26 / 64
26
しおりを挟む
そこに向かいながらも、黒太子の熱弁は止まらない。
「あの時、ご自分の身体から青白い炎が立ち昇っていたのに気がつきませんでしたか?」
「何のお話ですか?」
「扇術で奴らを叩き伏せた時ですよ。やはり、ご自分では気がついておられなかった?」
「何かの見間違いでは?私はそんな能力は持ち合わせておりません」
「無自覚ですか……まあ、ひとつ言えるのはあの時貴女から立ち昇った青白い炎は間違いなく貴女の発したもの。扇術などなくても、彼等は貴女にひれ伏していたと思いますよ?」
「………」
何が言いたいんだ?
あの扇術は素晴らしかったと言い、一方で扇術など必要ないと言う。
「私が言いたいのはつまり__貴女ならドラゴンにすら、相対出来るのではないかと言う事ですよ」
「っ、それは買い被りですわ」
ドラゴンは波長の合った、若しくはマスターと認めた人間しか近づく事を許さない。
例え認めた人間の伴侶であろうと、下手に近付けば八つ裂きにされかねない。
だから、私も近付こうとは思わない。
が、
ひとつだけわかったのは、この男は竜眼の持ち主らしい。
竜眼というのは”全てを見通す目”だという。
それだけ聞くと千里眼みたいな印象を受けるがちょっと違う。
竜眼は、文字通り竜の動きを見極める事が出来る。
それだけなら訓練で何とかなるが生まれつきのスキルというか、持ってる人へは最初からプラス値があるとでも言えばいいのか。
過去や未来、索敵に適した遠視や暗視等、本来人に見えるはずのないもの__霊体とか?嘘を見抜けるって人もいたな。
人のオーラが見える、ていうのはきいた事ないけど……別にいたっておかしくはない。それにプラス値は一人一種しか持ち合わせないとも聞いた。
……ヒロインのオーラは好みじゃなかったが私のオーラは好みってことだろうか……?
いや、そんなんどっちでもいんだけど。
私は紅茶が供されているテーブルの傍らに立つ令嬢に声をかける。
「ご機嫌よう、ハリエル男爵令嬢」
驚いたように振り向いた御令嬢は、
「ご、ご機嫌ようセイラ様、えっ?」
私の背後にいる人物に目を留め息を呑み、次いで、
「皇太子殿下!」
と声をあげた。
その声に紛れもなく喜色を感じとって、(相変わらずわかりやすい方だわ)と心中で苦笑する。
「まあ。同じ学園にいらっしゃるのに、お二人は面識がありませんでしたの?」
「学年が違いますからね」
苦笑しながら黒太子が言う。
「そうでしたの。ではルキフェル殿下、こちらはジョアンナ・ハリエル男爵令嬢。ハリエル商会は扱う紅茶の種類が国内一と言われていますの」
「ほぅ?」
少し驚いたように言う。
ほんとに知らなかったのかな?
まあ、興味ない分野はとことん興味なさそうだから別に驚かないけど。
「ジョアンナ様の紅茶の知識は素晴らしいですものね。今日のお勧めは何かしら?」
「あっ、えっと、はい__」
ルキフェルに見惚れている令嬢は構わず私が話を進めるのに若干苛ついたような目を一瞬したもののすぐに打ち消し、にこやかに話しはじめた。
「本日のお勧めは北の高山地域でしか栽培出来ないこちらのフレッシュハーブのアイスティーです。摘み取って持ち帰るまでの期間が長いと香りが失われてしまうので移動魔法陣を使って運びますのよ」
「素晴らしいですわね!ではそれをいただけるかしら?ルキフェル殿下と、私に?」
ぴくりとジョアンナの眉がつり上がるのに気が付いたが見ないふりをする。
「ええ。もちろん、お注ぎしますわ。室温に合わせて氷の量も調整が必要ですから」
貴女には無理ですものね?
という心の声が聞こえる。
ブレなくて結構な事だ。
やがて曇り一つない透明なグラスに注がれたアイスティーを受け取ろうと右手を伸ばすのと同時に私は半身と顔だけ動かし、
「どうぞ、ルキフェル殿下」と右手で受け取ったグラスを左手でルキフェル殿下に渡そうとした。
直後、
「えっ….」というジョアンナの小さな叫びと共にグラスは落下した。
私のドレスに大量の紅茶を浴びせながら、広間の床へと。
カシャ……ン!
という音と共に広間に静寂が満ちた。
私はすかさず、
「申し訳ありませんジョアンナ様!私がグラスを受け取り損ねたばかりに!」
と大袈裟に詫びて見せる。
「い、いえ、私の方こそっ……」
慌てるジョアンナに構わず、私は急いでそのまま黒太子の方に向き直り膝を折る。
「申し訳ありませんルキフェル殿下。目の前でとんだ不調法を。破片でお怪我をなされたりご衣裳を汚したりはなさっておられないでしょうか?」
「いえ、私はどこも。それより貴女の方が__」
確かに酷い有り様だ。
胸元から裾まで茶色い液体が広がっている。
「申し訳ありません、お見苦しいさまを。これではとてもこんな場所にいるわけには参りませんわね。恐れいりますが私はこれにて退出させていただきます」
「いや、しかし」
「いいえ。こんな無様な状態でルキフェル殿下のような高貴な方の隣に立つ事は出来ません。殿下だけでなくこの国の品位さえ疑われてしまいます。こんな姿を人前に晒すわけには参りません」
ルキフェルの返事を待たず背後でオロオロしている令嬢に向き直ると、
「申し訳ありません、ジョアンナ様。せっかく淹れていただいた紅茶を無駄にしてしまいましたわ」
「い、いえ、い今のは私が悪いんですわ!お渡しする時にうっかりグラスを傾けてしまったのですもの!」
「まあそうでしたの?目を離していたので全く気付きませんでしたわ」
周りにいた人たちは、見てたろうけどね?
「そのドレスは弁償させていただきます!替えのドレスもすぐ用意させます。ですから__」
この場で今日の主役の一人が退出なんてどうかやめて下さい!と訴える目は敢えて無視する。
「残念ながら既成のドレスでは私にはサイズが合いませんの。このドレスはレオン様がご用意して下さった物なのです、私にぴったり合うように」
「レ、レオンハルト殿下が?」
ハリエル男爵令嬢は自分が今台無しにしたドレスは王子が用意したものだと知らされさらに青くなる。
「ええ。ですから、お詫びならレオン様に。もし、私にも詫びたいと仰ってくださるなら、一つだけお願いが」
「も、勿論ですわ!私に出来る事なら__」
「ルキフェル殿下のお相手をお願い致します」
「えっ……」
「今日のこの夜会はルキフェル殿下の為のもの。それをこのような形で汚してしまったのです。幸いルキフェル殿下はこちらの紅茶に興味をもって下さった様子。でしたら適任はジョアンナ様しかおりませんわ。こんな汚れた衣裳では私はこの場にいられません。ですから、後をよろしくお願い致します」
両手をがっちり握られて言われた言葉に男爵令嬢は青くなるがそれには気付かぬ様子で黒太子に向き直り、最大限の礼を取ると、
「このような次第になってしまい申し訳ありません、ルキフェル殿下。私はこれにて御前を失礼させていただきます」
「__仕方ありませんね。ではまた、いずれの機会に」
「はい」
私は殊更恥じ入る風情を装おってその場を後にした。
「あの時、ご自分の身体から青白い炎が立ち昇っていたのに気がつきませんでしたか?」
「何のお話ですか?」
「扇術で奴らを叩き伏せた時ですよ。やはり、ご自分では気がついておられなかった?」
「何かの見間違いでは?私はそんな能力は持ち合わせておりません」
「無自覚ですか……まあ、ひとつ言えるのはあの時貴女から立ち昇った青白い炎は間違いなく貴女の発したもの。扇術などなくても、彼等は貴女にひれ伏していたと思いますよ?」
「………」
何が言いたいんだ?
あの扇術は素晴らしかったと言い、一方で扇術など必要ないと言う。
「私が言いたいのはつまり__貴女ならドラゴンにすら、相対出来るのではないかと言う事ですよ」
「っ、それは買い被りですわ」
ドラゴンは波長の合った、若しくはマスターと認めた人間しか近づく事を許さない。
例え認めた人間の伴侶であろうと、下手に近付けば八つ裂きにされかねない。
だから、私も近付こうとは思わない。
が、
ひとつだけわかったのは、この男は竜眼の持ち主らしい。
竜眼というのは”全てを見通す目”だという。
それだけ聞くと千里眼みたいな印象を受けるがちょっと違う。
竜眼は、文字通り竜の動きを見極める事が出来る。
それだけなら訓練で何とかなるが生まれつきのスキルというか、持ってる人へは最初からプラス値があるとでも言えばいいのか。
過去や未来、索敵に適した遠視や暗視等、本来人に見えるはずのないもの__霊体とか?嘘を見抜けるって人もいたな。
人のオーラが見える、ていうのはきいた事ないけど……別にいたっておかしくはない。それにプラス値は一人一種しか持ち合わせないとも聞いた。
……ヒロインのオーラは好みじゃなかったが私のオーラは好みってことだろうか……?
いや、そんなんどっちでもいんだけど。
私は紅茶が供されているテーブルの傍らに立つ令嬢に声をかける。
「ご機嫌よう、ハリエル男爵令嬢」
驚いたように振り向いた御令嬢は、
「ご、ご機嫌ようセイラ様、えっ?」
私の背後にいる人物に目を留め息を呑み、次いで、
「皇太子殿下!」
と声をあげた。
その声に紛れもなく喜色を感じとって、(相変わらずわかりやすい方だわ)と心中で苦笑する。
「まあ。同じ学園にいらっしゃるのに、お二人は面識がありませんでしたの?」
「学年が違いますからね」
苦笑しながら黒太子が言う。
「そうでしたの。ではルキフェル殿下、こちらはジョアンナ・ハリエル男爵令嬢。ハリエル商会は扱う紅茶の種類が国内一と言われていますの」
「ほぅ?」
少し驚いたように言う。
ほんとに知らなかったのかな?
まあ、興味ない分野はとことん興味なさそうだから別に驚かないけど。
「ジョアンナ様の紅茶の知識は素晴らしいですものね。今日のお勧めは何かしら?」
「あっ、えっと、はい__」
ルキフェルに見惚れている令嬢は構わず私が話を進めるのに若干苛ついたような目を一瞬したもののすぐに打ち消し、にこやかに話しはじめた。
「本日のお勧めは北の高山地域でしか栽培出来ないこちらのフレッシュハーブのアイスティーです。摘み取って持ち帰るまでの期間が長いと香りが失われてしまうので移動魔法陣を使って運びますのよ」
「素晴らしいですわね!ではそれをいただけるかしら?ルキフェル殿下と、私に?」
ぴくりとジョアンナの眉がつり上がるのに気が付いたが見ないふりをする。
「ええ。もちろん、お注ぎしますわ。室温に合わせて氷の量も調整が必要ですから」
貴女には無理ですものね?
という心の声が聞こえる。
ブレなくて結構な事だ。
やがて曇り一つない透明なグラスに注がれたアイスティーを受け取ろうと右手を伸ばすのと同時に私は半身と顔だけ動かし、
「どうぞ、ルキフェル殿下」と右手で受け取ったグラスを左手でルキフェル殿下に渡そうとした。
直後、
「えっ….」というジョアンナの小さな叫びと共にグラスは落下した。
私のドレスに大量の紅茶を浴びせながら、広間の床へと。
カシャ……ン!
という音と共に広間に静寂が満ちた。
私はすかさず、
「申し訳ありませんジョアンナ様!私がグラスを受け取り損ねたばかりに!」
と大袈裟に詫びて見せる。
「い、いえ、私の方こそっ……」
慌てるジョアンナに構わず、私は急いでそのまま黒太子の方に向き直り膝を折る。
「申し訳ありませんルキフェル殿下。目の前でとんだ不調法を。破片でお怪我をなされたりご衣裳を汚したりはなさっておられないでしょうか?」
「いえ、私はどこも。それより貴女の方が__」
確かに酷い有り様だ。
胸元から裾まで茶色い液体が広がっている。
「申し訳ありません、お見苦しいさまを。これではとてもこんな場所にいるわけには参りませんわね。恐れいりますが私はこれにて退出させていただきます」
「いや、しかし」
「いいえ。こんな無様な状態でルキフェル殿下のような高貴な方の隣に立つ事は出来ません。殿下だけでなくこの国の品位さえ疑われてしまいます。こんな姿を人前に晒すわけには参りません」
ルキフェルの返事を待たず背後でオロオロしている令嬢に向き直ると、
「申し訳ありません、ジョアンナ様。せっかく淹れていただいた紅茶を無駄にしてしまいましたわ」
「い、いえ、い今のは私が悪いんですわ!お渡しする時にうっかりグラスを傾けてしまったのですもの!」
「まあそうでしたの?目を離していたので全く気付きませんでしたわ」
周りにいた人たちは、見てたろうけどね?
「そのドレスは弁償させていただきます!替えのドレスもすぐ用意させます。ですから__」
この場で今日の主役の一人が退出なんてどうかやめて下さい!と訴える目は敢えて無視する。
「残念ながら既成のドレスでは私にはサイズが合いませんの。このドレスはレオン様がご用意して下さった物なのです、私にぴったり合うように」
「レ、レオンハルト殿下が?」
ハリエル男爵令嬢は自分が今台無しにしたドレスは王子が用意したものだと知らされさらに青くなる。
「ええ。ですから、お詫びならレオン様に。もし、私にも詫びたいと仰ってくださるなら、一つだけお願いが」
「も、勿論ですわ!私に出来る事なら__」
「ルキフェル殿下のお相手をお願い致します」
「えっ……」
「今日のこの夜会はルキフェル殿下の為のもの。それをこのような形で汚してしまったのです。幸いルキフェル殿下はこちらの紅茶に興味をもって下さった様子。でしたら適任はジョアンナ様しかおりませんわ。こんな汚れた衣裳では私はこの場にいられません。ですから、後をよろしくお願い致します」
両手をがっちり握られて言われた言葉に男爵令嬢は青くなるがそれには気付かぬ様子で黒太子に向き直り、最大限の礼を取ると、
「このような次第になってしまい申し訳ありません、ルキフェル殿下。私はこれにて御前を失礼させていただきます」
「__仕方ありませんね。ではまた、いずれの機会に」
「はい」
私は殊更恥じ入る風情を装おってその場を後にした。
80
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる