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11.エマの家出

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 マナトには、エマの家出のことは話してあった。
 でも、今日の様子を見る限り、これは家出じゃない。
 おそらく……。

「エマは誘拐されたってことか。
それも、エスパーに」

「誘拐……、か。
だから、エマは助けを求めた。
そういや、霧浦のヤツ、『まだまだ探してもらう』って言ってたな。
探しもの……。
そうだ、エマの能力!」

「ああ、エマの能力は、探査能力。
きっと霧浦ってエスパーは、おれみたいに探しものが苦手か、
もしくはできないんだ」

「だから、エマを利用してるってワケか。
探しものは……」

 ちら、とマナトが壁の棚を見た。

「ジュエルドラゴンのウロコ。
いや、虹隕石」

 こくり、とおれはうなずいた。
 五千億円の価値がある、宝石。

「でもさ、
なんでエマはここに虹隕石があったことに気づいたんだ?」

 マナトの疑問ももっともだ。
 エマの能力は、「探しものの一部」がなければ、
 「探しもの本体」を見つけられないはず。

「なんじゃ、そんなこともわからんのか」

 あきれた声。
 マナトの影から、ノワールがばさっととび出てきた。

「ノワール⁉」

「そうだ! 専門家がいた! 
おい、ノワール、どういうことなんだ?」

 マナトがノワールを専門家と言ったことが気になるが、
 とりあえずおいておく。 
 ノワールはマナトの肩にとまって、口を開いた。

「あの子の能力はな、
念写、サイコメトリー、テレパシー、千里眼……、
それらが絶妙なバランスで混ざり合ったものなんじゃよ」

 そ、そうなの? 
 ノワールの能力分析、すげえ。

「だから、能力の応用もきく。
もしあの子が『小粒のダイアモンド』を手にして、
『もっと大きなダイアモンドを探したい』と思ったら、
そのありかを見つけるのはカンタンじゃろうな」

 頭の中で、「小粒のダイアモンド」を、「小さな虹隕石」に。
 また、「大きなダイアモンド」を、「大きな虹隕石」に置き換える。
 そうだ、「小さな虹隕石」があったのは……、宝石展! 
 でも、それは、マジシャン・シーフによって、ぬすまれた。
 エマが「小さな虹隕石」を手にするには、
 マジシャン・シーフからそれをわたしてもらわないといけない。
 ってことは……!

「霧浦が、マジシャン・シーフってことか!」

 おれは思わず叫んだ。
 だって、それなら全部納得できる。
 霧浦はエスパーだ。
 瞬間移動やテレパシーの他にも、何か能力が使えるかもしれない。
 それで、宝石展の虹隕石をぬすみだしたんだ。

「くそ、早くエマを助けないと!」

 こんな時、おれひとりだったら探し出すのは難しかっただろう。
 でも、おれには……、「仲間」がいる!

「まかせとけ!」

 そう言って、マナトは杖をかまえ、呪文をとなえだした。
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