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♪例えこの選択が間違いだとしても

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「・・・本当に良かったのか?」
「何を?」

今日、私の夫となる赤茶色の髪の男は、少し気まずげに私に言葉をかけた。

「・・・結婚までしなくたって・・・家から出る方法はあるだろ」
「これが最善の方法よ」

少なくとも、私には。






帝国の、とある公爵家の一人娘として生まれた。

シュネーと名付けられた私には三人の兄がいた。

優しく穏やかな長男。
冷静沈着で真面目な次男。
子供のようにやんちゃで活発な三男。

全員が太陽の光のような眩い黄金の髪を持って生まれた。

私は年の離れた末っ子としてそれはそれは可愛がられて育った。

私はこのままここで公爵令嬢として育ち、相応しい場所に嫁いで妻としての役目を果たす・・・そう、信じて疑わなかった。

私の才能が開花するきっかけとなった、事件が起きるまで。

暑い夏の日だった。
私たちは湖畔の別荘にやってきていた。

みんなで涼んで、ボートに乗って、並んで食事をした。
そして湖の向こう側に広がる森に、兄たちと向かった。

四人で奥まで進んで行った。
楽しかったし、幸せだった。
でもそんな在り来りの幸せが壊されたのも唐突で。

最初、空耳だと思った。

でも、その有り得ないはずの飢えた獣の唸り声に初めに気が付いたのはエスカルドお兄様次男で。
私を逃がそうとするのはフランセントお兄様長男で。
私を庇おうとするのはレオナードお兄様三男で。

鉄臭い匂いがして、我に返った。
冷たい体に縋っていた。
 
手からは暖かな黄金の光が零れていた。

それなのに、私の手は冷たくて、カタカタと震えていて。

保護された時も、私はレオお兄様の服だった切れ端を、掴んで離さなかったそうだ。

三人の息子が死に、後継者としての地位が転がり込んだ、回復能力を持つ一人娘。

嫌な目に無遠慮に晒される私を、両親は必死で守ってくれた。

結果として公爵家には養子が迎えられることとなり、私は傷付いた心身を癒すという名目で、大聖堂に巫女として赴くことになった。

・・・当時はこんなことで癒えるはずもない、そう思っていたけど・・・。






「・・・あなたはどうか知りませんが、私はあなたが好きなのよ」
「え?なんか言った?」

どうやらよそ見していたらしい男にポツリと呟いた言葉は聞こえなかったらしい。

「いえ?ただ私にとってリュオン様とレイドと・・・ついでにあなたに会えたことは僥倖だったと申しました」
「え?俺ついでなの?」
「ふふ、そうですね」
「酷くね?・・・なんでシュネーがそんなに家から出たいのかは知らんけどさぁ」
「はい」
「・・・まあ、幸せに?しますが」
「・・・はい」
 
あまり期待せずに待っていますね。
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