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「まず、僕が出征した経緯についてなんだけど」
とエドワードが語り出した。



卒業と同時に騎士団に入る予定だったエドワードだが、騎士団の訓練自体には数年前から暇をみては参加しており、団員とは既に仲間友人関係が芽生えていた。
八年前、その中でも二つ上の騎士で特に仲の良い団員が作戦遂行中に行方不明となり、矢も盾もたまらず参戦することにし駆け付けたのだと言う。

リーアのことが気になったが、彼女の卒業までには戻れるだろうと父に戻って来られるまで気にかけて欲しいと頼んだところ、「婚約者が生死不明となればアルスリーア嬢は別の婚約を結んでも良いことになるが構わないか」と言われ、なら書類上だけでも夫婦になってしまえば良いと思った。
そうすれば自分がいない間にリーアに別の男が近付くことも、実家である侯爵家の都合で縁談を勧められることもないだろうと計算したのだ。

実際父である侯爵は三男に過ぎない自分を駒にしか考えておらず、リーアとの婚約を認めたのは「婿入り先を探す手間が省けたのと万が一もっと良い家から婿に欲しいと言われたらひっくり返しやすい」と踏んで「お前が出征中にリーアは別の者と婚約を結ぶかもしれない」と仄めかしたのもなんてことはない、「お前が出生中に婚約者が変わってても文句言うなよ」という意味だと読み取ったエドワードはならばと入籍に踏み切ったのだ。

普通こんなことは通らないが援軍を送るのが急務の戦時下、婚約者や配偶者にまともに会えないまま出立しなければいけない者に対しての例外措置としてそれは認められた。
父侯爵にも出発ギリギリで報告し、「リーアが助けを求めてきたら力になってあげて下さい、戦地に旅立つ息子からの唯一の願いです」と多くの見送る人々の前で言って頷かせた。

これでリーアとの仲は大丈夫だと思った。
そういった経緯いきさつからリーア本人にも知らせることが出来なかったが、「デビュタントには迎えに行くから待っていて」とだけ告げて旅立った。
戻ってきてからきちんと説明して改めて披露の場を作ろうと。
不安がなかったといえば嘘になる。
必ず生きて帰れる保証も根拠もなかったが、「生き延びて必ずリーアを迎えに行く」と決心すれば心は自然と落ち着いた。

友人の騎士とは無事再会出来たがその頃は戦況が思わしくなく、前線の深くに入り込んでいた為なかなか手紙は出せなかった。
おそらく三~四年でカタがつくだろうと言われていた当初の目論見は外れ、その頃にはエドワードは軍を指揮する方に回っていた。
手紙と共に贈り物をする事も可能になった時真っ先に「リーアのデビュタントに何か贈ろう」と思い立ったものの戦地まで来る御用商人から買うか戦利品の中から選ぶかしか出来ない中では中々“これ“といったものは見つからず、迷いに迷った挙句漸く彼女の赤い髪に似合うだろう髪飾りを選び、短い祝いのメッセージと迎えに行けない詫びを託した。

その後も戦が進むに連れてエドワードの地位は上がっていき、贈り物の選択肢も増えていったことからエドワードはリーアの誕生日はもちろん何かの折につけ贈り続けた。

__それが一つもアルスリーアの手に渡っていないことなど、想像もせず。















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