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「ただの人間だよ、君と同じ。レイディ・フィオナ、僕と友達になってくれませんか?」
「?いいよ」
金色の綺麗な人がなんだか必死に見えたので、フィオナは訳がわからないまま了承した。
そして、その人は以降、週に一度は我が家を訪れるようになった。
だが、友達といっても五歳と十六歳が一緒に遊ぶのは正直無理である。
なので、必然的にフェアルドがおままごとに付き合ったり、フィオナに絵本を読みきかせたりと__要するに子守りである。
「皇弟殿下にそんなことさせていいのか」
と周囲はもちろん止めたがフェアルド本人が、
「僕が彼女といたいんだ」
と譲らないので諦め__基、それはいつしか生温い視線に変わっていった。
フェアルドがナスタチアム侯爵家に足繁く通って二ヶ月が過ぎた頃、
「フェアルドさまはおうじさまなの?」
自分と大して変わらない大きさのぬいぐるみを抱えたフィオナが訊ねてきた。
「誰かに何か言われたのかい?」
「フェアルド殿下はとっても忙しいお方だから、あまり我儘を言ってはいけません、て」
「確かに僕にも仕事はあるから忙しいけど、僕がフィーに会いたくて来てるんだから気にする必要はないし、フィーの我儘ならむしろ僕が叶えたい。それに皇子とはちょっと違うかな?僕は皇帝の弟だけど、臣下に降っているから皇子じゃなくて皇弟。次の皇子って言ったら兄上の子だけど、フィオナは皇子さまがいいの?」
「ううん、おうじさまはイヤ」
幼いフィオナが眉を顰めて言った言葉に、
「イヤなのかい?」
フェアルドは思わず聞き返した。
もう少し成長した令嬢ならともかく、この年頃の子供なら“王子さま“や“お姫さま“に憧れを抱くのが当然だと思っていたからだ。
「うん。だっておうさまやおうじさまは“こうきゅう“っていうのを持ってそこにいっぱいお妃を迎えるんでしょ?フィーはそういうのイヤだ」
「あゝ、確かにね。一夫多妻制を認めない国が増えているのに、どこも国王だけは例外とされていることが多いね。この国もそうだけど」
「“王さまのちすじはとだえさせないように守らないといけない“っていうけど……」
「フィーはそれが嫌なんだね?それなら心配いらないよ、僕はただの皇弟で一夫多妻の権利も持つのは我が国では皇帝陛下だけだ。僕も妻はただ一人しか迎えることはできない」
「皇帝のおとうとなのに?」
「弟だからだよ。次の皇帝は兄上の息子で僕や僕の子供たちは臣下にすぎないからね、奥さんは一人いれば良いんだ」
「そうなんだ……」
「そうだよ。だから何も心配しないで」
そう微笑むフェアルドに「お嬢様はそんな心配はしていないと思います」と周囲にいた使用人一堂は心中で総ツッコミを入れていたが、態度に出すことはなかった___出来た使用人たちである。
そしてそれから間もなくして、フェアルドはナスタチアム侯爵にフィオナとの婚姻を願いでた。
フェアルドには婚約者はおろか親しくしている女性は乳母くらい、と言われるほど周囲に女性の影がなく、大きな声ではいえない噂がまことしやかに囁かれているほどだったので、宰相として伺候してフェアルドの為人をよく知っているナスタチアム侯爵でさえ、
「で殿下はまさか……」
ロリコンだったのか?
という台詞を呑み込んだ侯爵に、
「ナスタチアム侯爵、私は小児性愛者ではない。ついでに男色家でもなければ両刀でもない。ただ今まで理想の女性に出会えなかっただけなのだ」
未来の義父に誤解されては敵わないので、フェアルドはきっぱりと告げた。
「それが我が娘だというのですか?光栄なことですが娘はまだ五歳ですよ?」
「もうすぐ六歳になるだろう」
「そりゃそうですが……大して変わりませんよ、フェアルド殿下は十六。いつ奥方を迎えてもおかしくない年齢でいらっしゃる。娘が殿下に相応しい年齢になるまでであと十年はかかります」
「それは承知している。もちろん彼女が年頃になるまでいくらでも待つつもりだ」
「しかし、」
フェアルドは皇弟であり公爵だ。
彼に嫁がせたい、あるいは嫁ぎたい貴族は大勢いる。
その中に五歳の娘を放り込んで良いものか……いや、よろしくない。
ナスタチアム侯爵家は皇家に忠誠を捧げていたが、現当主であるマティアス・ナスタチアムは同時に家族への愛情も深い人物だった。
宰相として忙しく仕えながらも家族との時間も大事にし、愛人も作らず妻ひと筋の堅物としても有名だ。
そしてそのマティアスはひとり娘のフィオナを溺愛していた。
その掌中の珠のような娘を万魔殿に放るような真似は出来るはずがなかった。
マティアスが口を開く前に察したフェアルドが、
「マティアス殿の心配は尤もだ。私の妻の座を狙っている輩は多い。私と繋がることで帝位に近づきたい奴らもな。だが私は帝位に興味はないし、早く兄上と義姉上が子供を授かって継承権を放棄出来たらいいと思っている。そして皇弟として兄を、引いては甥をサポートしていく覚悟は出来ている、この国の皇族として生まれた者として。だが、添い遂げる女性だけは自分の心に従って決めたいとずっと思っていたのだ」
確かに、目の前の青年は降るような縁談を全て袖にし、言い寄ってくる数多の女性と軽く遊ぶようなこともなく、政務に没頭するくせにその目に野心は見えず、誠実な人間であることはマティアスも長い付き合いで知っている。
覇気がないというわけではないが、恋人も必要以上に親しい友人も作らず、何を楽しみに生きているのだろうと(不敬ではあるが)不思議に思ったこともある。
それがまさか、理想の乙女を探していたとは。
(殿下も意外とロマンチストなのだな)
と納得し、それが本当ならばエールのひとつも送りたいところだ。
___対象が、五歳の自分の娘でなかったらだが。
「貴殿の心配は尤もだ。だが、私はひと目で分かったのだ、彼女が私が探し求めていた相手だと。本来ならご令嬢が年頃になってから申し込むべきなのは理解している。だが、まだ五歳の時分であれだけ美しいのだ、高位貴族の令息に目をつけられるのもすぐだろう。同じ年頃の子供同士を見合わせる機会もどんどん増えていく」
「それは、まあ……」
この国の貴族は七歳の誕生日にお披露目を行い、それから茶会などで交流していくのが普通だ。
それまで子供たちは邸から殆ど出ることなく育てられる。
メイドと護衛を付けて散歩や買い物くらいは行かせる家もあるが全く出さない家もあるし、そんなたまたま出た先で出会った相手と友達になったり、ましてや見初められる事などまずない。
まだ結婚の意味も知らず、年の近い友人のひとりもつくらないうちから将来を決めてしまうのは__うぅむ、と唸るナスタチアム侯爵に、
「侯爵の心配はわかる。私がご令嬢が年頃になるまで待てなかったり、ましてや私と婚約したことで別の家門からあらぬ攻撃をされたりすることを危惧しているのだろう?そんな心配は無用だ。ご令嬢にもこのナスタチアム侯爵家にも何人たりとも手は出させん。七歳のお披露目までは仮婚約で構わない。だが、七歳の誕生日には正式な婚約を交わし、お披露目の茶会では私が婚約者であることも同時に披露させてほしい。もちろん正式な婚約後も令嬢を縛りつけたりはしない」
「ですが、もしそれでフィオナに誰か特定の親しい相手が出来てしまったらどうするおつもりで?」
「もちろん、フィオナの意思に従う。彼女が年頃になって、他に好いた相手が出来て私と結婚するのが嫌だというなら婚約は解消しよう。婚約の際はこのことも書類に正式に記す。その場合慰謝料その他、彼女やナスタチアム侯爵家に一切の咎は発生しないことも明確に。もし私がその期間不誠実な行動をとろうものなら即時そちらから破棄も可能としておく、好きに監視してもらっていいぞ?」
侯爵の意地の悪い質問に、フェアルドは不敵に笑って答え、
「では、とりあえず娘に訊いてみましょう。五歳児とはいえ、本人のことですからな」
ナスタチアム侯爵は根負けして立ち上がった。
「?いいよ」
金色の綺麗な人がなんだか必死に見えたので、フィオナは訳がわからないまま了承した。
そして、その人は以降、週に一度は我が家を訪れるようになった。
だが、友達といっても五歳と十六歳が一緒に遊ぶのは正直無理である。
なので、必然的にフェアルドがおままごとに付き合ったり、フィオナに絵本を読みきかせたりと__要するに子守りである。
「皇弟殿下にそんなことさせていいのか」
と周囲はもちろん止めたがフェアルド本人が、
「僕が彼女といたいんだ」
と譲らないので諦め__基、それはいつしか生温い視線に変わっていった。
フェアルドがナスタチアム侯爵家に足繁く通って二ヶ月が過ぎた頃、
「フェアルドさまはおうじさまなの?」
自分と大して変わらない大きさのぬいぐるみを抱えたフィオナが訊ねてきた。
「誰かに何か言われたのかい?」
「フェアルド殿下はとっても忙しいお方だから、あまり我儘を言ってはいけません、て」
「確かに僕にも仕事はあるから忙しいけど、僕がフィーに会いたくて来てるんだから気にする必要はないし、フィーの我儘ならむしろ僕が叶えたい。それに皇子とはちょっと違うかな?僕は皇帝の弟だけど、臣下に降っているから皇子じゃなくて皇弟。次の皇子って言ったら兄上の子だけど、フィオナは皇子さまがいいの?」
「ううん、おうじさまはイヤ」
幼いフィオナが眉を顰めて言った言葉に、
「イヤなのかい?」
フェアルドは思わず聞き返した。
もう少し成長した令嬢ならともかく、この年頃の子供なら“王子さま“や“お姫さま“に憧れを抱くのが当然だと思っていたからだ。
「うん。だっておうさまやおうじさまは“こうきゅう“っていうのを持ってそこにいっぱいお妃を迎えるんでしょ?フィーはそういうのイヤだ」
「あゝ、確かにね。一夫多妻制を認めない国が増えているのに、どこも国王だけは例外とされていることが多いね。この国もそうだけど」
「“王さまのちすじはとだえさせないように守らないといけない“っていうけど……」
「フィーはそれが嫌なんだね?それなら心配いらないよ、僕はただの皇弟で一夫多妻の権利も持つのは我が国では皇帝陛下だけだ。僕も妻はただ一人しか迎えることはできない」
「皇帝のおとうとなのに?」
「弟だからだよ。次の皇帝は兄上の息子で僕や僕の子供たちは臣下にすぎないからね、奥さんは一人いれば良いんだ」
「そうなんだ……」
「そうだよ。だから何も心配しないで」
そう微笑むフェアルドに「お嬢様はそんな心配はしていないと思います」と周囲にいた使用人一堂は心中で総ツッコミを入れていたが、態度に出すことはなかった___出来た使用人たちである。
そしてそれから間もなくして、フェアルドはナスタチアム侯爵にフィオナとの婚姻を願いでた。
フェアルドには婚約者はおろか親しくしている女性は乳母くらい、と言われるほど周囲に女性の影がなく、大きな声ではいえない噂がまことしやかに囁かれているほどだったので、宰相として伺候してフェアルドの為人をよく知っているナスタチアム侯爵でさえ、
「で殿下はまさか……」
ロリコンだったのか?
という台詞を呑み込んだ侯爵に、
「ナスタチアム侯爵、私は小児性愛者ではない。ついでに男色家でもなければ両刀でもない。ただ今まで理想の女性に出会えなかっただけなのだ」
未来の義父に誤解されては敵わないので、フェアルドはきっぱりと告げた。
「それが我が娘だというのですか?光栄なことですが娘はまだ五歳ですよ?」
「もうすぐ六歳になるだろう」
「そりゃそうですが……大して変わりませんよ、フェアルド殿下は十六。いつ奥方を迎えてもおかしくない年齢でいらっしゃる。娘が殿下に相応しい年齢になるまでであと十年はかかります」
「それは承知している。もちろん彼女が年頃になるまでいくらでも待つつもりだ」
「しかし、」
フェアルドは皇弟であり公爵だ。
彼に嫁がせたい、あるいは嫁ぎたい貴族は大勢いる。
その中に五歳の娘を放り込んで良いものか……いや、よろしくない。
ナスタチアム侯爵家は皇家に忠誠を捧げていたが、現当主であるマティアス・ナスタチアムは同時に家族への愛情も深い人物だった。
宰相として忙しく仕えながらも家族との時間も大事にし、愛人も作らず妻ひと筋の堅物としても有名だ。
そしてそのマティアスはひとり娘のフィオナを溺愛していた。
その掌中の珠のような娘を万魔殿に放るような真似は出来るはずがなかった。
マティアスが口を開く前に察したフェアルドが、
「マティアス殿の心配は尤もだ。私の妻の座を狙っている輩は多い。私と繋がることで帝位に近づきたい奴らもな。だが私は帝位に興味はないし、早く兄上と義姉上が子供を授かって継承権を放棄出来たらいいと思っている。そして皇弟として兄を、引いては甥をサポートしていく覚悟は出来ている、この国の皇族として生まれた者として。だが、添い遂げる女性だけは自分の心に従って決めたいとずっと思っていたのだ」
確かに、目の前の青年は降るような縁談を全て袖にし、言い寄ってくる数多の女性と軽く遊ぶようなこともなく、政務に没頭するくせにその目に野心は見えず、誠実な人間であることはマティアスも長い付き合いで知っている。
覇気がないというわけではないが、恋人も必要以上に親しい友人も作らず、何を楽しみに生きているのだろうと(不敬ではあるが)不思議に思ったこともある。
それがまさか、理想の乙女を探していたとは。
(殿下も意外とロマンチストなのだな)
と納得し、それが本当ならばエールのひとつも送りたいところだ。
___対象が、五歳の自分の娘でなかったらだが。
「貴殿の心配は尤もだ。だが、私はひと目で分かったのだ、彼女が私が探し求めていた相手だと。本来ならご令嬢が年頃になってから申し込むべきなのは理解している。だが、まだ五歳の時分であれだけ美しいのだ、高位貴族の令息に目をつけられるのもすぐだろう。同じ年頃の子供同士を見合わせる機会もどんどん増えていく」
「それは、まあ……」
この国の貴族は七歳の誕生日にお披露目を行い、それから茶会などで交流していくのが普通だ。
それまで子供たちは邸から殆ど出ることなく育てられる。
メイドと護衛を付けて散歩や買い物くらいは行かせる家もあるが全く出さない家もあるし、そんなたまたま出た先で出会った相手と友達になったり、ましてや見初められる事などまずない。
まだ結婚の意味も知らず、年の近い友人のひとりもつくらないうちから将来を決めてしまうのは__うぅむ、と唸るナスタチアム侯爵に、
「侯爵の心配はわかる。私がご令嬢が年頃になるまで待てなかったり、ましてや私と婚約したことで別の家門からあらぬ攻撃をされたりすることを危惧しているのだろう?そんな心配は無用だ。ご令嬢にもこのナスタチアム侯爵家にも何人たりとも手は出させん。七歳のお披露目までは仮婚約で構わない。だが、七歳の誕生日には正式な婚約を交わし、お披露目の茶会では私が婚約者であることも同時に披露させてほしい。もちろん正式な婚約後も令嬢を縛りつけたりはしない」
「ですが、もしそれでフィオナに誰か特定の親しい相手が出来てしまったらどうするおつもりで?」
「もちろん、フィオナの意思に従う。彼女が年頃になって、他に好いた相手が出来て私と結婚するのが嫌だというなら婚約は解消しよう。婚約の際はこのことも書類に正式に記す。その場合慰謝料その他、彼女やナスタチアム侯爵家に一切の咎は発生しないことも明確に。もし私がその期間不誠実な行動をとろうものなら即時そちらから破棄も可能としておく、好きに監視してもらっていいぞ?」
侯爵の意地の悪い質問に、フェアルドは不敵に笑って答え、
「では、とりあえず娘に訊いてみましょう。五歳児とはいえ、本人のことですからな」
ナスタチアム侯爵は根負けして立ち上がった。
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