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「き、騎士団長としてのお仕事はどうされるのですか?」
「戦争がなければ書類仕事と団員の訓練ぐらいだ、俺でなくても務まる」
「騎士の方が鍛錬を怠るのは不味いのでは?」
「ん?自分の鍛錬だけならどこでも出来る。ガゼル子爵領の兵士たちに混ぜてもらっても良いかもしれん」
よろしくないと思います、主に先方の精神に。

そんな会話をしながら着いたのは宝石店の前だ。
店構えからしてハイジュエリー専門店なのがわかる。
流石に銘打ってはないが『一見様お断り』感がプンプンする。
__皆、ここで気軽に買い物するんだろうか??

そんなリーアの心中に構わず、エドワードはアルスリーアを扉の中へとエスコートする。
「いらっしゃいませ」
いかにも高級品の取扱いに慣れているといった紳士から声をかけられると、
「フェンティの名で頼んでおいたものだが」
「ご用意してあります。こちらへ」
とさらに奥まった部屋へと案内される。
お得意先専用の個室なのだろう、高級ホテルのラウンジのようだ。

内装の見事さに見惚れていると、
「どうぞ」
と、支配人らしき人が差し出したビロードの張られたトレイには数点の宝石が載っている。
真っ青なサファイア、真っ赤なビジョン・ブラッド、イエローダイヤモンドにレッドダイヤモンド。
昨夜のドレスと同じ色合いだ。
言葉を失っていると、
「リーアは、どれが好き?」

とまるで“どのお菓子が食べたい?“という気楽さで宝石選びを薦めてきたエドワードにくらくらしながら、
「あの、これは……?」
「デビュタントのお祝いに贈った品から今まで、ひとつも君に届いてなかったと聞いた。それまでの分と、その__書類上はもう結婚してるわけだし変かもしれないけどこ、婚約指輪として贈らせて欲しい。ほんとは指輪にした状態で贈りたかったけど、サイズがわからないし勝手に測るわけにもいかないから、ここで君に選んでもらってから指輪に加工してもらおうかと」
“婚約指輪“のところでどもって赤くなるとか乙女か、可愛いか!
この顔面偏差値にその中身のギャップ反則すぎるでしょう、無敵か!

「リーア、もしかしたらこの中には欲しいものがない?」
そんな私の心中に構わず私の機嫌を気にするとか__うん、無敵だった。
戦場の常勝将軍で、国王のお気に入りで、部下からの人望も厚くて、本人も情の深い人で。
戦場で強いのに社交はからっきしで、乙女心が分からなくてそのくせ中身は乙女で、顔も綺麗で血筋も良くて、おまけに今や金も権力コネもある。
このまま一緒にいたらきっと苦労する。
この人を狙ってる人は多くて、私には何の後ろ盾もなくて。
この人の想いだっていつ変わってしまうか、失ってしまうかわからないのに。
一番いて欲しい時にいなくなってしまったけれど、幼い時一番欲しい言葉を、温かさをくれた人でもあって。

「過去の私はもうどこにもいない」と勝手に姿を消した私を探して今の私を見つけてくれた人。

「このサファイアが良いですわ、エディの瞳と同じ色で、とても綺麗。私、指輪にするならこれがいいです」


















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