上 下
2 / 3

入学、即 迷子

しおりを挟む
向いていなくとも、朝は来る。
よって私ロザリンダは入学式を迎え、現在絶賛迷子中です。
「そ~いえば私、前世でも方向音痴だったんだった……」
入学式ではとりあえず攻略対象なる方々のご尊顔だけ拝見しました、遠目に。
だって近づくとヤバいし。
入学式前に迷子になって会場まで連れてってもらうイベントは回避しましたよ?
んで、式終了後他の攻略対象様及びその婚約者サマ達のグループにノコノコと「先程はありがとうございましたっ」とか淑女感ゼロの挨拶に行くことも勿論してません。

__のにまさか。
「ガチで迷子になるとは……」
私はどことも知れない中庭(中庭自体たくさんある)で自分に突っ込みを入れた。
攻略対象様達からできるだけ離れて目立たないように一番離れた出口から出て、逆方向に歩いてたらいつの間にか人影がなくなり、知らない場所に出ていた。
__せめて誰か近くにいるうちに、聞いておけば良かった……!
とりあえず四方が校舎ではどうしようもない、せめて校舎の外側に出たい。

が、
「あ、開かない……」
今日は入学式のみで授業はないから当然といえば当然かも知れない。
自分は渡り廊下から入り込んだようだし。
仕方無く来た道を戻り、漸く少し開けた場所に出るがそこにも人影はない。
何処かに学内案内図みたいなものはないかとキョロキョロして見るも、掲示板はあるもののそこに案内図や手掛かりはない。
「もー。こんなにだだっ広いなら、入学案内の中に学内マップのひとつも入れといたらどうなのよ?」
とごちると、
「__成る程、それはなかなか良い案だね?」

突然の背後からの声に慌てて振り向くと、金髪碧眼の王子様がクスクス笑っていた。
(ア、アウグスト王子?!)
“聖なるロザリオの乙女“略してロザ乙、なんかロマンにかけるけど前世はとにかく略す文化だったから仕方ない__の、メイン攻略対象・アウグスト王太子・三年制のこの学園において最上級生・もちろん生徒会長様がこちらに向かって歩いてくる。

何故に??
入学式後はイベントなんてなかったはず!!
ついでにアウグストの背後にいるのは二年生の隠しキャラ・銀髪翠眼のツンツン(ツンデレではない)メガネの天才書記・エルドリオまでいる。

(ま、まさか強制力……?)
出会いイベント入学式前に起こさなかったから入学式後に発生する補正が働いてるの……?
振り返った私が真っ青な顔をして見せたからだろう、
「すまない。驚かせたようだな、先程の君の発言を咎めたわけではないんだ。私達生徒会役員は入学式後学内の見廻りや点呼を担当していてね」
「あ……」
そういえば絶賛迷子中だった、私。
続いて真っ赤に赤面してしまった私にアウグストは、
「見たところ迷子で間違いないかな?気にしなくていい、この通り敷地が広いからね、迷子は毎年いるんだ。寮の近くまで送っていこう」
と手を差し出した。
「よ、よろしくお願いします……」
その堂に入った仕草に、乙女ゲームにハマる人の気持ちがちょっとだけわかった気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

記憶をなくしたジュリエット

詩海猫
恋愛
もしも前世で死に別れたロミオとジュリエットが生まれ変わって再会したら……? というお話を現世の高校を舞台に書いてみました。 *体調不良につき不定期更新

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

〈完結〉髪を切りたいと言ったらキレられた〜裏切りの婚約破棄は滅亡の合図です〜

詩海猫
ファンタジー
タイトル通り、思いつき短編。 *最近プロットを立てて書き始めても続かないことが多くテンションが保てないためリハビリ作品、設定も思いつきのままです* 他者視点や国のその後等需要があるようだったら書きます。

公爵令嬢と短気な王子様

ひろたひかる
恋愛
「貴様が彼女を迫害していたことはわかっている!」婚約者である王子から糾弾されている公爵令嬢サンドラ。けれど私、彼女とは初対面ですわ?★★★断罪イベントっぽいですが、乙女ゲー、婚約破棄物ではありません。一応恋愛カテゴリですが、コメディ色強いです。「小説家になろう」にも同内容で投稿しています。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...