ははなから“要注意人物“として見られていたのだから、王家の影のひとりや二人張りついていても不思議ではない。
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