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21 招待状か果たし状か、それが問題だ
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王家の使者が持って来たものは、夜会への招待状だった。
曰く、『台無しにしてしまった結婚式のお詫びに是非二人で出席してお披露目の場としてほしい』という大変勿体無いお言葉付きで。
「まあ……」
とフォレストグリーンの瞳を見開いたマリーローズは決して感動したわけではない、あまりの図々しさにドン引きしたのだ。
「結婚式を台無しにしたって自覚はあるのね」
と続けたマリーローズに周囲が続く。
「自覚はあるのに常識はないんですね」
とハンナが言い、
「確かに非常識だな」
「さすがに無神経すぎませんか?」
「これがこちらの王家の常識なんですか?興味深いですね」
護衛騎士たちが口々に言い、セントレイ伯爵はじめ親たちは苦い顔になる。
この、人の結婚式を台無しにしておいて『フォローしてやったぞ』感。
デビュタント前の王女はまだ主催どころか出席も出来ないからこの招待状は国王からだが、
「国王陛下も、脳にお花が咲く病なのかしら?」
似非騎士や王女と同じ、ハリセンで引っ叩いてやりたい感じの??
「あ~…気持ちはわかるが、夜会にハリセンはいかんぞ?」
「そうねぇ……鉄線を張った扇子にしたら?マリーローズ」
「まあ伯爵夫人!それなら私にプレゼントさせてくださいな!親子でお揃いはどうかしら?ねぇあなた、鉄線とピアノ線だったらどちらの方が軽くて強いかしら?」
「お前……扇子は武器じゃないぞ」
盛り上がる周囲をよそに、
「私は出ませんよ?」
と発したのはマリーローズだ。
「「「「えっ……」」」」
と異口同音に発した両親たちと違い、
「そんな事許されるはずがないだろう!」
と叫んだのは似非騎士だ。
いきなりデカい声を出すな、五月蝿い。
「何故です?」
「王家からの招待をすっぽかすなんて不敬にも程がある!」
「私に対して不敬なのは構わないんですか?」
現状、不敬かつ不快な真似しかされてないんだけど?
「っ、それはそn⚪︎△#…」
何を言っているのかわからない。ついに人の言語忘れた?
「せっかくだからこの招待状にあの薔薇を添えて返そうかしら……?」
「ご英断ですお嬢様」
と拍手をしたハンナだが、
「ご英断には違いないですが、些かやり過ぎではないかと……」
と顔を引き攣らせたのはファナ、
「この招待状は国王陛下からですし……」
と続けたのはカールだ。
「招待状をつっ返すのは不味いですが、普通に欠席する分には構わないのでは?お嬢様は傷心中でそれどころではないと。伯爵様はどうお考えですか?」
「うむ……_私もルイスの言うことに賛成だ」
「そうなんですか?」
てっきり“一応出席だけはしろ“とか言われると思ったのに。
「そんな……」
と悲壮な顔を浮かべる似非騎士に寄り添う者は誰もいない。
いやいや、当たり前じゃん。
結婚式ブッチした奴が何寝ぼけたことを言ってんの?
しかも理由が不敬だのなんだのって_…、
「俺は、君の夜会姿が見たい」
「__は?」
「その_…、結婚式では短い間しか見られなかったし……君は離婚したいと言うし、仕事中もどうしていいかわからなくて……そうしたら俺が生気がないと王女殿下が心配されて、君と上手くいっていない事を話した。それを王女殿下が国王陛下に話したのだと思う。だから国王陛下が手を回されて夜会を……」
筒抜けか、この家の内部情報。セキュリティ大丈夫?
つーか、そんな理由で開くなよ夜会。
そう思った私の耳に、新たな火種が放り込まれた。
「奥様に贈り物が届いております」
「__誰から?」
この似非騎士からならこんな報告なしに部屋に届けられるはずだし、伯爵たちもこんなまわりくどい真似はしないだろう。
「その_…王女殿下からです、“是非夜会で身につけてほしい“とのメッセージが添えられております」
「……(頼んでもいないのに)私のシャペロンにでもなったつもりかしら」
「マリーローズ、それは無れ、ぶっ!」
侯爵夫人の扇子が唸る。
ひょっとしてあれ武器仕様なんだろうか。
「あなたは黙らっしゃい!」
「というかロード伯はしゃがんでください」
「っ?」
疑問符を浮べつつ先ほどと同じ体勢になった似非騎士の頭上に、今度は大きめの花瓶を載せる。もちろん花も活けてある。
「花瓶を割ったりバランスを崩して溢さないよう、しっかり守っててくださいね?大事なものですから。よろしくお願いします」
と言い置いて、
「開けてちょうだい」
と花瓶の台座に背を向けて中身の検分に移った。
ハンナとファナが危険物がないか注意して開けた中には、ドレスが入っていた。
色は青のグラデーションになっていて、間違いなくアベルの色を意識している。
同時に箱の中を覗いた侯爵夫人とグレンダも息を呑む。
「どういうつもりなのかしら、王女殿下は?」
「いくらまだデビュタント前の子供とはいえ、おイタがすぎるわねぇ」
不快そうに侯爵夫人の扇子がピシリと音を鳴らす。
「何も考えてないだけかもしれませんが、わかりやすい悪意が見えない分不気味ですね。もしかして宣戦布告でしょうか?」
__ならば、受けて立ちましょう。この男が賞品なら、欲しくないけど。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
避けてても向かってくるモノハ、根本から排除しないと後々面倒ダカラネ( ̄▽ ̄;)!!
引き続きの感想祭りありがとうございます!
清き一票くださった方、ありがとうございます❣️
ヤバい、更新がどんどん遅くなってる……そのうちてっぺん(日付変更線)を越えてしまいそう(^^;;
ギリギリなため推敲も甘いです、ご容赦をm(_ _)m
曰く、『台無しにしてしまった結婚式のお詫びに是非二人で出席してお披露目の場としてほしい』という大変勿体無いお言葉付きで。
「まあ……」
とフォレストグリーンの瞳を見開いたマリーローズは決して感動したわけではない、あまりの図々しさにドン引きしたのだ。
「結婚式を台無しにしたって自覚はあるのね」
と続けたマリーローズに周囲が続く。
「自覚はあるのに常識はないんですね」
とハンナが言い、
「確かに非常識だな」
「さすがに無神経すぎませんか?」
「これがこちらの王家の常識なんですか?興味深いですね」
護衛騎士たちが口々に言い、セントレイ伯爵はじめ親たちは苦い顔になる。
この、人の結婚式を台無しにしておいて『フォローしてやったぞ』感。
デビュタント前の王女はまだ主催どころか出席も出来ないからこの招待状は国王からだが、
「国王陛下も、脳にお花が咲く病なのかしら?」
似非騎士や王女と同じ、ハリセンで引っ叩いてやりたい感じの??
「あ~…気持ちはわかるが、夜会にハリセンはいかんぞ?」
「そうねぇ……鉄線を張った扇子にしたら?マリーローズ」
「まあ伯爵夫人!それなら私にプレゼントさせてくださいな!親子でお揃いはどうかしら?ねぇあなた、鉄線とピアノ線だったらどちらの方が軽くて強いかしら?」
「お前……扇子は武器じゃないぞ」
盛り上がる周囲をよそに、
「私は出ませんよ?」
と発したのはマリーローズだ。
「「「「えっ……」」」」
と異口同音に発した両親たちと違い、
「そんな事許されるはずがないだろう!」
と叫んだのは似非騎士だ。
いきなりデカい声を出すな、五月蝿い。
「何故です?」
「王家からの招待をすっぽかすなんて不敬にも程がある!」
「私に対して不敬なのは構わないんですか?」
現状、不敬かつ不快な真似しかされてないんだけど?
「っ、それはそn⚪︎△#…」
何を言っているのかわからない。ついに人の言語忘れた?
「せっかくだからこの招待状にあの薔薇を添えて返そうかしら……?」
「ご英断ですお嬢様」
と拍手をしたハンナだが、
「ご英断には違いないですが、些かやり過ぎではないかと……」
と顔を引き攣らせたのはファナ、
「この招待状は国王陛下からですし……」
と続けたのはカールだ。
「招待状をつっ返すのは不味いですが、普通に欠席する分には構わないのでは?お嬢様は傷心中でそれどころではないと。伯爵様はどうお考えですか?」
「うむ……_私もルイスの言うことに賛成だ」
「そうなんですか?」
てっきり“一応出席だけはしろ“とか言われると思ったのに。
「そんな……」
と悲壮な顔を浮かべる似非騎士に寄り添う者は誰もいない。
いやいや、当たり前じゃん。
結婚式ブッチした奴が何寝ぼけたことを言ってんの?
しかも理由が不敬だのなんだのって_…、
「俺は、君の夜会姿が見たい」
「__は?」
「その_…、結婚式では短い間しか見られなかったし……君は離婚したいと言うし、仕事中もどうしていいかわからなくて……そうしたら俺が生気がないと王女殿下が心配されて、君と上手くいっていない事を話した。それを王女殿下が国王陛下に話したのだと思う。だから国王陛下が手を回されて夜会を……」
筒抜けか、この家の内部情報。セキュリティ大丈夫?
つーか、そんな理由で開くなよ夜会。
そう思った私の耳に、新たな火種が放り込まれた。
「奥様に贈り物が届いております」
「__誰から?」
この似非騎士からならこんな報告なしに部屋に届けられるはずだし、伯爵たちもこんなまわりくどい真似はしないだろう。
「その_…王女殿下からです、“是非夜会で身につけてほしい“とのメッセージが添えられております」
「……(頼んでもいないのに)私のシャペロンにでもなったつもりかしら」
「マリーローズ、それは無れ、ぶっ!」
侯爵夫人の扇子が唸る。
ひょっとしてあれ武器仕様なんだろうか。
「あなたは黙らっしゃい!」
「というかロード伯はしゃがんでください」
「っ?」
疑問符を浮べつつ先ほどと同じ体勢になった似非騎士の頭上に、今度は大きめの花瓶を載せる。もちろん花も活けてある。
「花瓶を割ったりバランスを崩して溢さないよう、しっかり守っててくださいね?大事なものですから。よろしくお願いします」
と言い置いて、
「開けてちょうだい」
と花瓶の台座に背を向けて中身の検分に移った。
ハンナとファナが危険物がないか注意して開けた中には、ドレスが入っていた。
色は青のグラデーションになっていて、間違いなくアベルの色を意識している。
同時に箱の中を覗いた侯爵夫人とグレンダも息を呑む。
「どういうつもりなのかしら、王女殿下は?」
「いくらまだデビュタント前の子供とはいえ、おイタがすぎるわねぇ」
不快そうに侯爵夫人の扇子がピシリと音を鳴らす。
「何も考えてないだけかもしれませんが、わかりやすい悪意が見えない分不気味ですね。もしかして宣戦布告でしょうか?」
__ならば、受けて立ちましょう。この男が賞品なら、欲しくないけど。
*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*
避けてても向かってくるモノハ、根本から排除しないと後々面倒ダカラネ( ̄▽ ̄;)!!
引き続きの感想祭りありがとうございます!
清き一票くださった方、ありがとうございます❣️
ヤバい、更新がどんどん遅くなってる……そのうちてっぺん(日付変更線)を越えてしまいそう(^^;;
ギリギリなため推敲も甘いです、ご容赦をm(_ _)m
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