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4.動画の主の正体は?
4-3
しおりを挟む「そんなことないよ」
そこに、凛としたライガの声が響いた。
「ねえ、いっちー。ダンス対決しない?」
「はあ? おれと?」
一田くんがバカにしたように鼻で笑う。
そういえば、一田くんてダンス部じゃなかったっけ?
ウチの学校のダンス部は、めちゃくちゃレベルが高くて有名だ。
「そう。みんな! 机を教卓側に寄せて!」
ライガが声を張り上げて指示を出す。
すると、みんなライガに従いだした。
ちょちょ、どうしちゃったの、みんな⁉
(ちょっと、クリス!
なんか、ライガの様子が変だよ。
妙に自信があって、ダンス対決しようなんて言ってるし……。
動画を見たクラスのみんなも、おかしい)
(ライガが、何か宝石を身に着けてるってことはない?)
(身に着けてても、わたしたちみたいにポケットに入れてたらわかんないよ)
(うっ、確かに……)
そうこうしてるうちに、教室のうしろに広い空間ができた。
「は~い、実況はわたくし、あなたの隣に音鳴(おとなり)さん、
放送部の音鳴広(ひろし)がお送りします!」
音鳴くんのノリのいい声に、わあっと歓声が上がる。
「ライガさん、音楽は?」
「スウィートウェザーの、『猫になって愛してあげる』。
ちょうど、ダンス部でも練習してるヤツでしょ?」
「おお! 昨日のヤツですね! では、検索してっと……」
音鳴くんはスマホをいじりだした。
ウチの学園は、スマホ持ちこみ可なんだ。
連絡用としてならってことだけど、まあ、それをキッチリ守ってる人は少ない。
「おいおい。ライガ! ヒロシも! マジでやるのか?」
一田くんはあせったような、困ったような顔をしている。
「やるよ。実際にやってみせたら、いっちーでも信じてくれるんでしょ?」
挑発するようなライガに、一田くんは「……上等だ!」と、返した。
どうやら、腹をくくったらしい。
「は~い、MV(ミュージック・ビデオ)再生まで、十秒前!」
十、九、八とカウントダウンがされていく。
その間に、ふたりは距離を開け、
手を横に突き出して、地面をにらむポーズをする。
「スタート!」
じゃんっと音楽が鳴りだし、ふたりは踊り出した。
ウソ! ほんとに、ライガが踊ってる!
いつものふにゃふにゃしたナゾの動きじゃなくて、
パキッパキッとキレのいいダンスだ。
しかも、ライガ、歌まで歌ってるよ!
お経じゃない!
リズムにのった、超、美声……!
教室中が手拍子をし出して、廊下の人までノリノリだ。
一番難しいサビも、ライガは歌いながらなんなくこなす。
みんなも、わたしも、ライガに夢中だった。
音楽が終わると、教室は拍手につつまれた。
勝敗は、あきらかだった。
「みんな、勝者は~?」
音鳴くんの問いに、「ライガ!」と叫び声に近い声が上がる。
ライガは満足そうにぐっと手を突き上げた。
ライガも一田くんも、息が荒い。
特に歌も歌っていたライガはつらそうにしていた。
「大丈夫? ライガ」
わたしがかけよると、ライガはニッと笑ってみせた。
その表情に、なぜかドキッとしてしまう。
ライガのこんなカッコイイ笑み、みたことない。
「ありがと、ヒカリちゃん。
どう? 昨日の動画がおれだって、信じてくれた?」
「うん」
わたしは、ただうなずくしかなかった。
まだ信じられないけど、あの動画の主の正体は、ライガで間違いなかったんだ。
「カッコよかった?」
「うん」
「歌は?」
「すごかった」
そんなやりとりをしていると……。
「まだだ!
この一曲だけ、練習したんだろ⁉
他の曲で勝負だ!」
一田くんが、納得いかない! といった表情でライガにつかみかかってきた。
でも、ライガはあわてずさわがず、そんな一田くんの手をとった。
「いいよ。
じゃあ、今度はお互い新しい曲を練習してやろう。
いっちー、リクエストは?」
「……じゃあ、リリースされたばかりの、スウィートウェザーの『クローバー』で」
「OK。期間は? 一週間くらい練習が必要?」
ふふっとライガは笑った。
なんで、こんなに楽勝って感じなの……?
「……いや、三日後だ!」
一田くんは、鼻息荒くこたえた。
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