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第一章

アルトハーツ・ナイトエル 八歳

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「母上!他国に留学するにはどうしたら良いですかっ?!」
そう聞いた時の母上は卒倒しそうだったが側にいた侍従が支え、「殿下、差し支えなければ何故そうお考えになったかお聞きしても?」と訊ねてきた。

「僕、このままここでぬくぬくしてたらいけないと思うんだ。だってここでは、皆が僕を甘やかしてくれるから」
__幼くして成人病で死にそうになるくらいに。

とは言わない、言えない。
母の愛情は(ちょっと斜め上をいくとはいえ)本物だと思うから。
“王位継承争いから外れたい““他の兄弟王子がヤバい“もダメだ。
見た目子豚でも頭脳が大人とバレれば自分の身を危険に晒す。

大人は一生懸命な子供に弱い(たぶん)。

ならばここは、『自分を甘やかさず、見聞を広めるため』に徹する。
実際色々学んでくるつもりだし、まともな王政なら手伝うつもりだってある(まともじゃなかったら処刑台行きだろうから付き合わないけど)。

結果、「魔力属性が判明してからでないと留学は認められない」と言われた。

へ??

そんなの、生まれた時にわかってるもんじゃないの?

とか思ってたら違ってたらしい。
この国の王族は魔力が安定した頃に教会の司教の元で魔力属性を測り、その結果によりその後の教育方針が決まるのだとか。
因みに、その“安定した頃合い“に年齢制限はないそうだ。
「じゃあ、今すぐそれを受けさせてください!」
「えっ……」
何故か母が絶句した。



俺の魔力属性検査は直ぐに行われ、
「ふむ。殿下の魔法は探査系特化ですな。後衛に適した魔法です、素晴らしい」
そう言った司教の台詞には何の感慨もなかった。

おい、“期待はずれ“って顔に書いてあるぞおっさん。

別にいいけど。

後で聞いたことだが、他の兄達は生まれた途端に膨大な魔力が溢れているのがわかったので魔力属性検査は物心ついて直ぐに行い、殆どが前線で攻撃に特化した属性だったのでその日からエリートな教育まっしぐらで、愛でる余裕がなかったらしい。だから母は俺を猫っ可愛いがりしてたのか。

攻撃属性魔法はこの世界での花形だ。
探査よりは防御が、防御より攻撃属性持ちの方がモテる。
たとえショボい攻撃しかできなくても、防御や探査魔法使いの方が能力的に優れていても、
王族=攻撃属性
みたいな思想が蔓延っている。
探査できなきゃ攻撃先は判明しないし、助けてくれるのは攻撃魔法より防御魔法だと思うんだがな?

ていうか魔力が溢れ出てなかったんなら放っておいてくれても良さそうなものなのに目の敵にされてたのは何故だ、もしかして母に構ってもらえなくて拗ねてたとか?
思春期男子ってそういうとこあるよな。
因みに、攻撃属性だと国外には余程の理由がないと出してもらえない(色々きなくさいな王家)、らしい。

だから検査が先で、母上はまだしなくて良いと思ったらしい。
魔力属性が判明した後は、一日の大半を講師と過ごすことになるらしいから、母上も息子たちと過ごした時間は短いのだそうだ。

ごめん、母上。
けど、ここにいると成人病まっしぐらか下手したら暗殺されそうだから__他国でスローライフ、じゃない、鍛えてダイエットしてくるよ!

こうして王子としてのお披露目もしないまま、俺はひとつ国を隔てたテレネツィア皇国に旅立った。
俺の魔力属性が(ヤツら的には)弱い探査属性だったから鼻で嗤い、何の妨害もなく俺は国を出ることが出来た。
俺がお披露目も出立式もナシで留学したのは俺が弱い魔力を恥じたからだと勝手に思ったらしい。

実際は違うが、今はそれでいい。

__侮られている方が、喉笛には噛みつきやすいからな?




























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