28 / 73
27
しおりを挟む
「リーア、ちょっと良いかい?」
珍しく日の高いうちに帰ってきたエドワードが、リーアの部屋のドアをノックして来た。
夕食だけは共にしているし少しずつ会話も増えてきてはいるが、まだまだ夫婦というにはほど遠い二人だ。
「お披露目パーティー、ですか」
エドワードが言うには「国王陛下主催の祝勝パーティー」なるものが一ヶ月後王宮で開催される。
そこは今回功績の目立った者たちのお披露目の場でもあり、親類縁者が戦争に行ってた為に祝い事のお披露目を避けていた貴族たちへの解禁宣言のような場を兼ねるという。
その“避けていた祝いごと“には社交デビューも含まれるし、今回叙勲されたル・フェンティ騎士伯爵の正式なお披露目の場でもあるのでデビュタントと合わせてぜひ自分にエスコートさせて欲しい。
という話だったが、
「私がデビュタント、ですか……今頃?」
アルスリーアは困惑した。
通常、貴族の娘のデビューは十六、自分は二十だ。
一年や二年ならともかくもう直ぐ二十一になろう自分がデビュタントに混ざるのは滑稽すぎる。
そう断ろうとしたが、
「私がデビューする君を見たいんだ!……その、戦地にいた頃は、間に合わなかったと諦めていたから……」
懇願しながらも小さくなる声と共にしょんぼり垂れていく耳としっぽが見えるようで、アルスリーアは罪悪感に苛まれる。
なんなんだこの人は。
放置されていたから自分で違う方向へ歩き始めただけなのに、何故か責められているような気がする。
「リーア?」
知らず眉根を寄せいているのに気がついたのだろう、エドワードが気遣わしげに覗き込んで来る。
「その__、そんなに嫌かい?」
嫌なわけではない。
王宮のパーティーにもデビュタントにも憧れはあった。
ドレスだって嫌いなわけじゃない。
十六になったらエドワードにエスコートしてもらえると、信じていた。
だが、その淡い想いはあの日切り落とした髪と共に封じてしまい、開ける鍵が見つからない。
どこを探せばいいかもわからない。
今のアルスリーアはそういう心境だった。
「それに、その王宮での祝勝会ってつまり__」
リーアは嫌な予感がした。
その“王家主催の夜会“とはすなわち__まで考えたところでアルスリーアは考えるのをやめた。
できれば外れて欲しい予測だったがアルスリーアは聡かったし、嫌な予感ほどよく当たるものなのだから。
珍しく日の高いうちに帰ってきたエドワードが、リーアの部屋のドアをノックして来た。
夕食だけは共にしているし少しずつ会話も増えてきてはいるが、まだまだ夫婦というにはほど遠い二人だ。
「お披露目パーティー、ですか」
エドワードが言うには「国王陛下主催の祝勝パーティー」なるものが一ヶ月後王宮で開催される。
そこは今回功績の目立った者たちのお披露目の場でもあり、親類縁者が戦争に行ってた為に祝い事のお披露目を避けていた貴族たちへの解禁宣言のような場を兼ねるという。
その“避けていた祝いごと“には社交デビューも含まれるし、今回叙勲されたル・フェンティ騎士伯爵の正式なお披露目の場でもあるのでデビュタントと合わせてぜひ自分にエスコートさせて欲しい。
という話だったが、
「私がデビュタント、ですか……今頃?」
アルスリーアは困惑した。
通常、貴族の娘のデビューは十六、自分は二十だ。
一年や二年ならともかくもう直ぐ二十一になろう自分がデビュタントに混ざるのは滑稽すぎる。
そう断ろうとしたが、
「私がデビューする君を見たいんだ!……その、戦地にいた頃は、間に合わなかったと諦めていたから……」
懇願しながらも小さくなる声と共にしょんぼり垂れていく耳としっぽが見えるようで、アルスリーアは罪悪感に苛まれる。
なんなんだこの人は。
放置されていたから自分で違う方向へ歩き始めただけなのに、何故か責められているような気がする。
「リーア?」
知らず眉根を寄せいているのに気がついたのだろう、エドワードが気遣わしげに覗き込んで来る。
「その__、そんなに嫌かい?」
嫌なわけではない。
王宮のパーティーにもデビュタントにも憧れはあった。
ドレスだって嫌いなわけじゃない。
十六になったらエドワードにエスコートしてもらえると、信じていた。
だが、その淡い想いはあの日切り落とした髪と共に封じてしまい、開ける鍵が見つからない。
どこを探せばいいかもわからない。
今のアルスリーアはそういう心境だった。
「それに、その王宮での祝勝会ってつまり__」
リーアは嫌な予感がした。
その“王家主催の夜会“とはすなわち__まで考えたところでアルスリーアは考えるのをやめた。
できれば外れて欲しい予測だったがアルスリーアは聡かったし、嫌な予感ほどよく当たるものなのだから。
571
お気に入りに追加
2,960
あなたにおすすめの小説
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる