上 下
22 / 41

21 招待状か果たし状か、それが問題だ

しおりを挟む
王家の使者が持って来たものは、夜会への招待状だった。

曰く、『台無しにしてしまった結婚式のお詫びに是非二人で出席してお披露目の場としてほしい』という大変勿体無いあつかましいお言葉メッセージ付きで。

「まあ……」
とフォレストグリーンの瞳を見開いたマリーローズは決して感動したわけではない、あまりの図々しさにドン引きしたのだ。
「結婚式を台無しにしたって自覚はあるのね」
と続けたマリーローズに周囲が続く。
「自覚はあるのに常識はないんですね」
とハンナが言い、
「確かに非常識だな」
「さすがに無神経すぎませんか?」
「これがこちらの王家の常識なんですか?興味深いですね」
護衛騎士たちが口々に言い、セントレイ伯爵はじめ親たちは苦い顔になる。

この、人の結婚式を台無しにしておいて『フォローしてやったぞ』感。
デビュタント前の王女はまだ主催どころか出席も出来ないからこの招待状は国王からだが、
「国王陛下も、脳にお花が咲く病なのかしら?」
似非騎士や王女と同じ、ハリセンで引っ叩いてやりたい感じの??

「あ~…気持ちはわかるが、夜会にハリセンそれはいかんぞ?」
「そうねぇ……鉄線を張った扇子にしたら?マリーローズ」
「まあ伯爵夫人!それなら私にプレゼントさせてくださいな!親子でお揃いはどうかしら?ねぇあなた、鉄線とピアノ線だったらどちらの方が軽くて強いかしら?」
「お前……扇子は武器じゃないぞ」
盛り上がる周囲をよそに、
「私は出ませんよ?」
と発したのはマリーローズだ。

「「「「えっ……」」」」
と異口同音に発した両親たちと違い、
「そんな事許されるはずがないだろう!」
と叫んだのは似非騎士だ。

いきなりデカい声を出すな、五月蝿い。
「何故です?」
「王家からの招待をすっぽかすなんて不敬にも程がある!」
「私に対して不敬なのは構わないんですか?」
現状、不敬かつ不快な真似しかされてないんだけど?
「っ、それはそn⚪︎△#…」
何を言っているのかわからない。ついに人の言語忘れた?

「せっかくだからこの招待状にあの薔薇を添えて返そうかしら……?」
「ご英断ですお嬢様」
と拍手をしたハンナだが、
「ご英断には違いないですが、些かやり過ぎではないかと……」
と顔を引き攣らせたのはファナ、
「この招待状は国王陛下からですし……」
と続けたのはカールだ。
「招待状をつっ返すのは不味いですが、普通に欠席する分には構わないのでは?お嬢様は傷心中でそれどころではないと。伯爵様はどうお考えですか?」
「うむ……_私もルイスの言うことに賛成だ」
「そうなんですか?」
てっきり“一応出席だけはしろ“とか言われると思ったのに。
「そんな……」
と悲壮な顔を浮かべる似非騎士に寄り添う者は誰もいない。

いやいや、当たり前じゃん。
結婚式ブッチした奴が何寝ぼけたことを言ってんの?
しかも理由が不敬だのなんだのって_…、
「俺は、君の夜会ドレス姿が見たい」
「__は?」
「その_…、結婚式では短い間しか見られなかったし……君は離婚したいと言うし、仕事中もどうしていいかわからなくて……そうしたら俺が生気がないと王女殿下が心配されて、君と上手くいっていない事を話した。それを王女殿下が国王陛下に話したのだと思う。だから国王陛下が手を回されて夜会を……」

筒抜けか、この家の内部情報。セキュリティ大丈夫?
つーか、そんな理由で開くなよ夜会。
そう思った私の耳に、新たな火種が放り込まれた。

「奥様に贈り物が届いております」
「__誰から?」
この似非騎士からならこんな報告なしに部屋に届けられるはずだし、伯爵たちもこんなまわりくどい真似はしないだろう。
「その_…王女殿下からです、“是非夜会で身につけてほしい“とのメッセージが添えられております」
「……(頼んでもいないのに)私のシャペロンにでもなったつもりかしら」
「マリーローズ、それは無れ、ぶっ!」
侯爵夫人の扇子が唸る。

ひょっとしてあれ武器仕様なんだろうか。

「あなたは黙らっしゃい!」
「というかロード伯はしゃがんでください」
「っ?」
疑問符を浮べつつ先ほどと同じ体勢になった似非騎士の頭上に、今度は大きめの花瓶を載せる。もちろん花も活けてある。
花瓶それを割ったりバランスを崩して溢さないよう、しっかり守っててくださいね?大事なものですから。よろしくお願いします」
と言い置いて、
「開けてちょうだい」
花瓶の台座アベルに背を向けて中身の検分に移った。

ハンナとファナが危険物がないか注意して開けた中には、ドレスが入っていた。
色は青のグラデーションになっていて、間違いなくアベルの色を意識している。
同時に箱の中を覗いた侯爵夫人とグレンダも息を呑む。
「どういうつもりなのかしら、王女殿下は?」
「いくらまだデビュタント前の子供とはいえ、おイタがすぎるわねぇ」
不快そうに侯爵夫人の扇子がピシリと音を鳴らす。
「何も考えてないだけかもしれませんが、わかりやすい悪意が見えない分不気味ですね。もしかして宣戦布告でしょうか?」



__ならば、受けて立ちましょう。この男が賞品なら、欲しくないけど。


*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*



避けてても向かってくるモノハ、根本から排除しないと後々面倒ダカラネ( ̄▽ ̄;)!!

引き続きの感想祭りありがとうございます!
清き一票くださった方、ありがとうございます❣️
ヤバい、更新がどんどん遅くなってる……そのうちてっぺん(日付変更線)を越えてしまいそう(^^;;
ギリギリなため推敲も甘いです、ご容赦をm(_ _)m

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結済み】全部、兄です。不貞を疑われたけど…。

BBやっこ
恋愛
婚約破棄 そんなのほんとにやる馬鹿が婚約者とは。 王子様まで参加して 兄まで巻き込んで。 答えは明確です。 ※【完結済み】

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

【完結】「図書館に居ましたので」で済む話でしょうに。婚約者様?

BBやっこ
恋愛
婚約者が煩いのはいつもの事ですが、場所と場合を選んでいただきたいものです。 婚約破棄の話が当事者同士で終わるわけがないし こんな麗かなお茶会で、他の女を連れて言う事じゃないでしょうに。 この場所で貴方達の味方はいるのかしら? 【2023/7/31 24h. 9,201 pt (188位)】達成

【完結】要らない私は消えます

かずきりり
恋愛
虐げてくる義母、義妹 会わない父と兄 浮気ばかりの婚約者 どうして私なの? どうして どうして どうして 妃教育が進むにつれ、自分に詰め込まれる情報の重要性。 もう戻れないのだと知る。 ……ならば…… ◇ HOT&人気ランキング一位 ありがとうございます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結済み】当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。

BBやっこ
恋愛
貴族の家に生まれたからには、その責務を全うしなければならない。そう子供心に誓ったセリュートは、実の父が戻らない中“当主代理”として仕事をしていた。6歳にやれることなど微々たるものだったが、会ったことのない実父より、家の者を護りたいという気持ちで仕事に臨む。せめて、当主が戻るまで。 そうして何年も誤魔化して過ごしたが、自分の成長に変化をせざるおえなくなっていく。 1〜5 赤子から幼少 6、7 成長し、貴族の義務としての結婚を意識。 8〜10 貴族の子息として認識され 11〜14 真実がバレるのは時間の問題。 あとがき 強かに成長し、セリとしての生活を望むも セリュートであることも捨てられない。 当主不在のままでは、家は断絶。使用人たちもバラバラになる。 当主を探して欲しいと『竜の翼』に依頼を出したいが? 穏やかで、好意を向けられる冒険者たちとの生活。 セリとして生きられる道はあるのか? <注意>幼い頃から話が始まるので、10歳ごろまで愛情を求めない感じで。 恋愛要素は11〜の登場人物からの予定です。 「もう貴族の子息としていらないみたいだ」疲れ切った子供が、ある冒険者と出会うまで。 ※『番と言われましたが…』のセリュート、ロード他『竜の翼』が後半で出てきます。 平行世界として読んでいただけると良いかもと思い、不遇なセリュートの成長を書いていきます。 『[R18] オレ達と番の女は、巣篭もりで愛欲に溺れる。』短編完結済み 『番と言われましたが、冒険者として精進してます。』 完結済み 『[R18]運命の相手とベッドの上で体を重ねる』 完結 『俺たちと番の女のハネムーン[R18]』 ぼちぼち投稿中

【完結・全7話】妹などおりません。理由はご説明が必要ですか?お分かりいただけますでしょうか?

BBやっこ
恋愛
ナラライア・グスファースには、妹がいた。その存在を全否定したくなり、血の繋がりがある事が残念至極と思うくらいには嫌いになった。あの子が小さい頃は良かった。お腹が空けば泣き、おむつを変えて欲しければむずがる。あれが赤ん坊だ。その時まで可愛い子だった。 成長してからというもの。いつからあんな意味不明な人間、いやもう同じ令嬢というジャンルに入れたくない。男を誘い、お金をぶんどり。貢がせて人に罪を着せる。それがバレてもあの笑顔。もう妹というものじゃない。私の婚約者にも毒牙が…!

処理中です...