17 / 124
2
17
しおりを挟む◇◇◇
夕食を済ませて、片付けて、風呂に入って、ぼんやりテレビを観ながら雑談をして。
ソファに沈むおれにくっつくように悠真さんが座るものだから、段々と躰が熱を持ってきた。
予測通り、今晩から発情期が訪れそうだ。なんならもう来てる気もする。でもそれは悠真さんのせいでもあると思う。
風呂に入る前も、入った後も、どっちもいいにおいがするんだから。
「……ッ、ん、」
「辛くなってきた?寝室行こうか」
「ん、ん……」
「抱っこしようか」
「歩け、る」
いよいよ頭もふらふらしてきた。
ソファから立ち上がるおれの手を取って、悠真さんがテレビの電源を消す。
転ばないようにゆっくりゆっくり歩き、寝室の扉を開けて、明かりを点けると、悠真さんが少し笑った。
何、と見上げると、準備万端だね、と言う。
当たり前だろ、何年ひとりで発情期を乗り越えて来たと思ってんだ、必要なものは全てベッド周りに置いておくのがいちばんだと身をもって知っているのだ。
「お水温くならない?冷たいの飲みたくなんないの、小さい冷蔵庫とか」
「お腹痛くなったら困る、し……エアコンある、し、温いくらいが、丁度、いい……」
「意識高い女子みたいな」
置かれたペットボトルやタオルを避けるように歩き、おれを抱えてベッドに乗せ、笑いを噛み殺すようにして、軽く唇を重ねた。
それは、今からするよ、という合図のようで、おれは下らない反論はせず、瞳を閉じる。
「……ん、ふ、っう、ん、ンん」
舌先で唇をつつかれ、それに応えるように薄く開くとあつい舌がぬるりと押し込まれた。
ものを食べる時には何も感じないそこは、悠真さんの舌に翻弄されるまま快楽を貪る。
気持ちいい。口ん中ってこんなに気持ちよくなっちゃう場所なの、それともオメガだから?アルファが、番が相手だから?なんでもないとこでも気持ちよくなっちゃうの?
わかんない、おれはオメガだから。普通じゃないから。初めてだから。
「んっゔ、ぅ、んんん!」
ぢゅう、と音を立てるように舌先を吸われて、頭の中が真っ白になってしまう。
舌先が痺れたようになってる、あ、気持ちい、気持ちいい。
「は、ぁう、ふ、っう……」
「ひとつき空いたらキスの仕方忘れちゃった?」
「いっ、は、う、一ヶ月、半、だし……」
「周期は今回は二ヶ月空いたってことになるのかな、あの日は突発的なものだったもんね」
悠真さんの指先が項を撫でる。
そこには前回噛んでもらった痕が残っている。指先で、その痕を確かめるようにゆっくりなぞるものだから堪らない。
背中がぞくぞくして、息が荒くなって漏れてしまう。
見せて、と首を横に捻られ、まじまじとそこを見て、痛い?と訊いてくる。
痛みはない。ただ、自分もそこを触れて何度も確認した。
鏡では碌に見や出来ないから。
でもその時は、じわじわしたものが胸に広がりはせよ、今のような熱はなかった。
触れられるところが、悠真さんの息のかかるところが、甘く疼くような、そんなものはなかった。
「ッん……」
「首筋気持ちいい?かわい」
「ンあ……っあ、舐めっ……」
「痛くないって言われてもこんなにくっきり残ると痛そうに見えちゃうんだよなあ」
「あっ、あ、あ、ん、う、」
「痛そうなのは嫌なんだけど……でもここは別、痕を見るとなんか……」
「んっ、う!」
舐められるところまではどうにか我慢出来た。
でもそこを吸われることはどうにも我慢出来なくて、躰がびくんと跳ねてしまった。
くすりと笑われた気がする。笑うな、まだイってない、こんなんじゃイってない。
……でもやばいのは事実だ。
自分で下半身に手を伸ばすと、待って、とその手を止められた。
なんで。やだ。脱ぎたい。達してなくてもこの弱い躰はもう下着を汚してしまっているのは感触でわかっているのだ。
「ぬ、脱ぐ……」
「うん、いいよ、でも俺が脱がせたい」
「なん、で、そんな、」
「脱がせるのもセックスの内じゃん」
「ふあ……」
この間は噛むことが、番になることが目的だったから。今日は発情期終わらす為にいっぱい気持ちよくなろうね、
そう耳元で囁くものだから、おれはまた情けない声を上げてしまった。
「今日は脱がせていいんだよね?」
「……ん、」
「パジャマもかわいいんだけどね」
「これ、かのんが買ってきた……」
「……パジャマの柄がって訳じゃないんだけど」
またくすくすと笑われてしまい、普通にTシャツにしておけば良かった、なんて思ってしまう。
そんな、かわいいと思われたくて柄物のパジャマを選んだんじゃなくて……ただいちばん上にあったものを適当に掴んだだけなんだけど。これ着心地が良くてよく着ていたから。
くそ、もうこれ、悠真さんの前ではもう着ない。
丁寧にひとつずつ釦を外し、袖を脱がせ、前回のようにベッドの下に投げると、慣れたように首筋や肩口に唇を落としながらズボンと下着も剥ぎ取り、同じように投げ捨てた。
ひとりだけ全裸にされてしまったことが恥ずかしくて、でも悠真さんまで脱がれるとどうしていいかわからなくなってしまうから何も言えなかった。
悠真さんの視線があつい。
108
お気に入りに追加
3,032
あなたにおすすめの小説
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~
仁茂田もに
BL
「恋がしてみたいんだが」
アルファの夫から突然そう告げられたオメガのアレクシスはただひたすら困惑していた。
政略結婚して三十年近く――夫夫として関係を持って二十年以上が経つ。
その間、自分たちは国王と正妃として正しく義務を果たしてきた。
しかし、そこに必要以上の感情は含まれなかったはずだ。
何も期待せず、ただ妃としての役割を全うしようと思っていたアレクシスだったが、国王エドワードはその発言以来急激に距離を詰めてきて――。
一度、決定的にすれ違ってしまったふたりが二十年以上経って初恋をやり直そうとする話です。
昔若気の至りでやらかした王様×王様の昔のやらかしを別に怒ってない正妃(男)
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる