『紅い薔薇の香』

『紅い薔薇の香』(完)

暗闇の中　薄らと怪しく光　紅い月


獲物を捜し求め彷徨う謎の影


溢れた流血、照らし出す


月の織り成す陰影(インエイ)は、燃える太陽、昇(ノボ)らせず、暗黒世界を作り出す


鮮血で染まる深紅の薔薇


花びらに止まるは黒い蝶


影に潜み生き血を吸うはヴァンパイア(吸血鬼)…


汚れ無き血を好み吸い、銀のクロス(十字架)避け闇に紛れて獲物を捜す


甘き血の香に酔いしれて、獲物に咲かす深紅の血薔薇


見た目は変わらぬ人の子よ


言ノ葉が効かぬ珍しい人間(ヒト)


逃げ惑う獲物(エサ)を閉じ込め


最後の一滴も残さぬよう、その時が来るまで生気(イノチ)を喰らう


喰らった生気(イノチ)は己が糧に


聖水(チ)さえも飲み干すほどに喉の渇きは満たされぬ


何十年も待ち続け巡り会えたお前に幾度と殺(ケ)されようとも


輪廻を繰り返し必ず見つけ出す


人が生まれ持ち得ている感情(ココロ)の意味は、闇を司るヴァンパイア(吸血鬼)には理解し難し


二つの色に支配されてく


滴る血は紅、闇は濃紺


伸ばした犬歯(ハ)で噛み跡残し、獲物に刻印(シルシ)を消えないように


人の血に染まった紅薔薇、赤ワイン口に含み横たえる


我が牙は、死祖に値し噛めば仲間となる


致死量(ヒンシ)の毒を注ぎ込む


毒は少しずつ獲物(カタチ)を壊し、ヴァンパイア(吸血鬼)となり深淵(ヤミ)を育てる


殺戮(サツリク)を好み、血を欲し、永久(トワ)の命を授かり生きる


くだらぬ世界(オモイ)に終止符を