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解けた封印
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寝台からベビーベッドまで美しく整えられた室内に入ると、フェアルドが「フィー。無事で良かった。我が子の「__貴方にこの子に触れる資格はありません!!」っ、」掛けてくる声をフィオナは凄まじい気迫で遮った。
フィオナに親になるという実感はなかったが、この子を手に抱いた途端、「守らなければいけない命だ」ということだけは理解していた。
そして、目の前の男を決して信用はできなかった。
「妃殿下っ!」
伸ばされた手を思いきり振り払ったフィオナに知らない女官が声をあげるが、
「良い。皆さがれ」
フェアルドの合図にここまでぞろぞろ付いて来ていた御付き達が退室した。
フェアルドと側近の騎士ディオンだけを残して。
「母子ともども暗殺されても構わないと思っていたくせに!たまたま無事に生まれたからといって何を白々しい!」
「違う!聞いてくれ!ナーリャの王女のことは誤算だった!あの女がまさかあそこまで大規模な暗殺団を動かせるツテがあるとは思わなかったんだ!だがあの女はトーリアの王女と手を組んだ、敵対してるはずのあの二人が組むとまでは俺は思っていなくて__悪かった、君と君のお腹の子を危険に晒して」
「__危険に晒す為にわざわざ後宮から出して狙いやすくしたんでしょう?」
「違う!神に誓ってそんなことをするものか!」
「陛下の信じる神など、私は信じておりません」
「……っ、」
フェアルドは唇を噛む。
確かに、フィオナは狙われていた。
皇帝の唯一の寵姫で宰相の愛娘、後宮にいる側妃の中でも世継ぎを産む可能性が一番高く、年も若い。
他の側妃にも、自分の係累を妃に送りこみたい輩からも、最も障害となる存在と言っていい。
だからこそ早く手元に囲いこんでしまいたかった。
皇帝の箱庭の中で、真綿で包むように過ごさせたかった。
自分が手順を間違ったせいで、フィオナは全く手を取らなくなってしまったが、暗殺や嫌がらせの類は徹底的に排除しフィオナまでは届かないはずだった。
セレーネ王女が私室まで入り込んだのは金をばら撒いて見逃させる隙を作ったのと、そう仕向けた者がいた。
セレーネはその行いをスパイ行為と見做し、ソレイユは暗殺団との密書をもとに断罪し国元へ追放した。
こんな王女を送って来た国への追及は容赦しないつもりだ。
国へ帰したのは温情ではない。
フィオナの周囲に血生臭いことを持ち込まないためだ。
ソレイユ王女は見た目によらず狡猾な女で、フィオナにも何らアクションを起こすことがなかったのでフェアルドも油断していた。
あそこまで大規模な暗殺団を組んだことを知って心底脅えた__フィオナをまた失ってしまう恐怖に。
だが、直接狙われたフィオナからすれば経緯など関係ない。
フィオナを里帰りさせる前にソレイユ王女の尻尾を掴み、そんな暴挙を起こす前に潰してしまえば良かったのだし、セレーネ王女も__あれはちょっと事情が違うが。
自分にこの子を抱く資格があるのかと言われればないのかもしれない。
だが、フェアルドは無事にフィオナが出産して戻ってきてくれたことが死ぬほど嬉しかった。
「君の怒りは尤もだ。俺が悪い。君が俺を信用できなくてその子を渡したくないと言うならそれで構わない。だがひと目でいい、顔を見せてもらえないだろうか?」
「__……」
「フィー……」
切なげに潤んだ瞳を揺らせたフェアルドが再度伸ばす手を目にした途端、
ぱきん、とフィオナの瞳の奥で何かが割れた。
まるで今まで見ていた世界が何か膜越しででもあったかのように、何かが剥がれ落ち、目の前にいる人と重なった。
それが誰かを認識する前に、フィオナの口は答えを紡いでいた。
「う、そ……あなた__王太子、殿下……?」
「「!」」
フィオナの唇から紡がれた言葉に、フェアルドとこの部屋にいたもう一人、ディオンは驚愕と共に顔色を失う。
(まさか、このタイミングで___、)
「思い、出してしまったのか……?」
(いけない!)
「妃殿下っ!」
「ひっ……!」
心配そうなフェアルドの声と駆け寄ろうとするディオンに対し、フィオナは顔色を真っ青にして後ずさる。
今にも倒れそうなフィオナを支えたいのに、恐怖に駆られているフィオナに近付くことが出来ないフェアルドは歯噛みする。
(なんて、ことだ……)
焦燥に駆られて動けないフェアルドをよそに動いたのはディオンだった。
「落ち着いてください妃殿下っ!我々が貴女を傷つける事はございません!」
そう目の前で跪くディオンに、
「あなた、エディアル……?」
(そんな、まさか__)
フィオナは信じられないものを見るような瞳を向ける。
その視線に耐え切れず目を逸らしそうになるディオンは歯を食いしばって踏ん張り、
「はい、私の前世の名は騎士エディアル。前世の貴女を傷つけ、死に追いやった一人です」と深く頭を下げた。
「どう、して__?」
フィオナは恐怖でまともな言葉も紡げない。
どうして前世で散々自分を苦しめた二人が今揃って目の前にいるのか?
ここは地獄か?
前世で自ら命を絶った罰でこの地獄に落とされたのだろうか?
混乱するフィオナを前に、騎士ディオンはすらりと己の剣を引き抜き、自身の首にあてた。
「貴女がもし今でも私を許せない、死ねと仰るならば今すぐにでもこの首を掻き切って差し上げましょう。ですが陛下はこの国にまだ必要なお方「よせ、ディオン」、」
フェアルドがディオンの言葉を遮り、割って入った。
「君が望むなら俺の命も国の行く末も気にしなくていい、君の望む通りに。……だができればその子だけは生かしてやって欲しい」
「っ!」
「その子に罪はない。もちろん君にも」
「勝手な、ことを……!」
「本当にな。俺はいつも勝手に事を運んで君を傷つけてばかりだ……君が望むなら終わりにしよう。この部屋を血で汚すわけにはいかないから、違う場所で__絞首刑か、斬殺か、それとも森深い獣の通り道に投げ捨てようか……」
「はっ……?」
熱に浮かされたように言うフェアルドに対し、フィオナの方がやや混乱から立ち直り、言われている言葉の異様さに気付く。
「僕たちの処刑の仕方だよ、君にはその権利があるから__「そこまでですわ皇帝陛下」」
どこから出てきたのか、三人しかいないはずの部屋の奥から涼やかな声が割って入った。
見覚えのあるうす茶色のふわふわした髪と瞳。
セレーネの侍女として付いていた女性だ。
セレーネ王女一行は国元に返したのではなかったか?
「妃殿下は混乱しておいでです。それ以上近寄ってはなりません、ディオン、貴方もです」
そう言いながら侍女はディオンとフィオナの間に立ち塞がる。
驚いたことに言われたフェアルドとディオンは速やかにフィオナと距離を取った。
それを確認してからフィオナに向き直った侍女は、
「初めまして、フィオナ様。先日トーリアのセレーネ王女付き改めフィオナ様付きの筆頭侍女として着任致しました、ダイアナと申します」
「……は……?」
「私はフィオナ様の為ならば皇帝陛下並びに騎士ディオンを煮るなり殺すなりして良いとの主命を賜っております。ご希望があったらいつでもこのダイアナにお申し付けくださいませ?そうそう__私の前世名はネリーニと申します」
「!」
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
*わかってはいたのですがここから先は前世の話を入れないとどうしようもない所まで来てしまいました。
書き始めてはいるのですが、R18度が高めな為こちらとは別に作品ページを作ります。フェアルド擁護派は読まない方が良いかも?な内容となります。
R18は急に削除される事もあるそうなのでその用心と言う意味でも分けることに致しました。
タイトルは「心の鍵は壊せない」となる予定です。こちらはこの後ダイアナ視点を数話投稿後「心壊」の連載を始め、そちらを経てまたこちらの続きを始める予定です。
こちらの「心開」ともども「心壊」もよろしくお願いしますm(__)m
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「__危険に晒す為にわざわざ後宮から出して狙いやすくしたんでしょう?」
「違う!神に誓ってそんなことをするものか!」
「陛下の信じる神など、私は信じておりません」
「……っ、」
フェアルドは唇を噛む。
確かに、フィオナは狙われていた。
皇帝の唯一の寵姫で宰相の愛娘、後宮にいる側妃の中でも世継ぎを産む可能性が一番高く、年も若い。
他の側妃にも、自分の係累を妃に送りこみたい輩からも、最も障害となる存在と言っていい。
だからこそ早く手元に囲いこんでしまいたかった。
皇帝の箱庭の中で、真綿で包むように過ごさせたかった。
自分が手順を間違ったせいで、フィオナは全く手を取らなくなってしまったが、暗殺や嫌がらせの類は徹底的に排除しフィオナまでは届かないはずだった。
セレーネ王女が私室まで入り込んだのは金をばら撒いて見逃させる隙を作ったのと、そう仕向けた者がいた。
セレーネはその行いをスパイ行為と見做し、ソレイユは暗殺団との密書をもとに断罪し国元へ追放した。
こんな王女を送って来た国への追及は容赦しないつもりだ。
国へ帰したのは温情ではない。
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ソレイユ王女は見た目によらず狡猾な女で、フィオナにも何らアクションを起こすことがなかったのでフェアルドも油断していた。
あそこまで大規模な暗殺団を組んだことを知って心底脅えた__フィオナをまた失ってしまう恐怖に。
だが、直接狙われたフィオナからすれば経緯など関係ない。
フィオナを里帰りさせる前にソレイユ王女の尻尾を掴み、そんな暴挙を起こす前に潰してしまえば良かったのだし、セレーネ王女も__あれはちょっと事情が違うが。
自分にこの子を抱く資格があるのかと言われればないのかもしれない。
だが、フェアルドは無事にフィオナが出産して戻ってきてくれたことが死ぬほど嬉しかった。
「君の怒りは尤もだ。俺が悪い。君が俺を信用できなくてその子を渡したくないと言うならそれで構わない。だがひと目でいい、顔を見せてもらえないだろうか?」
「__……」
「フィー……」
切なげに潤んだ瞳を揺らせたフェアルドが再度伸ばす手を目にした途端、
ぱきん、とフィオナの瞳の奥で何かが割れた。
まるで今まで見ていた世界が何か膜越しででもあったかのように、何かが剥がれ落ち、目の前にいる人と重なった。
それが誰かを認識する前に、フィオナの口は答えを紡いでいた。
「う、そ……あなた__王太子、殿下……?」
「「!」」
フィオナの唇から紡がれた言葉に、フェアルドとこの部屋にいたもう一人、ディオンは驚愕と共に顔色を失う。
(まさか、このタイミングで___、)
「思い、出してしまったのか……?」
(いけない!)
「妃殿下っ!」
「ひっ……!」
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今にも倒れそうなフィオナを支えたいのに、恐怖に駆られているフィオナに近付くことが出来ないフェアルドは歯噛みする。
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「落ち着いてください妃殿下っ!我々が貴女を傷つける事はございません!」
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「あなた、エディアル……?」
(そんな、まさか__)
フィオナは信じられないものを見るような瞳を向ける。
その視線に耐え切れず目を逸らしそうになるディオンは歯を食いしばって踏ん張り、
「はい、私の前世の名は騎士エディアル。前世の貴女を傷つけ、死に追いやった一人です」と深く頭を下げた。
「どう、して__?」
フィオナは恐怖でまともな言葉も紡げない。
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前世で自ら命を絶った罰でこの地獄に落とされたのだろうか?
混乱するフィオナを前に、騎士ディオンはすらりと己の剣を引き抜き、自身の首にあてた。
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フェアルドがディオンの言葉を遮り、割って入った。
「君が望むなら俺の命も国の行く末も気にしなくていい、君の望む通りに。……だができればその子だけは生かしてやって欲しい」
「っ!」
「その子に罪はない。もちろん君にも」
「勝手な、ことを……!」
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そう言いながら侍女はディオンとフィオナの間に立ち塞がる。
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「初めまして、フィオナ様。先日トーリアのセレーネ王女付き改めフィオナ様付きの筆頭侍女として着任致しました、ダイアナと申します」
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「!」
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