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「皇輝土曜日暇?」
「……空いてるけど」
「佐倉と出掛ける用事出来ちゃった」
「はあ!?」
「皇輝も一緒でいいよね」
「お前とふたりっきりにさせる訳がないだろ!」
なんでそんな佐倉と僕をふたりにさせたくないんだろ。
どうみても僕と佐倉は不釣り合いで、疚しいことになんかならないのに。
皇輝と佐倉がふたりの方が心配なんだけど。
「……で、どこ行くの」
「文化祭」
「は」
「文化祭、大学の。佐倉の先輩がいるんだって」
言いながら、そりゃいるだろ、って自分で突っ込んでしまった。
付属大学だぞ、なんなら自分達の先輩だっている。
「わざわざ?」
「まあどうせ僕達も通う訳だし。よく考えたら僕まだ大学内入ったことないんだよね」
「……」
「人も多いだろうし、佐倉きっと声掛けられまくるよ、そゆ時皇輝いたら牽制になるんじゃないかなあ。あ、でも皇輝も声掛けられまくりそう……佐倉がくっついてたらふたりに声掛けるひと減るかな」
「……そこはお前がくっつけよ」
「あはは、外じゃだめだよお」
「……」
え、なんで顔が近付いて……
気付いた瞬間、自分から離れてしまった。
「外!ここ外!学校!」
「いけると思って」
「馬鹿なの!?」
「碧が喜ぶかと思ったんだけど」
「場所考えてよね!」
やっぱりキスをしようとしてたらしい。
正直嬉しいけど、こんなとこではだめだ。
昼休み、屋上、場所取り。いつ黒川と塚山が購買から戻ってくるかわからない。
いや、キスはしたい。めちゃくちゃしたい。
したいけど見られてバレても困る。でもどこですればいいんだろう。
……学生ってのはイチャつくのも大変なんだなあ。
「お待たせ~めっちゃ混んでたわ」
「ほい烏龍茶」
「ありがとー」
購買でパンを買ってきたふたりが、ついでに頼んだお茶を買ってきてくれた。
セーフ、さっきの会話は聞かれてない。
早速座りながら袋を開け、今日も碧は弁当か、とやたら大きな僕の弁当箱を覗き込んでくる。
「おばさんも弁当頑張るねえ」
「毎日じゃないし、大体昨日の残りだよ」
「うちのかーちゃんは朝起きねーよ、自分で朝飯用意して昼は買えってスタイルが当たり前だったわ」
「仕事してるから大変なんだよ、皇輝んちだってそうじゃん」
「うちはそれより料理出来ないだけだし」
そう。おばさんは料理が苦手。
最初は毎日購買やコンビニで買ってたんだけど、その内女子からの弁当差し入れ合戦が始まり、それに困った皇輝が自分で用意するようにしたら、それはそれで今まで受け取らなかったのに誰が作ったんだ論争が起こり、うんざりした皇輝はまた買うだけの生活に戻った。
その話を知ったうちの母さんが漫画みたいねと大爆笑して、それから僕の弁当箱が大きくなった。
皇輝の母親が料理が苦手なのは知っている、だからといって育ち盛りの男子がそれはどうかと、微々たるものだが弁当を多目に持たされるようになったのだった。
最近は来なかったんだけど、ちょっと前まではたまにうちに夕飯を食べに来たりもしてたんだよね。だから母さんも皇輝の好みを知ってたりして。
週に数回来る家政婦さんが作る料理も美味いけど、おばさんの料理も美味いよ、と褒めて貰えた母さんは上機嫌である。
そういえば、女子からの弁当って一回も受け取ったことないんだよな。
その時は何か入ってたりしたらこわいし、まあ誰かひとりを選ぶのも荒れそうだもんな、と思ってたけど、もしかして僕の手前、気にして受け取らない気持ちもあったのだろうか。
そういうの結構、気にするタイプの男なんだよな。
「何か碧機嫌良くなったな」
「んー?別にぃ」
悪い気がする訳ない。
いや、真意は聞けてないんだけど、でもそうだろうなあ、と思うとにやけちゃう。
なんだよ、皇輝結構僕のことすきだよなって。
「てかふたりちゃんと仲直りしたんだ?」
「え?」
「ここ最近おかしかったもんな」
「ぎくしゃくしてたよな、ああいうの結構気を遣うんだぞ~」
「え、え」
「悪かったな」
返し方に困ってると、あっさり皇輝は認めて謝った。
ふたりもあっさりと、まあ仲直りしたんならいいわとパンにかぶりつく。
……そんなあっさりしていいもんなんだ。
ちょっと呆然としながら、皇輝の口に卵焼きを突っ込んだ。
佐倉とか、女子ならもっと突っ込んできそうだけど。
この距離感は有難いけど。でも、僕と皇輝の関係がばれたらどうなるんだろう。
どうもならないような、そんな期待はしてはいけないような。
祝われない関係はちょっと、結構寂しいけど。
でもうん、今はそんなことより、皇輝と付き合えた方に喜んでおくべきだ。
「碧」
「……ん」
「これ」
「ピーマン炒めたやつ」
口を開けたところに放り込んでやる。これ、だけじゃなくて何か言え。
教室ではクールぶってるから、こういうかわいいとこは女子は知らないんだよな、とちょっと優越感もあるけど。
そうだ。
皇輝のそういう良さをわかるのは僕だけでいい。
僕の嫌いなピーマンを皇輝の為にわざわざ入れる母さんも、それをわかって選んで食べる皇輝も、他の女子たちは知らないでいい。
「……空いてるけど」
「佐倉と出掛ける用事出来ちゃった」
「はあ!?」
「皇輝も一緒でいいよね」
「お前とふたりっきりにさせる訳がないだろ!」
なんでそんな佐倉と僕をふたりにさせたくないんだろ。
どうみても僕と佐倉は不釣り合いで、疚しいことになんかならないのに。
皇輝と佐倉がふたりの方が心配なんだけど。
「……で、どこ行くの」
「文化祭」
「は」
「文化祭、大学の。佐倉の先輩がいるんだって」
言いながら、そりゃいるだろ、って自分で突っ込んでしまった。
付属大学だぞ、なんなら自分達の先輩だっている。
「わざわざ?」
「まあどうせ僕達も通う訳だし。よく考えたら僕まだ大学内入ったことないんだよね」
「……」
「人も多いだろうし、佐倉きっと声掛けられまくるよ、そゆ時皇輝いたら牽制になるんじゃないかなあ。あ、でも皇輝も声掛けられまくりそう……佐倉がくっついてたらふたりに声掛けるひと減るかな」
「……そこはお前がくっつけよ」
「あはは、外じゃだめだよお」
「……」
え、なんで顔が近付いて……
気付いた瞬間、自分から離れてしまった。
「外!ここ外!学校!」
「いけると思って」
「馬鹿なの!?」
「碧が喜ぶかと思ったんだけど」
「場所考えてよね!」
やっぱりキスをしようとしてたらしい。
正直嬉しいけど、こんなとこではだめだ。
昼休み、屋上、場所取り。いつ黒川と塚山が購買から戻ってくるかわからない。
いや、キスはしたい。めちゃくちゃしたい。
したいけど見られてバレても困る。でもどこですればいいんだろう。
……学生ってのはイチャつくのも大変なんだなあ。
「お待たせ~めっちゃ混んでたわ」
「ほい烏龍茶」
「ありがとー」
購買でパンを買ってきたふたりが、ついでに頼んだお茶を買ってきてくれた。
セーフ、さっきの会話は聞かれてない。
早速座りながら袋を開け、今日も碧は弁当か、とやたら大きな僕の弁当箱を覗き込んでくる。
「おばさんも弁当頑張るねえ」
「毎日じゃないし、大体昨日の残りだよ」
「うちのかーちゃんは朝起きねーよ、自分で朝飯用意して昼は買えってスタイルが当たり前だったわ」
「仕事してるから大変なんだよ、皇輝んちだってそうじゃん」
「うちはそれより料理出来ないだけだし」
そう。おばさんは料理が苦手。
最初は毎日購買やコンビニで買ってたんだけど、その内女子からの弁当差し入れ合戦が始まり、それに困った皇輝が自分で用意するようにしたら、それはそれで今まで受け取らなかったのに誰が作ったんだ論争が起こり、うんざりした皇輝はまた買うだけの生活に戻った。
その話を知ったうちの母さんが漫画みたいねと大爆笑して、それから僕の弁当箱が大きくなった。
皇輝の母親が料理が苦手なのは知っている、だからといって育ち盛りの男子がそれはどうかと、微々たるものだが弁当を多目に持たされるようになったのだった。
最近は来なかったんだけど、ちょっと前まではたまにうちに夕飯を食べに来たりもしてたんだよね。だから母さんも皇輝の好みを知ってたりして。
週に数回来る家政婦さんが作る料理も美味いけど、おばさんの料理も美味いよ、と褒めて貰えた母さんは上機嫌である。
そういえば、女子からの弁当って一回も受け取ったことないんだよな。
その時は何か入ってたりしたらこわいし、まあ誰かひとりを選ぶのも荒れそうだもんな、と思ってたけど、もしかして僕の手前、気にして受け取らない気持ちもあったのだろうか。
そういうの結構、気にするタイプの男なんだよな。
「何か碧機嫌良くなったな」
「んー?別にぃ」
悪い気がする訳ない。
いや、真意は聞けてないんだけど、でもそうだろうなあ、と思うとにやけちゃう。
なんだよ、皇輝結構僕のことすきだよなって。
「てかふたりちゃんと仲直りしたんだ?」
「え?」
「ここ最近おかしかったもんな」
「ぎくしゃくしてたよな、ああいうの結構気を遣うんだぞ~」
「え、え」
「悪かったな」
返し方に困ってると、あっさり皇輝は認めて謝った。
ふたりもあっさりと、まあ仲直りしたんならいいわとパンにかぶりつく。
……そんなあっさりしていいもんなんだ。
ちょっと呆然としながら、皇輝の口に卵焼きを突っ込んだ。
佐倉とか、女子ならもっと突っ込んできそうだけど。
この距離感は有難いけど。でも、僕と皇輝の関係がばれたらどうなるんだろう。
どうもならないような、そんな期待はしてはいけないような。
祝われない関係はちょっと、結構寂しいけど。
でもうん、今はそんなことより、皇輝と付き合えた方に喜んでおくべきだ。
「碧」
「……ん」
「これ」
「ピーマン炒めたやつ」
口を開けたところに放り込んでやる。これ、だけじゃなくて何か言え。
教室ではクールぶってるから、こういうかわいいとこは女子は知らないんだよな、とちょっと優越感もあるけど。
そうだ。
皇輝のそういう良さをわかるのは僕だけでいい。
僕の嫌いなピーマンを皇輝の為にわざわざ入れる母さんも、それをわかって選んで食べる皇輝も、他の女子たちは知らないでいい。
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