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残った後悔と呪いの発動
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「可哀そうに、可哀想に……!学園でそんな目にあっていたなんて!貴女がここまで追い詰められていたのに気づいてあげられなかったなんて!気付いていたらこんな所に貴女を置いておいたりしなかったのに!何が何でもこんな場所から連れ出したのに!」
血を吐くような叫びだった。
「変だと思ったのよ、いきなり王太子とそんなことになって後宮に入るだなんて貴女らしくないと……」
そう呟く夫人の背後でホワイト伯__フローリアの父親は血が凍る思いだった。
あの時、王宮で面会した別れ際に娘は言ったのだ。
「もうこうしてお話することもないでしょうから最後に申し上げておきます__私、王太子殿下をお慕いしていたことなど一時もございません」と。
娘はあの時、既に決心していたのだ。
自分は気づかなかった、最初に殿下の執務室で会った時も、後宮に入った娘と対面した時も、娘は「違う」と言っていたのに、娘の訴えに取り合わなかった。
あの時妻が一緒に行っていたなら何か気がついたのかもしれなかったのに、妻にはただ殿下の言葉だけを伝えた。
娘はいきなり懐妊したことに戸惑い恥ずかしがっているのだろうと__そして娘は諦めた。
自分に期待することも、足掻くことも___そしてこの結末を選んだ。
(すまない、フローリア)
このことを知った妻は決して自分を許さないだろう。
「国王陛下」
「な、何じゃ、ホワイト伯爵」
今、できることをやらなければ。
「こうなった以上、娘と殿下とのことはなかったことに。娘は我が家へ連れ帰らせていただきます」
「う、うむ。よか「ダメだっ!彼女は私の妃だ、王家の墓で眠らせるんだ!」、キリアン!」
「許します」
駄々っ子のように叫ぶ王太子をよそに進み出たのは王妃だ。
「私の名に置いて許可します。ごめんなさい、ホワイト伯爵夫人。大切なお嬢さんをお預かりしていながらこんなことに……私の監督不行き届きです」
「王妃さま……」
「けれどこのままではあんまりだわ。濡れた体を拭いて、髪を洗って乾かして着替えさせてあげましょう?温かくしてゆっくり眠れるように」
「……っはい!」
「髪を梳いて綺麗に整えて差し上げましょうね。衣装は貴女が選んでくださる?伯爵夫人。」
「はい。はい……!」
夫人は涙ながらに王妃に縋りつく。
「夫人が付いててくだされば安心だわ。今宵は娘さんと一緒に__ああそうだわ、突然のことで学園のご友人たちもお別れを言えていない方も多いでしょう、一晩だけ私の宮の祈りの間に安置させてはいただけないかしら?もちろんバカ息子はじめ男どもは入れさせないわ。私直属の女性騎士に見張らせる。許してもらえるかしら?」
「ああ……そうですね、フローリアの友人たちは何も知らないまま……」
「ええ。貴女の娘さんは他のご令嬢の未来も守ったのよ。皆にお礼を言わせてあげて」
「ええ、そうですね」
「良かったわ。安置する棺は花でいっぱいにしましょうね。フローリア様は、どんな花がお好きでしたの?」
「あの子はどんな花も好きでしたわ。その名の通り__……」
この会話において男たちは蚊帳の外だった。
身分高い男ほど、身に覚えがあったのだ。
在学中迷いなくこの権利を行使した者、
躊躇いつつ結局は甘んじた者、
半ば知りつつ見ないフリを貫いた者、
そして、
「ただの噂だと、そう思っていたのだ……」
と呟いたホワイト伯爵のような者も等しく呪われた。
フローリアの最後の言葉に。
血を吐くような叫びだった。
「変だと思ったのよ、いきなり王太子とそんなことになって後宮に入るだなんて貴女らしくないと……」
そう呟く夫人の背後でホワイト伯__フローリアの父親は血が凍る思いだった。
あの時、王宮で面会した別れ際に娘は言ったのだ。
「もうこうしてお話することもないでしょうから最後に申し上げておきます__私、王太子殿下をお慕いしていたことなど一時もございません」と。
娘はあの時、既に決心していたのだ。
自分は気づかなかった、最初に殿下の執務室で会った時も、後宮に入った娘と対面した時も、娘は「違う」と言っていたのに、娘の訴えに取り合わなかった。
あの時妻が一緒に行っていたなら何か気がついたのかもしれなかったのに、妻にはただ殿下の言葉だけを伝えた。
娘はいきなり懐妊したことに戸惑い恥ずかしがっているのだろうと__そして娘は諦めた。
自分に期待することも、足掻くことも___そしてこの結末を選んだ。
(すまない、フローリア)
このことを知った妻は決して自分を許さないだろう。
「国王陛下」
「な、何じゃ、ホワイト伯爵」
今、できることをやらなければ。
「こうなった以上、娘と殿下とのことはなかったことに。娘は我が家へ連れ帰らせていただきます」
「う、うむ。よか「ダメだっ!彼女は私の妃だ、王家の墓で眠らせるんだ!」、キリアン!」
「許します」
駄々っ子のように叫ぶ王太子をよそに進み出たのは王妃だ。
「私の名に置いて許可します。ごめんなさい、ホワイト伯爵夫人。大切なお嬢さんをお預かりしていながらこんなことに……私の監督不行き届きです」
「王妃さま……」
「けれどこのままではあんまりだわ。濡れた体を拭いて、髪を洗って乾かして着替えさせてあげましょう?温かくしてゆっくり眠れるように」
「……っはい!」
「髪を梳いて綺麗に整えて差し上げましょうね。衣装は貴女が選んでくださる?伯爵夫人。」
「はい。はい……!」
夫人は涙ながらに王妃に縋りつく。
「夫人が付いててくだされば安心だわ。今宵は娘さんと一緒に__ああそうだわ、突然のことで学園のご友人たちもお別れを言えていない方も多いでしょう、一晩だけ私の宮の祈りの間に安置させてはいただけないかしら?もちろんバカ息子はじめ男どもは入れさせないわ。私直属の女性騎士に見張らせる。許してもらえるかしら?」
「ああ……そうですね、フローリアの友人たちは何も知らないまま……」
「ええ。貴女の娘さんは他のご令嬢の未来も守ったのよ。皆にお礼を言わせてあげて」
「ええ、そうですね」
「良かったわ。安置する棺は花でいっぱいにしましょうね。フローリア様は、どんな花がお好きでしたの?」
「あの子はどんな花も好きでしたわ。その名の通り__……」
この会話において男たちは蚊帳の外だった。
身分高い男ほど、身に覚えがあったのだ。
在学中迷いなくこの権利を行使した者、
躊躇いつつ結局は甘んじた者、
半ば知りつつ見ないフリを貫いた者、
そして、
「ただの噂だと、そう思っていたのだ……」
と呟いたホワイト伯爵のような者も等しく呪われた。
フローリアの最後の言葉に。
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