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王子様は聖女の娘が欲しいだけ

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「うん?」

かさりと音を立て、手紙が机を滑り落ちた。

幼い頃に運び込まれてからそのままのこの机は、かなり古い。
でもまあ、使えるしいいやと思っている。

まあ、よく頭をぶつけるんだけども。

ゴンッ

「痛った・・・」
「何やってんすかお嬢」

後ろから飛んでくる野次が煩いわ。

「たくー、気を付けてくださいよォ?」

黙らっしゃい。

「あら・・・殿下からの手紙だわ?」

気分は一瞬で沈んだ。
面倒臭いわ。

「えっ、またっすか?そろそろ訴えません?」
「いいわ・・・どうせ今日も意味の分からない文ね」

そうして開いた手紙は予想通りのもの。

まず私という存在が聖女の娘であることを批判し、本来ならそこには自分がいるべきだったというスタイルを崩さない嫌味の嵐。
急に大人しくなったと思えば媚びを売り始め、自分を私の夫として迎え入れるよう促す内容。
つまるところ遠回しに自分をお母様の子供にしろと言いたいのだこの人は。

幼い頃からお母様信者である両親に育てられた殿下がこの手紙を送ってきたのは両手両足の指の数を優に超える。
それこそ満足に文字も書けない頃からの習慣だ。

これにいちいち手紙を返すのも面倒臭い。
「二度と来るな」って書きたいわー。
そもそも定期的に王家とは遭遇するのよ、その時に言ってくれれば言葉で返せるのに、お母様がいるからって猫かぶって。

外面だけは一端の王子様なんだから。
まあ確かに、向日葵色の髪にアクアブルーの瞳の美貌の王子様はかなりお母様に可愛がられている。
なんせ慕っていた国王と、扱っていた王妃の息子だ。
その上私と同い年ときたものだから。

・・・多分国王夫妻は子供ができなかったんだろう、愛し合っていなかったから。
そしてお兄様が生まれてしまった時、気がついたに違いない。

お母様と同じ時に妊娠すれば・・・子供が同い年になってしまうことを。

それを実行した結果生まれたのが、あの二人の長所他の人から見ればを受け継いで生まれたこの国の国民性を最大限に持った王子様。

そう、それはお母様ファーストの精神。

「て、言うかそろそろ王家の定期交流会じゃなかったかしら?」

定期交流会。
そう銘打ったそれはこの国でいちばん有名なイベントであり、誰もが血涙を流して羨ましがる。
王家と大公家のみが参加し、どんな高位貴族も立ち入りの許されない特別な茶会だった。

そう、主に聖女と王家の面々の交流会であり、私やお父様はほぼ空気。
それでもその場を譲ってくれと土下座される程度にはとんでもないものなのだ。
ちなみに私は別に行きたくない。
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