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「わけのわからないことを言うな!」
__他人の面倒なんか見たことないから、わからないんだろうなあ。__て、なんだか段々腹がたってきた。
「ーーこの平等を謳った学園で、身分をふりかざすしか出来ない中の下が、何を仰いますやら」
猫が脱げた。
「何だとっ?!」
「中の下、と申しました。間違いございませんでしょう?」
「貴様っ!たかが伯爵令嬢の分際で僕を愚弄するのかっ?!」
「伯爵令嬢として言ってる訳ではありません。いち生徒として申し上げているのです、この場でこんな騒ぎを起こす方など、所詮中の下レベルだと」
ひと言ひとことに力をこめて言ってやる。
「井の中の蛙なら井の中だけで泳いでおれば良いのに、わざわざ井の中から出てきて、噛み付く牙も生えきっておりませんのに体制に牙を剥くなんて滑稽すぎると言っているのです!」
この学園は現王の体制の具現化だ。
ひっくり返すには力が必要だ、もちろん頭脳も。
こんなレベルで、自分の周りに優秀な頭脳を侍らせたつもりになってそっくり返ってるなんてお笑いだ。
「黙れっ!正体を現したな女狐め!」
妖怪か私は。スマイル0円見返りなしの王子に言われたくない。
「そんな戯れ言だけで勝ったと思うなよ、連れて来い!」
王子の指示で取り巻きが動き、やがてマントにくるまれて足取りがふらふらした少年が取り巻きAとB(もう名前知らないからこれでいいや)に挟まれるようにして目の前に連れてこられる。
「これが貴様の悪事の証拠だっ!彼の名はノーマン・ヒューズ。私の大切な友人の1人だ。彼が先日階段から突き落とされて大怪我をした」
ーーーまさかの鉄板ネタ再来。
どうせ狂言だろうと思い目の前の少年をよくよく観察すると、「__ひっ!」と声をあげられた。
「酷い目に遭わされたんだ、無理もない」
芝居がかった口調でこちらに来ると、その少年の肩に手をかけ
「さあ、お前を突き落とした犯人は誰だ?」
「ろ、ローズ伯令嬢…!この人です!」
ノーマンとかいう少年は、脅えながらもはっきりと答えた。
嫌な予感が頭をよぎる。
まさか、本当に落としたのか?
この証言をさせる為だけに?
人を、階段から落としたのか?こいつらは。
この少年には確かに見覚えがある。シンパ達の中でも1番これ見よがしに私の周りをうろついてたやつだ。そして、私と目があうとひっ と引っ込む__今みたいに。
「証拠はありますの?」
背後からリズの声がかかる。
「もちろんだ。これは君のものだろう?現場に落ちていた」
差し出されたハンカチは確かに。
「……以前私が持っていた物です」
周囲がざわっと色めき立つ。
背後と面前で色が大分違うと思うが。
面前のバカは勝利を確信したようだ。
「見ろ!認めたぞ!この女はーー「認めてませんよ?」はっ?」
勝利宣言しようとしてた王子の動きが止まる。
「なっ!何を言って「“以前持っていた”とだけ申し上げたのです。誰が落としたって言いました?」
「見苦しい言い訳をするな!このハンカチにはローズ家の紋章が入ってるだろ「ですから以前持っていた と申し上げたでしょう?」
いちいち自分のセリフが言い切れないのがかなりイラだってるのがわかるが私はもちろんわざとやっている。
私はこういう事にならないように用心してきた。
人に伝言する時も絶対自分では書かなかった。
こういう形で利用されたら面倒だからだ。
出来得る限り口頭で、それが無理なら近くにいる人に今メモするものを持ってないので代筆していただけるかしら?と声をかけ。
ハンカチもこうされる率が高かった為その都度刺繍の模様を少しずつ変えた。
そう、このハンカチは失くしたのでも落としたのでもなくーーー
「そ、それは私のものです……!」
背後で、震えるような声と共に手を挙げた女生徒がいた。
「な、何だと……?」
一瞬黙ったバカはすぐに私を睨みつけ、
「貴様!こんな嘘の証人まで用意していたのか!つくづく見下げ果てた奴だな!」
「嘘じゃありません!!」
先程の生徒がはっきりと怒鳴り返し、面前のバカ同様私も驚く。
「っそれは!そのハンカチは!私が特権派の人達に酷いことを言われて泣いていた時にっ!通りがかったセイラ様が差し出して下さって……!良かったら差し上げるわ と言って下さったものです!大事に持ってたのに!ある日急になくなってしまって!」
ーーーあらら。悪役令嬢なのにか弱い女の子に全力で庇われてしまった。
そう、実はこういう事は結構あった。
だって、目の前で誰か泣いてたらハンカチ差し出さない訳には行かないし”高慢な悪役令嬢”のイメージを出来るだけ払拭しておきたかったし?
なので、誰かにあげる度私は少しずつ刺繍を変えて目印にした。
いつ手元を離れたものか自分で判別出来るように。
もちろんこれも自分で刺したのでなく第三者に依頼してやってもらったもの。
記録も残してあるし必要なら証言してもらう手筈も整えてあったのだがーーー
「わ、私も、同じようにしていただいた事がありますわ!」
「実は私も……」
とちらほら声があがり面前のバカが再度固まる。
最初に声をあげた生徒が駆け寄ってくる。
「申し訳ありませんセイラ様!私がハンカチを盗まれたばっかりに!」
ーーーあらら。盗まれた、まで読まれちゃってるじゃん残念ブレーンズ。
「いいのよ、貴女はハンカチをなくした時もこうやって謝りにきてくれたでしょう?覚えていてよ。あれは確かーー」
「黙れっ!!どこまで僕をバカにする気だっ!虚言を重ね僕を陥し入れるつもりだなっ?!反逆者め!」
あ、王子のメッキが剥がれた。
「こいつらを拘束しろ!拷問して真実を吐かせるんだ!」
キレた王子バカの言葉に取り巻きAとB(体格からいって卒業後は騎士団確定してます系)が私達に飛びかかる。
「ひっ……!」
「お止めなさい慮外者!」
私は手にあった扇子でAとBの手を薙ぎ払い、横にいた女生徒を背後に庇う。
この時セイラから青白い炎がほとばしった様な気がしたが気のせいか?と会場中の誰もが目を瞬かせた。
「ーー婚約者でもない女性に気安く触るな と教わりませんでしたか?」
私は冷えびえとした声で尋ねる。
相手は手を押さえて呆然としている。
小娘の扇子に打ち払われたのが信じられないのだろう。
因みにこれは扇術といいます。我が家は男性は武闘派、女性は皆扇術派(?)なので、私もお母さまも身に付けている。
理由は簡単、扇子しか持てないこんな格好でも自分の身を守るため。
動態視力さえきっちり鍛えておけばこれくらい誰でも出来るんですよ?
優れた使い手なら剣だって捌くのだから、今みたいに猪の突進レベルならわけはない。
単に伸びてくる手を避けて、扇子で叩いただけだからね?
要は悪い子にメッてやる要領だ。
手じゃなくて扇子で、さらにスナップをきかせたから少ーーーし、痛かったかもしれないけど、悪い子はそっちだから仕方ない。
「謝罪なさい」
私は扇子を構えたまま言う。
「「「なっ…」」」
バカどもが声をあげる前に私達とバカどもの間に人が立ち塞がり、速攻でAとBをその場に叩き伏せる。
「え」
この格好、まさか……
「王宮近衛……?」
「なっ!?貴様ら何で……」
目の前の近衛兵は王子の質問は無視して私に問いかける。
「遅くなって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
「……ええ」
答えつつ、私の頭の中も真っ白だ。
どういう事だ、これは?
答えは、すぐにやってきた。
「そこまでにしておけ、バカが」
怜悧な声と共に、白い光が扉から差し込んだ。
__他人の面倒なんか見たことないから、わからないんだろうなあ。__て、なんだか段々腹がたってきた。
「ーーこの平等を謳った学園で、身分をふりかざすしか出来ない中の下が、何を仰いますやら」
猫が脱げた。
「何だとっ?!」
「中の下、と申しました。間違いございませんでしょう?」
「貴様っ!たかが伯爵令嬢の分際で僕を愚弄するのかっ?!」
「伯爵令嬢として言ってる訳ではありません。いち生徒として申し上げているのです、この場でこんな騒ぎを起こす方など、所詮中の下レベルだと」
ひと言ひとことに力をこめて言ってやる。
「井の中の蛙なら井の中だけで泳いでおれば良いのに、わざわざ井の中から出てきて、噛み付く牙も生えきっておりませんのに体制に牙を剥くなんて滑稽すぎると言っているのです!」
この学園は現王の体制の具現化だ。
ひっくり返すには力が必要だ、もちろん頭脳も。
こんなレベルで、自分の周りに優秀な頭脳を侍らせたつもりになってそっくり返ってるなんてお笑いだ。
「黙れっ!正体を現したな女狐め!」
妖怪か私は。スマイル0円見返りなしの王子に言われたくない。
「そんな戯れ言だけで勝ったと思うなよ、連れて来い!」
王子の指示で取り巻きが動き、やがてマントにくるまれて足取りがふらふらした少年が取り巻きAとB(もう名前知らないからこれでいいや)に挟まれるようにして目の前に連れてこられる。
「これが貴様の悪事の証拠だっ!彼の名はノーマン・ヒューズ。私の大切な友人の1人だ。彼が先日階段から突き落とされて大怪我をした」
ーーーまさかの鉄板ネタ再来。
どうせ狂言だろうと思い目の前の少年をよくよく観察すると、「__ひっ!」と声をあげられた。
「酷い目に遭わされたんだ、無理もない」
芝居がかった口調でこちらに来ると、その少年の肩に手をかけ
「さあ、お前を突き落とした犯人は誰だ?」
「ろ、ローズ伯令嬢…!この人です!」
ノーマンとかいう少年は、脅えながらもはっきりと答えた。
嫌な予感が頭をよぎる。
まさか、本当に落としたのか?
この証言をさせる為だけに?
人を、階段から落としたのか?こいつらは。
この少年には確かに見覚えがある。シンパ達の中でも1番これ見よがしに私の周りをうろついてたやつだ。そして、私と目があうとひっ と引っ込む__今みたいに。
「証拠はありますの?」
背後からリズの声がかかる。
「もちろんだ。これは君のものだろう?現場に落ちていた」
差し出されたハンカチは確かに。
「……以前私が持っていた物です」
周囲がざわっと色めき立つ。
背後と面前で色が大分違うと思うが。
面前のバカは勝利を確信したようだ。
「見ろ!認めたぞ!この女はーー「認めてませんよ?」はっ?」
勝利宣言しようとしてた王子の動きが止まる。
「なっ!何を言って「“以前持っていた”とだけ申し上げたのです。誰が落としたって言いました?」
「見苦しい言い訳をするな!このハンカチにはローズ家の紋章が入ってるだろ「ですから以前持っていた と申し上げたでしょう?」
いちいち自分のセリフが言い切れないのがかなりイラだってるのがわかるが私はもちろんわざとやっている。
私はこういう事にならないように用心してきた。
人に伝言する時も絶対自分では書かなかった。
こういう形で利用されたら面倒だからだ。
出来得る限り口頭で、それが無理なら近くにいる人に今メモするものを持ってないので代筆していただけるかしら?と声をかけ。
ハンカチもこうされる率が高かった為その都度刺繍の模様を少しずつ変えた。
そう、このハンカチは失くしたのでも落としたのでもなくーーー
「そ、それは私のものです……!」
背後で、震えるような声と共に手を挙げた女生徒がいた。
「な、何だと……?」
一瞬黙ったバカはすぐに私を睨みつけ、
「貴様!こんな嘘の証人まで用意していたのか!つくづく見下げ果てた奴だな!」
「嘘じゃありません!!」
先程の生徒がはっきりと怒鳴り返し、面前のバカ同様私も驚く。
「っそれは!そのハンカチは!私が特権派の人達に酷いことを言われて泣いていた時にっ!通りがかったセイラ様が差し出して下さって……!良かったら差し上げるわ と言って下さったものです!大事に持ってたのに!ある日急になくなってしまって!」
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そう、実はこういう事は結構あった。
だって、目の前で誰か泣いてたらハンカチ差し出さない訳には行かないし”高慢な悪役令嬢”のイメージを出来るだけ払拭しておきたかったし?
なので、誰かにあげる度私は少しずつ刺繍を変えて目印にした。
いつ手元を離れたものか自分で判別出来るように。
もちろんこれも自分で刺したのでなく第三者に依頼してやってもらったもの。
記録も残してあるし必要なら証言してもらう手筈も整えてあったのだがーーー
「わ、私も、同じようにしていただいた事がありますわ!」
「実は私も……」
とちらほら声があがり面前のバカが再度固まる。
最初に声をあげた生徒が駆け寄ってくる。
「申し訳ありませんセイラ様!私がハンカチを盗まれたばっかりに!」
ーーーあらら。盗まれた、まで読まれちゃってるじゃん残念ブレーンズ。
「いいのよ、貴女はハンカチをなくした時もこうやって謝りにきてくれたでしょう?覚えていてよ。あれは確かーー」
「黙れっ!!どこまで僕をバカにする気だっ!虚言を重ね僕を陥し入れるつもりだなっ?!反逆者め!」
あ、王子のメッキが剥がれた。
「こいつらを拘束しろ!拷問して真実を吐かせるんだ!」
キレた王子バカの言葉に取り巻きAとB(体格からいって卒業後は騎士団確定してます系)が私達に飛びかかる。
「ひっ……!」
「お止めなさい慮外者!」
私は手にあった扇子でAとBの手を薙ぎ払い、横にいた女生徒を背後に庇う。
この時セイラから青白い炎がほとばしった様な気がしたが気のせいか?と会場中の誰もが目を瞬かせた。
「ーー婚約者でもない女性に気安く触るな と教わりませんでしたか?」
私は冷えびえとした声で尋ねる。
相手は手を押さえて呆然としている。
小娘の扇子に打ち払われたのが信じられないのだろう。
因みにこれは扇術といいます。我が家は男性は武闘派、女性は皆扇術派(?)なので、私もお母さまも身に付けている。
理由は簡単、扇子しか持てないこんな格好でも自分の身を守るため。
動態視力さえきっちり鍛えておけばこれくらい誰でも出来るんですよ?
優れた使い手なら剣だって捌くのだから、今みたいに猪の突進レベルならわけはない。
単に伸びてくる手を避けて、扇子で叩いただけだからね?
要は悪い子にメッてやる要領だ。
手じゃなくて扇子で、さらにスナップをきかせたから少ーーーし、痛かったかもしれないけど、悪い子はそっちだから仕方ない。
「謝罪なさい」
私は扇子を構えたまま言う。
「「「なっ…」」」
バカどもが声をあげる前に私達とバカどもの間に人が立ち塞がり、速攻でAとBをその場に叩き伏せる。
「え」
この格好、まさか……
「王宮近衛……?」
「なっ!?貴様ら何で……」
目の前の近衛兵は王子の質問は無視して私に問いかける。
「遅くなって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
「……ええ」
答えつつ、私の頭の中も真っ白だ。
どういう事だ、これは?
答えは、すぐにやってきた。
「そこまでにしておけ、バカが」
怜悧な声と共に、白い光が扉から差し込んだ。
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