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朝っぱらから盛って、まーた爆睡。
起きると外はもう暗くなっていた。
今までの発情期は睡眠も細切れで、一回の睡眠も長くて二、三時間とかだった。気を失ったことはあるけど。
自分で慰めて、疲れて寝て、というのは……ひとりでもふたりでも、疲れて寝るのは変わらない筈なのに、悠真さんとシた後はいつもよく眠れた。
たっぷり八時間とか、それどころか今日は半日寝てしまっている、その前にも寝ていたのに。
これも番のコントロールというやつなのだろうか。
発情期は起きている間、波はあるけどずっと躰があつい。眠れるなら寝てしまった方が楽だ。
なのに今回は、その長く寝てしまうのが勿体ない。
折角こんなにずっと悠真さんがいるのに。色んな話が出来るチャンスなのに。
すぐに頭がおかしくなってしまって、会話どころじゃなくなってしまう、だから、だから、まともな内に色々話したいのに。
今までの経験値が低過ぎて、コミュニケーション能力が死んでて、どう話したらいいのか、わからない。
それでも付き合ってくれる悠真さんがありがたい。悠真さんだと、気を遣わないで、花音たちと話すような、そんな感じで楽しく話が出来る。それが嬉しかった。
色々、お世話までして貰っちゃって……
……そう。
お風呂で盛ってしまって、全裸だった筈。
折角洗ったのに汚した躰をまた綺麗にして、下着から服から着替えさせられて、びしょびしょに濡れたシーツも綺麗なものに替えられ、濡れたままだった髪も多分これ、ドライヤーされてると思う。
至れり尽くせり。
おれはなんも出来てないのになあ。
いや、中出しさせてやってるし。そっちのが気持ちいいんでしょ?いやいやいや、そんなの番にもやってんだろ。
……じゃあおれは?
悠真さんにとって、なんのメリットがあんのかな。
面倒なだけじゃない?
俺があの時噛んでなんて言わなければこんなに面倒なことにはならなかったのにね。
いや、本当に面倒でしょ。
二ヶ月前後で発情期は来るわ、一日だけしか相手しないだなんて辛いなんて文句言うわ、話は面白くないわ、アルファのこどもも産まないわ。
悠真さんにとってメリットなんてひとつもなくて、ただあの日、不運で優しかっただけで、こんな面倒なやつに捕まってしまった。
その癖おれも振り切ることが出来なくて、うじうじしたまま。
番に悪いとか、そんなこと考えるだけで、なんもしない。
かおを見るのもこわくて、謝罪にもいけない。なのに発情期にはちゃっかり悠真さんを借りている。
おればっかり楽になって、嬉しくて、満たされて。
おれがいなくなれば、もっと、悠真さんはだいじなひとに時間を使えるのに。
「……ごめん」
誰もいない空間に、ぽつんと声だけが消える。
今だって、きっと隣にいないのは何かしてくれてるからだ。
夕食の準備か、掃除か洗濯か。
そんなの、終わったら全部自分でするのに。
悠真さんは家政婦じゃないのに。
悠真さんがそうやって、色々してくれればしてくれる程申し訳なくなってしまう。
おれがしてあげられることなんて、ひとつしかないのに。
◇◇◇
和音、と名前を呼ばれ、頬を軽く叩かれ、漸く瞳を開ける。
眩しい。電気点いてるのか。ということは夜。
悠真さんがほっとしたように、魘されてた、どんな夢みてたの、と頬を拭った。
夢……どんなのだっけ、もう覚えてないや。
「いっぱい寝たね」
「うん……」
「ご飯食べよ」
「いらない……」
「さっきお腹鳴ってたよ」
「……ウッ」
恥ずかしい。食欲と躰は違うから。そうわかってるけど。
まだ動けない?と訊かれて、答える前に自分でベッドから降りようとして、……落ちた。
慌てたように悠真さんがおれの腕を引いて、もう一度ベッドに引き上げる。
やっぱり動けないみたいだね、と苦笑する悠真さんに、また恥ずかしくなってしまった。
「ごめ……」
「いいよ、おれが好き勝手やっちゃったんだから」
「……」
「ほら、だっこ」
だっこ、なんてこどもみたい。
そう思うけど、腕を広げてしまう。だってその魅力は抗い難い。
悠真さんのにおい、体温、鼓動、力強さ。そういうの、わかっちゃうんだもん。
気持ちいいの。脳内麻薬が出てるみたい。
「なんかなあ……一日一食になっちゃうね、もっと食べて欲しいんだけど」
「……ごめん、悠真さんはちゃんと食べて」
「俺は何だかんだ食ってるよ、腹減るもん。本当は朝も食べさせたかったんだけど」
「……う、」
「まあ、うん、仕方ないかあ」
背中をぽんぽん撫でられるとまた眠くなるからやめてほしい。
躰は栄養を欲してるのかもしれないけど、頭はまだ眠たいんだ。
今日はねえ、ドリアだよ、なんて言う悠真さんに、昨晩のリゾットといい、確かにスプーンひとつで食べやすいのかもしれないけど、なんでそんな熱々の作っちゃうんだ、と文句を言ってしまった。
また。この口は。もっと言うことあるだろ。
「あったかいご飯の方がいいでしょ?寒いし」
「それは、まあ……」
「食べさせてあげるの、楽しいし」
「また……」
「お腹あったかいって言う和音がかわいかったから、ふふ、あったかいの、食べさせたくて」
……食べさせるの、面倒くさくない?
そんな熱々のもの、わざわざ冷まして食べさせるなんて、嫌にならない?
おれ、悠真さんのそういうとこ、よくわかんないや。
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