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「いらっしゃいませ、フェンティ様」
翌日やって来たエドワードを丁寧に迎えると、吃驚した顔をされた。
(そんなに驚かなくても。__そりゃ、最初は酷かったけど)
「本日はお休みをいただきましたので、軽いものしか用意出来ませんでしたがどうぞ」
とアフタヌーンティーの席へエドワードを促す。
「あ あぁ、ありがとう……今日は、これを君に」
一瞬呆けていたエドワードは、いつものような花束でなく、小さな小箱を差し出した。
「これは?」
「髪留めだ。君が十六の時に髪をばっさり切ったと聞いて驚いたけど、もう伸びてるみたいだしその……、仕事中は付けないとしても休みの日なんかに使えると思う」
(髪留め……指輪やネックレスみたなものだったら恋人同士でもないのにって断れるけれどこれは)
逡巡するアルスリーアに、エドワードが慌てたように言う。
「だ、大丈夫だ、受け取ったからって求婚を受け入れてもらえたなんて自惚れたりはしない!受け取ってもらえたらそれで良いんだ」
「……はい、ありがとうございます」
アルスリーアは僅かに微笑んで受け取り、二人とも席に着いた。
「ディーン様から聞きました。その、出征中のエドワード様の「__えっ?!」、」
「ディーンが?アイツ何言ったの?!」
(まさか毎日リーアの可愛さを語ってたこととか遠征中たまたま見つけた場所でこんな所ならリーアと来たかったとか言ってたこと喋ったのかあいつ?!)
「い、いえ聞いたのは少しだけですその__エドワード様が戦場で強かったのは私を迎えに行く約束を果たすためだったと。それは事実、なのでしょうか?」
躊躇いがちに尋ねるアルスリーアの瞳が不安げに揺れる。
「っ……」
言葉を失うエドワードを見てやっぱり違って頓珍漢なことを言ってしまったかと口元を覆うアルスリーアに、
「……の、」
「え?」
「そんなの当たり前じゃないかっ!他に何か理由があるのかっ?!」
と立ち上がって激昂した。
「え、と」
仰け反りつつ、アルスリーアは冷静に疑問をぶつけていく。
(そりゃあるでしょう、国とか家族とか、騎士仲間とか色々?)
「だって、ディーン様を助ける為に、急いで向かったのですよね?私には何も言わずに?」
「っ、それは__そうだけど、」
言われてシュン、となったエドワードがすとんと席に戻る。
「あるじゃないですか、他の理由」
「きっかけはそうだけど決心したのはそうじゃない」
「どういう意味ですか?」
「騎士になろうと思ったのは泣いてる君を守りたかったから、騎士として出世しようと思ったのは君に苦労させたくなかったからだ。俺は何の相続権もない三男坊だし、身分からいっても経験値からしても卒業したての新米が最前線に出されることは本来ならまずない。けどそれがあっさり通るくらい、当時の前線は押されていた。そこへディーンが行方不明になったって聞いて、今すぐ行かなきゃって思った。」
「騎士になった理由は私で、前線に向かったのはディーン様を死なせたくなかったから、ですよね?」
「そうだね。付け加えるなら、俺が幼馴染の女の子の話をした時に君と正式に婚約して、君の卒業までに立派な騎士になればいいって言ってくれたのもディーンなんだ。当時の俺に君を幸せに出来る自信はなかった。彼は二歳上なだけでなく、学園を十五で辞めて騎士として五年やって来た人で、いつもアドバイスを貰ってた。そんな彼を絶対に死なせたくなかったのも本当だけど、同時にリーアが泣いて止めるだろうなってこともわかってた。__だから、目を逸らした」
翌日やって来たエドワードを丁寧に迎えると、吃驚した顔をされた。
(そんなに驚かなくても。__そりゃ、最初は酷かったけど)
「本日はお休みをいただきましたので、軽いものしか用意出来ませんでしたがどうぞ」
とアフタヌーンティーの席へエドワードを促す。
「あ あぁ、ありがとう……今日は、これを君に」
一瞬呆けていたエドワードは、いつものような花束でなく、小さな小箱を差し出した。
「これは?」
「髪留めだ。君が十六の時に髪をばっさり切ったと聞いて驚いたけど、もう伸びてるみたいだしその……、仕事中は付けないとしても休みの日なんかに使えると思う」
(髪留め……指輪やネックレスみたなものだったら恋人同士でもないのにって断れるけれどこれは)
逡巡するアルスリーアに、エドワードが慌てたように言う。
「だ、大丈夫だ、受け取ったからって求婚を受け入れてもらえたなんて自惚れたりはしない!受け取ってもらえたらそれで良いんだ」
「……はい、ありがとうございます」
アルスリーアは僅かに微笑んで受け取り、二人とも席に着いた。
「ディーン様から聞きました。その、出征中のエドワード様の「__えっ?!」、」
「ディーンが?アイツ何言ったの?!」
(まさか毎日リーアの可愛さを語ってたこととか遠征中たまたま見つけた場所でこんな所ならリーアと来たかったとか言ってたこと喋ったのかあいつ?!)
「い、いえ聞いたのは少しだけですその__エドワード様が戦場で強かったのは私を迎えに行く約束を果たすためだったと。それは事実、なのでしょうか?」
躊躇いがちに尋ねるアルスリーアの瞳が不安げに揺れる。
「っ……」
言葉を失うエドワードを見てやっぱり違って頓珍漢なことを言ってしまったかと口元を覆うアルスリーアに、
「……の、」
「え?」
「そんなの当たり前じゃないかっ!他に何か理由があるのかっ?!」
と立ち上がって激昂した。
「え、と」
仰け反りつつ、アルスリーアは冷静に疑問をぶつけていく。
(そりゃあるでしょう、国とか家族とか、騎士仲間とか色々?)
「だって、ディーン様を助ける為に、急いで向かったのですよね?私には何も言わずに?」
「っ、それは__そうだけど、」
言われてシュン、となったエドワードがすとんと席に戻る。
「あるじゃないですか、他の理由」
「きっかけはそうだけど決心したのはそうじゃない」
「どういう意味ですか?」
「騎士になろうと思ったのは泣いてる君を守りたかったから、騎士として出世しようと思ったのは君に苦労させたくなかったからだ。俺は何の相続権もない三男坊だし、身分からいっても経験値からしても卒業したての新米が最前線に出されることは本来ならまずない。けどそれがあっさり通るくらい、当時の前線は押されていた。そこへディーンが行方不明になったって聞いて、今すぐ行かなきゃって思った。」
「騎士になった理由は私で、前線に向かったのはディーン様を死なせたくなかったから、ですよね?」
「そうだね。付け加えるなら、俺が幼馴染の女の子の話をした時に君と正式に婚約して、君の卒業までに立派な騎士になればいいって言ってくれたのもディーンなんだ。当時の俺に君を幸せに出来る自信はなかった。彼は二歳上なだけでなく、学園を十五で辞めて騎士として五年やって来た人で、いつもアドバイスを貰ってた。そんな彼を絶対に死なせたくなかったのも本当だけど、同時にリーアが泣いて止めるだろうなってこともわかってた。__だから、目を逸らした」
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