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 タオルで躰を拭いて、また新しい下着を貰い、大きなパーカーを頭から被る。
 普段皇輝が着てるもので、背の高い皇輝がオーバーサイズで着ているものだから、そりゃあ僕には肩がすこし見えてしまう程でかい。そのせいなのかなんなのか、今回は下が用意されてなかった。
 ……うん、すけべなのは僕だけじゃなかった。
 この間のパジャマで良かったのに。

「皇輝……」
「着替え済んだ?」
「……下ないんだけど」
「いらないでしょ」
「……」
「はは、似合ってるじゃん、かーわい」
「……馬鹿にして」
「してないしてない、いいじゃん、男はそういうのすきだよ」

 さて髪を乾かすか、と皇輝が背中を押す。
 男はそういうのすきって。……皇輝がすきならまあ……おばさんたちが絶対いない時なら……してやっても構わない、けど。僕ちょろい。

「とはいえ流石にデカすぎたか、碧が着るとその服重そうだな」
「重いよ」
「フードが重くてずれてるもんなー」

 髪を乾かしながら、時折パーカーの前の方を掴んで下ろしてくる。
 フードの重さに負けて首が詰まっちゃうんだよね。背中がちょっと涼しい。
 家の中だから別にいいけど、外だと気になっちゃうな。

「今度は他の貸すわ」
「こないだのパジャマでいいんだけど」
「やだよ」
「えっ」
「色んな俺の服着てる碧が見たいし。折角じゃん」
「……っ」

 思わず裾をぎゅっと握ってしまった。
 だからなんでそんな恥ずかしいことを言うかなあ!僕だって、この服よく皇輝が着てたやつだ、嬉しい、って思ったけど口には出さなかったもんね!

「鏡の中の皇輝すっごいにやにやしてるんだけど」
「鏡の中の碧は真っ赤になっててかわいいんだけど」
「もおおお!そんなことばっかり言う!」
「言うよそりゃ、言わないとお前、伝わらないし勘違いされても困るじゃん」
「……勘違いって」
「ほんとは自分のことすきじゃないんだー、とか思いそうじゃん、碧。折角付き合えたのにそんな擦れ違いで駄目んなるくらいなら、素直に口にした方が多少恥ずくてもまし」

 その通りだけど。その通りですけど。すぐうじうじしちゃいますけど。
 でもそんなに怒涛のデレを貰っても対処しきれない。
 普段から少しずつ出してくれ。

「はーいあと少し乾かしますよ」
「……はい」

 ドライヤーをされてる間は碌に会話なんて出来ない。
 だから数回質問に返すくらいで、自然と視線は鏡の中の皇輝に行ってしまう。
 真剣な顔、ドライヤーを掴む大きな手、筋の浮いた腕、たまに視線があって目元が緩む。
 セットのされてない髪は、もう見慣れてるとはいえ、やっぱり少しどきっとする。
 きりっと決めてる皇輝も、家の中のゆったりとした皇輝も格好良い。油断すると口が開きっぱなしになりそうで、鏡の中の自分がぼけっとした顔になってるのに気付く度に真顔に戻してゆく。

「よし終わり」
「ありがと……」
「どうしよっか」
「へ」

 ドライヤーを仕舞いながら皇輝が問いかけてくる。
 その質問は、と心臓がどっどっどっどっど、と鳴るのがわかる。

「DVD気になるのあった?ゲームする?」
「え、あ、えっと、えっ、あ、そ、そうだね、げ、ゲーム……」
「碧、目が泳いでる」

 皇輝が吹き出す。絶対わかってる。わかっててやってる。
 ぶわっと耳まで赤くなってるのが鏡に映った。

「……っううう」
「こないだの続きね」
「うああああ!」
「部屋行こ」

 腕を引かれるように階段を上がる。皇輝の手が熱い。
 皇輝の部屋までが近くて遠い。数秒だっていうのに。
 また心の準備をする時間がほしい。そんな時間はない。

「んッ」

 部屋に入った瞬間、電気を点けるのとほぼ同時に唇が重なった。
 予想外だった、早過ぎる。んだけど、どうにもキスに弱くて、すぐにそんなのはどうでも良くなってしまう。

「碧あっつい」
「お風呂……出たばっかだし、ドライヤーも、した、ばっか……だからっ」
「うん」
「それより、おわり……?」
「そんな訳ないじゃん」

 2秒もしないようなキスじゃ足りない。
 頭だって撫でてほしいし、ぎゅってされたい。
 口を少し開くと、直ぐに舌が入り込んでくる。不思議な生き物だ。
 柔らかくて、熱くて、動いて、苦しくて、気持ちいい。

「ん、うぅ、は、ッう……んあ」

 軽く噛まれた舌がびりびりする。それをわかってるのかどうか、ぢゅっと音が鳴るまで吸われて、また痺れるような甘い感覚。
 口の中に唾液が溜まって、飲み込むタイミングがわからない。
 皇輝の舌を追っかけて、唇を噛まれて、されるがままになってるだけ。

「んん、ぅあ、ンっ、こぉき……っん、は、ァ」

 すぐに口内に収まりきらなくなった唾液が零れて顎を伝うのがわかった。皇輝の服にしがみついた手が離せない。拭かなきゃ、落ちちゃう、皇輝の服に、ついちゃう。

「やっ、ぅ、んぅ、まっ、ま、くるしっ……」

 数分か数十秒かわからない。
 息が出来なくなって、やっとストップをかけることが出来た。
 唇が離れて、漸く口元を拭える、そう思ったのに、やっぱり手が離せなくて……ただ息を整えてると、皇輝が拭ってくれた。

「ご、ごめ……」
「いーよ、こういうの、興奮する」
「……そゆの、言わないでいい」
「いいじゃん」
「ひゃっ」

 べろりと顎を舐められて、情けない声を出してしまった。
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