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「あの王女は城に滞在中、とにかく将軍に絡んでは色目を使っていましたからね。尤も将軍は全く相手にしていませんでしたし、秋波を送られていることすら気付いていなかったかもしれませんが」
やっぱそうか。
(あんなに顔面偏差値高いのに、その辺無頓着なところがあるとは思ってたけど。ていうか行く先々で言い寄られたりしなかったのかな?)
「言い寄られてる自覚のない人でしたから、その分周囲にいる我々が注意していましたので将軍は潔白ですよ、心配いりません。というかアルスリーア様はあの王女の言うことを鵜呑みにしなかったのですね」
「?鵜呑みにする理由がありませんもの」

そう答えるアルスリーアを、ディーンは眩しいものでも見るように仰ぐ。

いくら今は形だけの夫婦と言っても、長い遠征中一ヶ月近く滞在した先の王女が愛し合っていたなどと言ってくれば、疑ってしまっても仕方のないところだ。

ましてやその間二人は全くの音信不通だったのだから、「私への言葉は嘘だったのね!」と激昂してもおかしくないところなのに冷静に対応し、「買収された兵士やメイドがいるらしい」という報告と共に「こういうことがあったのですがどういうことか伺っても?」と訊ねてくる。

王女本人と対峙してもさらりとかわした上での行動。
高位の貴族令嬢であっても、こんな対応のできる令嬢がどれだけいるだろう。
将軍エドワードの愛した人は凄い女性ひとだなとつくづく思うディーンだった。

そして、何故だかディーンが感動したような目で見てくる意味がわからないアルスリーアは微妙に居心地の悪い時間を過ごすことになった。



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「__あの女!なんなのよ許せないゆるせない許さない!たまたまエドワード様と幼馴染で結婚しただけの子爵の娘ごときが!私に逆らうなんて!」
レベッカは近くの調度品を乱暴に投げつけながら喚き散らしていた。

国は違えど自分は王女だ。
王族なのだ。
民は皆平伏さなければならない存在だ。
そう思うのに、耳に蘇るのは「私は貴女の国の民ではない」「言うことをきく理由がない」というあの女の言葉。

髪を振り乱したまま暫く固まっていたが、
「__そうよ、そうだわ」
ポツリと呟き、淀んでいた瞳に嫌な光が灯る。
「直ぐにお父様にお手紙を。間違いは、正さなくっちゃ」
かきむしったせいでボサボサになっている髪に頓着せず、呼び鈴を鳴らして侍女を呼ぶ。
呼ばれた侍女は気味の悪いものを見たような顔をするが自分の考えに酔っているレベッカは気付かない。
直ぐに上等の紙とペンを持って来るように命じ、妖艶に微笑んだ。




同じ頃、エドワードの急襲(?)を受けた国王がキラッキラの笑みを浮かべたエドワードと対峙し、「いつもの仏頂面の百倍怖ぇ……」と内心で悲鳴をあげていた。
















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