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▼真なる後継者の言うことには

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真なる後継者。
真なる皇帝。

本来なら皇太子として大切に育てられるはずの、俺が居場所を奪い取った人間。

艶やかな灰銀の髪と、鮮やかな紫水晶の瞳。

帝国の華と呼ばれる彼の母の持った稀な髪色と、俺が持てなかった正しき皇帝の証。

その顔立ちはとても整っていて、美しくて、肖像画で見た事のある前皇帝夫妻とよく似ている。

・・・きっと俺は、彼に全てを返すことになるんだろう。
元々の人生だった。

彼が戻ってきたら、返さなくてはならない王冠。

今だけ俺の手の中にある、それ。

やっぱりこの国に来なければ良かった。
ここに来なければ、見つけることもなかったのに。

「と、言うわけで君は本物の皇太子だから、一緒に帝国に行こう」
「え、やです」
「・・・は?」
「や、ややや、いやだって」

絶対失敗するてか失敗しかしない思わず土下座しちゃうに決まってる偉そうに振る舞うとか無理だし拳骨怒号が日常なのに今更皇帝とか言われても実感無いしなりたくもないしそもそもちゃんと皇帝として育てられた人がいるんだからそっちに投げときゃいいじゃんダメ?

そうまくし立てられ口を開きっぱなしにアスタナイト・・・ステファーニエを見つめる。

初めて会った従兄の瞳は、嘘なんて一片もなく澄み切っている。

母以外に初めて見たその瞳は、あまりにも野望と覇気がない。

それこそ公女と一緒にいる時が・・・さっき、ほんの少し見ただけの横顔が、一番輝いていて、楽しそうで。

さっき去っていく、チラチラと振り向く公女の後ろ姿を切なげに、ひたすらに追っている姿を見れば答えは一目瞭然だった。

「・・・貴殿は公女が好きなのだな」
「・・・うん???」 
「ん?」
「ええっ???」
「んん??」

なんだろう。
何か噛み合っていない・・・?

顔を青くしたり赤くしたり忙しいステファーニエをぼんやり眺めていると、軽く咳払いした母に肘につつかれる。
そういえば居たんだった。

母上のにっこりとした瞳と目が合い・・・ああ、と気が付いた。

つまり彼は自分の心を理解していなかったと、なるほど。

「・・・まじかぁ」
「残念ながら、そうだな」
「笑い事じゃねえっすわ」

さっきまで人の心をかき混ぜてきた仕返しにそう返すと返ってくるのは弱気な声。

「どーしよっかなぁ・・・」
「どうしようも何もどこからどう見ても両思いなのだからさっさと結ばれればいいだろう」
「いや俺従者お嬢公女」
「ふむ、今日からは次期皇帝の従兄となるな」
「そうだけどー」 

サラッと会話に織り交ぜた宣誓は理解して貰えなかったらしい。
まあいい。

「・・・そうだ、ステファーニエは魔女・・・ジョアンナ夫人をどう思っている?」
「え、どうって・・・素晴らしい方です・・・いや、そう、思ってました」

一瞬で苦々しげになった顔を見るに、一筋縄には行かない感情があるのだろう。

そうして吐露されたのは、この国に疑問を抱き始めた生粋の王国民の声だった。
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