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コーク商会長アトワ

執念

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「本日の予定は──────」

執務室で淡々と予定を読み上げる秘書の声を聴きながら、書類に目を通した。
どうやら生家の兄からまた手紙が届いたらしい。

こちらが成功するほどに衰えていくものだから、思わず笑いが込み上げてくる。
別に好きでも嫌いでもないが、ハイネを探すのを散々邪魔してくれた。

「家に戻ってこい」だの「結婚相手を見繕ってやった」だの、ハイネを見つけただなんて虚言を喚いて時間を無駄にしやがった。
どうしても俺に干渉したいらしい。母さんと父さんにも手を出そうとしていた。

ハイネと結婚する時は両家の両親に今度こそ祝福されて、と決まっているんだ。
殺させなどするものか。

もちろん家族の中に、そいつらは存在しない。
不安要素はゼロにするのが信条だ。

今日の予定はとある傭兵団への訪問。
見事な赤毛の男が纏める、『無敗の傭兵団』と呼ばれる場所。

まあ、有り体に言えば商談しに行くのだ。
あそこの傭兵団長とは知り合いだが、気の良い奴でそれなりに心を許していた。
何よりハイネを探すのを手伝ってくれるのがいい。
なにか隠しているのは知っているが、たとえハイネの居場所を知っていてもなにかすることは無いだろうという自信がある。

人を見る目は、それなりにある。
だから。

「─────以上にございます」
「ご苦労」

コンコン。

「失礼いたします。アトワ様」

この女が、毒蛇のように執着深いことを、俺は知っている。
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