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12.新たなる旅立ち

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 アルラウネを倒し、村に帰ってから、いろいろなことがあった。
 サカキは、剣術の師匠であるキキョウから、
 カミサマとの戦いのことを聞いた。
 サカキとカエデが旅立った後、
 キキョウはひそかにカミサマのすみかの屋根裏にしのびこんだ。
 そのまま気配を消して、毎日カミサマの様子を見ていたのだという。
 そして、サカキたちがアルラウネと戦ったその日。

「カミサマ……いや、アルラウネの分身か。
ソイツがぶつぶつとひとりごとを言っていてね。
『サカキめ、絶対に食べてやる』とか。
『生意気な妖精め!』とか。
……で、おかしいと思ってたら、
蔓草をのばしはじめただろ? 
もう、驚いたね」

 カミサマは演技をやめ、
 けたたましく笑いながら、村人たちを襲っていった。
 その姿をアルラウネのようにかえて、
 村人たちを蔓草でしばり、しめ殺そうとしたらしい。
 村人たちはとまどい、
 なすすべもなくみんなつかまってしまったのだという。
 ……キキョウをのぞいて。

「それで、師匠が分身を倒したんだな! 
やっぱり、師匠はすげーや!」

 興奮するサカキに、キキョウは苦笑した。

「前々から、カミサマには悪しき気を感じてたんだ。
でも、どうしてもみんなに言い出せなくて……。
そんなことを言って、
村から追い出されたらどうしようって思ってね。
あたしはこの村が、みんなが、大好きだから」

 キキョウはそう言った後、
 サカキとカエデにすっと頭を下げた。

「……でもそれは、あたしの弱さだった。
あんたたちの薬をとりに行く旅にも、
最後には賛成しちまった。
……悪かったね、サカキ、カエデ」

 謝罪されて、サカキとカエデはあわててフォローする。

「師匠、頭を上げてくれよ! 
悪いのは、アルラウネのヤツなんだから!」

「そうですわ。
それに、カミサマに頼りすぎていた、
わたしたちも反省すべきです!」

 カエデの言う通りだった。
 カミサマが倒された後、
 村人たちはみんなぬけがらのようになってしまったのだ。
 カミサマを倒してくれたキキョウに感謝するどころか、
 カミサマ殺しの罪で、
 キキョウを倉に閉じこめてしまうくらいには、 
 村人は混乱していた。
 サカキとカエデが村に無事帰り、
 村人はふたりの話からカミサマ暴走の理由を知った。
 だが、ようやく事態の真相を知ることができても、
 疑うものは多かった。
 キキョウの解放は、
 本当に熱病がおさまるかどうか、
 その確認のあとだという結論になったくらいだ。
 熱病、いや、毒の影響がぬけて、
 みんながもとの状態をとりもどしたころ……
 十日ほど経って、やっと村人たちは真実を受け入れたのだ。
 すなわち、
 カミサマとは何も知らぬものをだまし、
 利用するだけの『悪』だったのだと。
 
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