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「エディの瞳と同じで、とても綺麗。私、指輪にするならこれがいいです」
そうリーアが笑顔で言ってくれてから数日、エドワードの脳内ではひたすらこのセリフがレフレインされており、またそれに併せて秀麗な顔も少々__いや、かなりヤニ下がっていた。
「団長、」
「……俺の瞳と同じで綺麗……いや、でも色は俺の方が明るいかもしれないが、青の濃さはリーアの方が上だからあのサファイアの色はやっぱり、」
「団長!起きたまま寝ぼけないでください!」
「……ん……?ああなんだディーン、いたのか」
「朝からずっといますよ。今起きたんですか顔洗いますか?冷たい水でも顔に浴びせて差し上げましょうか?」
いい加減やけになってきたディーンの嫌味に、
「いくら何でも寝たまま城には来ないぞ?リーアのいない場所にわざわざ向かうなんて、強靭な意思を持って臨まないとこれないからな」
と大真面目に返され、ディーンは生まれて初めて目の前の上司を殴りたくなった。
「そんなヤニ下がった顔してると、アルスリーア嬢に嫌われますよ?」
「何だと?」
「百年の声も冷めるような酷いヤニ下がりようでしたから、アルスリーア嬢が見たら『カッコ悪い』と思われるでしょうね」
「そんなにか?!」
「望まぬお見合いの席でしたらさぞ高確率で破談が望めるしょうね?」
真っ青になって鏡と睨めっこを始めた上司に、ディーンは少しだけ溜飲を下げた。
その日、アルスリーアは王妃の主催するお茶会に来ていた。
例の夜会の時に「今度ぜひ私の茶会に」というのはリップサービスではなかったらしい。
先日立派な封蝋と共に誘いは届き、アルスリーアは一人茶会の会場に向かう待合室となってる場所で迎えを待っていた。
先程ここまで案内してくれた侍従が、「王妃様におかれては急な用件が入ってしまいご到着が遅れるとのことですので、申し訳ありませんがこちらでお待ちください」と言って出て行ってから二十分ほどが立つ。
(招待状にはほんの内輪の集まりだから気軽にいらして、とあったけど)
流石に王妃に会いに来るのに軽装というわけにもいかず、今朝は早く起きて念入りに飾ってもらった。
国王に妙に気に入られていることといい、あの距離感に無頓着なことといい、要するにエドワードは無自覚たらしなのだなのだろうなと思う。
自分の顔面の破壊力を理解してないというか……
そんなことをつらつら考えているうちにお呼びがかかり、私は侍従について会場に向かう。
行った先、美しく花が咲き誇った庭園には王妃とおそらく公爵夫人と侯爵夫人と__初めて見る異国の衣装を纏った女性がいた。
そうリーアが笑顔で言ってくれてから数日、エドワードの脳内ではひたすらこのセリフがレフレインされており、またそれに併せて秀麗な顔も少々__いや、かなりヤニ下がっていた。
「団長、」
「……俺の瞳と同じで綺麗……いや、でも色は俺の方が明るいかもしれないが、青の濃さはリーアの方が上だからあのサファイアの色はやっぱり、」
「団長!起きたまま寝ぼけないでください!」
「……ん……?ああなんだディーン、いたのか」
「朝からずっといますよ。今起きたんですか顔洗いますか?冷たい水でも顔に浴びせて差し上げましょうか?」
いい加減やけになってきたディーンの嫌味に、
「いくら何でも寝たまま城には来ないぞ?リーアのいない場所にわざわざ向かうなんて、強靭な意思を持って臨まないとこれないからな」
と大真面目に返され、ディーンは生まれて初めて目の前の上司を殴りたくなった。
「そんなヤニ下がった顔してると、アルスリーア嬢に嫌われますよ?」
「何だと?」
「百年の声も冷めるような酷いヤニ下がりようでしたから、アルスリーア嬢が見たら『カッコ悪い』と思われるでしょうね」
「そんなにか?!」
「望まぬお見合いの席でしたらさぞ高確率で破談が望めるしょうね?」
真っ青になって鏡と睨めっこを始めた上司に、ディーンは少しだけ溜飲を下げた。
その日、アルスリーアは王妃の主催するお茶会に来ていた。
例の夜会の時に「今度ぜひ私の茶会に」というのはリップサービスではなかったらしい。
先日立派な封蝋と共に誘いは届き、アルスリーアは一人茶会の会場に向かう待合室となってる場所で迎えを待っていた。
先程ここまで案内してくれた侍従が、「王妃様におかれては急な用件が入ってしまいご到着が遅れるとのことですので、申し訳ありませんがこちらでお待ちください」と言って出て行ってから二十分ほどが立つ。
(招待状にはほんの内輪の集まりだから気軽にいらして、とあったけど)
流石に王妃に会いに来るのに軽装というわけにもいかず、今朝は早く起きて念入りに飾ってもらった。
国王に妙に気に入られていることといい、あの距離感に無頓着なことといい、要するにエドワードは無自覚たらしなのだなのだろうなと思う。
自分の顔面の破壊力を理解してないというか……
そんなことをつらつら考えているうちにお呼びがかかり、私は侍従について会場に向かう。
行った先、美しく花が咲き誇った庭園には王妃とおそらく公爵夫人と侯爵夫人と__初めて見る異国の衣装を纏った女性がいた。
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