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「リーア、ちょっと良いかい?」
珍しく日の高いうちに帰ってきたエドワードが、リーアの部屋のドアをノックして来た。
夕食だけは共にしているし少しずつ会話も増えてきてはいるが、まだまだ夫婦というにはほど遠い二人だ。



「お披露目パーティー、ですか」
エドワードが言うには「国王陛下主催の祝勝パーティー」なるものが一ヶ月後王宮で開催される。
そこは今回功績の目立った者たちのお披露目の場でもあり、親類縁者が戦争に行ってた為に祝い事のお披露目を避けていた貴族たちへの解禁宣言のような場を兼ねるという。
その“避けていた祝いごと“には社交デビューも含まれるし、今回叙勲されたル・フェンティ騎士伯爵の正式なお披露目の場でもあるのでデビュタントと合わせてぜひ自分にエスコートさせて欲しい。

という話だったが、
「私がデビュタント、ですか……今頃?」
アルスリーアは困惑した。
通常、貴族の娘のデビューは十六、自分は二十だ。
一年や二年ならともかくもう直ぐ二十一になろう自分がデビュタントに混ざるのは滑稽すぎる。
そう断ろうとしたが、
「私がデビューする君を見たいんだ!……その、戦地にいた頃は、間に合わなかったと諦めていたから……」
懇願しながらも小さくなる声と共にしょんぼり垂れていく耳としっぽが見えるようで、アルスリーアは罪悪感に苛まれる。

なんなんだこの人は。
放置されていたから自分で違う方向へ歩き始めただけなのに、何故か責められているような気がする。
「リーア?」
知らず眉根を寄せいているのに気がついたのだろう、エドワードが気遣わしげに覗き込んで来る。
「その__、そんなに嫌かい?」

嫌なわけではない。
王宮のパーティーにもデビュタントにも憧れはあった。
ドレスだって嫌いなわけじゃない。
十六になったらエドワードにエスコートしてもらえると、信じていた。
だが、その淡い想いはあの日切り落とした髪と共に封じてしまい、開ける鍵が見つからない。
どこを探せばいいかもわからない。

今のアルスリーアはそういう心境だった。

「それに、その王宮での祝勝会ってつまり__」
リーアは嫌な予感がした。
その“王家主催の夜会“とはすなわち__まで考えたところでアルスリーアは考えるのをやめた。
できれば外れて欲しい予測だったがアルスリーアは聡かったし、嫌な予感ほどよく当たるものなのだから。





















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