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7.条件だらけの戦い

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 今、魔法のメガネをかけてなくても、
 おれにはジュエルドラゴンが見える。
 ってことは、他の人々にも見えてるってワケだよな⁉
 父さんたちの同級生はもちろん、部活で校庭にいるヤツとかもふくめて。
 それって、かなりまずいんじゃね⁉
 マナトがはってくれた結界、どのくらいの力があるんだ⁉
 ジュエルドラゴンははばたき、
 「ぐるるるっ」と怒りのうなり声をあげている。

「わ、なんだ、急に風が出てきたな」

「雷の音? 雨でも降るのかしら」

 ……なるほど、みんなはそう感じるワケね。
 ジュエルドラゴンは上空からいきなりすべりおりてきた。
 タマゴのまわりにいるやつらにむかって、体当たりする気だ!

「リキ! 頼む!」

 悲鳴のようなマナトの声。
 おれはとっさに念動力で、
 ジュエルドラゴンの横っ腹あたりに、
 でっかい空気のボールをぶつけた。
 ジュエルドラゴンは少しぐらつき、
 人々の横ギリギリを勢いよく通り過ぎていった。

「うわあああ!」

 その時に起きた風によって、みんながとばされて倒れたり、転んだりする。
 これは、危険すぎる。
 みんなを避難させないと! 
 でも、どうやって?
 おれがあせっていると、空がいきなりくもりはじめた。
 真っ黒な雲に、ゴロゴロという音。
 カッと稲光がしたと思ったら、バチバチバチッと何かがふってきた。
 雨じゃない。
 二、三センチはある氷のカタマリ……、雹(ひょう)だ!

「いててて!」

「なにこれ、雹?」

 雹が人々の体にあたり、大騒ぎになる。

「みんな、いったん校内に避難だ!」

 そこかしこでそんな声が聞こえた。
 校庭にいた人々が、いっせいに体育館や校内に避難しはじめる。
 マナトを見ると、うなずかれた。
 きっと、魔法をつかったのだろう。

「これで、避難はすんだ! 
リキ、力をかしてくれ!」

 ふたたび空に上がり、こちらを威嚇しているジュエルドラゴン。
 タマゴから人がはなれたからといって、
 怒りがおさまったワケではないらしい。
 タマゴ泥棒を助けるようなジャマをしたおれたちに、
 そうとう腹を立ててるみたいだ。

「リキ! そいつ、火ぃ吐くぞ! 
気をつけろ!」

 えっ⁉ と思うと同時に、
 すうっとジュエルドラゴンが息を吸うしぐさをした。
 やばい!
 ジュエルドラゴンの口の奥に赤い炎が見えた瞬間、
 おれはマナトの隣へと移動した。
 おれのいた場所に、ゴオオオッと炎がまき散らされる。
 あ、危なかった……!

「リキ! よかった」

「ああ。助かったよマナト」

 火を吐くことをマナトが教えてくれなきゃ、
 とんでもないことになってたな……。
 おれたちが話しつつ、注意深く見守っていると、
 ジュエルドラゴンは地面に降りたち、タマゴの前を陣どった。
 それでも、興奮はおさまってないみたいだ。
 おれたちをにらみつけ、大きく翼をひろげている。
 おれたちとの距離は、十メートルくらい。
 一気につめよられて、攻撃されたらまずい。

「リキ、テレパシーでアイツに
『タマゴを盗んだワケじゃない』って、話しかけられるか?」

「無理だ。
おれのテレパシー、人間限定だから」

 昔、動物相手にテレパシーをやってみたことがある。
 犬や猫、ハムスターにセキセイインコとか、かたっぱしからな。
 でも……、結果は、失敗。
 他の動物と人間では、脳のつくりが違うからなのか、
 それ以外の原因があるかはわからない。
 おれが動物と話すことはできなかった。

「魔法ではどうなんだ?」

「魔法でも無理だ。
種族が違うと、念話はできない。
くそ、こんな時にノワールがいてくれれば……」

「ノワールが? なんで?」

「アイツ悪魔だからな。
アイツなら、種族とか関係なしに、だれとでも話ができる」

「あっ、そうだよ。
おれ、気になってたんだけど、悪魔って……」

「リキ、とりあえず、こっちの姿を隠すぞ! 
地と知をつかさどるノームよ、われらを守る石の壁をつくれ!
ハロック・ユージーン!」

 おれとの会話を打ち切り、マナトは呪文を唱えた。
 おれたちの周りをとりかこむように、大きな石壁ができる。
 今は、悪魔だなんて気にしてる場合じゃないか!

「しゃーねえ、ちょっと後味悪いけど、
おれの念動力最大解放で、思いっきり空気をぶつけてやる!」

 空気のボールを進化させる。
 拳銃の弾みたいな形にイメージして空気を固定すれば、
 もっと威力が増すだろう。
 名付けて、空気弾!

「ちょい待ち! 
ジュエルドラゴンは絶滅危惧種の超レアな生き物だ。
傷づけてもらっては困る。
ちなみに、おれの眠りの魔法も使えない。
ヘタにアイツを眠らせて、倒れた時に骨折でもしたら悪いからな」

 マナトの言葉に、思わずがっくりする。

「今そんなこと言ってる場合か⁉」

「ジュエルドラゴンは、本来はホントにおだやかな竜なんだ。
できれば、ことを荒立てたくない」

 むーっと不満そうな顔をすると、
 マナトは「頼む!」とおれに頭を下げた。

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