157 / 161
157*
しおりを挟む
「う、んう……」
はあはあと肩で息をしていると、また唇を塞がれる。なんでこのタイミングで、と思いつつも、必死でその舌に応えた。
ただでさえ息苦しかったところに、更に唇を塞がれてしまっては息をするところが鼻しかなくて、でもそれじゃあ上手く呼吸が出来なくて、口が離れる一瞬で息を吸って、また重なっては息が出来なくなる。
「ふ、う、ん……っ、も、いきっ……」
「苦しい?」
「んぅ、息、できなっ……い」
「ごめんね、蕩けてるユキがかわいくて」
「……ん、」
それにしたってタイミングがあるだろ、と思うけど、……でもまあジルがそうしたいと思ったなら仕方ない、おれだって相手の状況を気にせず勝手にしてみたいことはある。
「で、でも」
「うん?」
「ゆっくり、して、今……イったばっか、だから」
「ゆっくりでいいの?」
「へ……」
「ユキの顔は早く、って顔してる」
「どんな顔……」
早く欲しいって顔、と言いながらおれの口許を拭う。
その手に、また口許を汚してしまったのに気付いた。
慌てて手の甲で拭う。なんでおれこんなに下手くそなんだろう、いつもべたべたになっちゃう。ジルはこんなに綺麗な顔をしているのに。
「久し振りだから、こっちはキツいかも」
「……ん、っ」
「どうしよっか、最初の時の香油使う?」
「つ、使ったら、怒る……」
「怒っちゃうかあ」
それは困るな、と笑いながら小瓶を片手に戻ってくるジルに、それなに、と視線を向けると、違うやつだよ、と蓋を取る。
あの忘れられない、甘ったるいにおいとは違う、ほのかなかおり、それだけでほっとしてしまう。
基本的に、アロマみたいなもので、どういう効果、といってもめちゃくちゃ効く訳ではない。
言われたらそのような気がする、みたいな感覚なんだけど、あの香油だけは効き過ぎる、ただでさえ制御出来ない躰が余計に熱くなって、躰が揺れて、自分じゃなくなってしまうような。
それが嫌だった。
「足開いて」
「……う、」
「いや?」
「……いや、じゃ、ない、恥ずかしいだけ、で……」
「もう何度もしてるのに相変わらず初々しいねえ」
「……いや?こまる?」
「かわいいよ、どんなユキも」
「……」
ジルの甘い声はぞわぞわする。
耳の後ろが、肩が、背中が、腰が、ぞわ、として、溶けてしまいそう。
かわいいと言われるのが、恥ずかしくて、そんな訳ないと思うのに嬉しくて、もっと聞きたくて、その為に言うことを聞きたくなってしまう。
まるでその言葉に魔法が掛かってしまってるようだ。
「……ッ」
「ん、良い子」
「んァ……」
おずおずと足を開くと、優しい声が耳を擽る。
まだ触れられてないのに、それだけで甘ったるい声が漏れてしまった。
「……ん、ふ……っう」
ぬるついた指が後ろに触れて、ゆっくりナカを拡げていく。
手持ち無沙汰な指先は、シーツを握り締めていたけど、指を増やされ、慣らされる内にそれじゃ足りなくなって、枕を抱き締めて爪を立てる。
噛み付いても引っ掻いても枕は文句を言わない、傷付かない、口許に押し付ければ声も殺せる、万能アイテムだ。
そんなことを考えているのがばれるのか、ジルはあまりいい顔をしない。
でも抱き締められる距離にいないジルが悪いと思う。
本当は、ぎゅっとして離れたくない。
そんなの、何も先に進まないのはわかるけど。
「それ、抱き締めてもいいけど……声は我慢しないで」
「んぅ……」
「かわいい声と顔を隠さないで、俺に見せて」
「……っあ」
枕に埋めていた顔を上げさせられ、軽くキスをする。
毎回声を聞かせてって言うんだけどな、と苦笑する声に、仕方ないじゃん、と思う。
自分の耳に入る甘ったるい声が自分じゃないみたいで恥ずかしいし、つい目の前にあるものに噛み付いてしまう。
……だから、つい唇を拭うように触れた指に軽く歯を立ててしまうのは、癖みたいなもので……仕方ないと思う。
「ん、ふぅ……ん、は……ぁ」
「……俺の指すき?」
「ん、んう、しゅき……」
「俺は?」
「らいすき……んッ」
「ふふ、そっか」
ジルの指を、ぺろぺろ舐めながら、あれ、おれは?おれのことはすきって言ってくれないの、とぼんやり考える。
言ってくれたら嬉しい、安心するのに。
「じぅ……」
「うん?」
「お、おれは……?」
「かわいいよ」
「ちが、それじゃなくて……っう、」
わかってて逸らしてるんだろうな、って、おれだってわかる。
自分の唾液で濡れた指先を握り締めて、じっとジルを見つめる。
その間もナカを慣らす指先は止まらないから、時折躰が跳ねてしまう。
「……おれのこと、は?す、すきじゃ」
「愛してるよ」
「ぅえ」
「愛してる」
「……!」
その言葉だって何度か聞いた。聞いたけど、でも慣れることなんてない。
胸がきゅうきゅうする、恥ずかしくて、嬉しくて、満たされる。
「ふふ、嬉しい?ユキの躰はわかりやすいなあ」
「んッ、あ、あう」
「もう大丈夫そう?……ナカ、すごく欲しそうだけど」
「ん、ん、い、いぃ、からっ……」
早く挿入れて、なんて、いつから言えてしまえるようになったんだろう。
はあはあと肩で息をしていると、また唇を塞がれる。なんでこのタイミングで、と思いつつも、必死でその舌に応えた。
ただでさえ息苦しかったところに、更に唇を塞がれてしまっては息をするところが鼻しかなくて、でもそれじゃあ上手く呼吸が出来なくて、口が離れる一瞬で息を吸って、また重なっては息が出来なくなる。
「ふ、う、ん……っ、も、いきっ……」
「苦しい?」
「んぅ、息、できなっ……い」
「ごめんね、蕩けてるユキがかわいくて」
「……ん、」
それにしたってタイミングがあるだろ、と思うけど、……でもまあジルがそうしたいと思ったなら仕方ない、おれだって相手の状況を気にせず勝手にしてみたいことはある。
「で、でも」
「うん?」
「ゆっくり、して、今……イったばっか、だから」
「ゆっくりでいいの?」
「へ……」
「ユキの顔は早く、って顔してる」
「どんな顔……」
早く欲しいって顔、と言いながらおれの口許を拭う。
その手に、また口許を汚してしまったのに気付いた。
慌てて手の甲で拭う。なんでおれこんなに下手くそなんだろう、いつもべたべたになっちゃう。ジルはこんなに綺麗な顔をしているのに。
「久し振りだから、こっちはキツいかも」
「……ん、っ」
「どうしよっか、最初の時の香油使う?」
「つ、使ったら、怒る……」
「怒っちゃうかあ」
それは困るな、と笑いながら小瓶を片手に戻ってくるジルに、それなに、と視線を向けると、違うやつだよ、と蓋を取る。
あの忘れられない、甘ったるいにおいとは違う、ほのかなかおり、それだけでほっとしてしまう。
基本的に、アロマみたいなもので、どういう効果、といってもめちゃくちゃ効く訳ではない。
言われたらそのような気がする、みたいな感覚なんだけど、あの香油だけは効き過ぎる、ただでさえ制御出来ない躰が余計に熱くなって、躰が揺れて、自分じゃなくなってしまうような。
それが嫌だった。
「足開いて」
「……う、」
「いや?」
「……いや、じゃ、ない、恥ずかしいだけ、で……」
「もう何度もしてるのに相変わらず初々しいねえ」
「……いや?こまる?」
「かわいいよ、どんなユキも」
「……」
ジルの甘い声はぞわぞわする。
耳の後ろが、肩が、背中が、腰が、ぞわ、として、溶けてしまいそう。
かわいいと言われるのが、恥ずかしくて、そんな訳ないと思うのに嬉しくて、もっと聞きたくて、その為に言うことを聞きたくなってしまう。
まるでその言葉に魔法が掛かってしまってるようだ。
「……ッ」
「ん、良い子」
「んァ……」
おずおずと足を開くと、優しい声が耳を擽る。
まだ触れられてないのに、それだけで甘ったるい声が漏れてしまった。
「……ん、ふ……っう」
ぬるついた指が後ろに触れて、ゆっくりナカを拡げていく。
手持ち無沙汰な指先は、シーツを握り締めていたけど、指を増やされ、慣らされる内にそれじゃ足りなくなって、枕を抱き締めて爪を立てる。
噛み付いても引っ掻いても枕は文句を言わない、傷付かない、口許に押し付ければ声も殺せる、万能アイテムだ。
そんなことを考えているのがばれるのか、ジルはあまりいい顔をしない。
でも抱き締められる距離にいないジルが悪いと思う。
本当は、ぎゅっとして離れたくない。
そんなの、何も先に進まないのはわかるけど。
「それ、抱き締めてもいいけど……声は我慢しないで」
「んぅ……」
「かわいい声と顔を隠さないで、俺に見せて」
「……っあ」
枕に埋めていた顔を上げさせられ、軽くキスをする。
毎回声を聞かせてって言うんだけどな、と苦笑する声に、仕方ないじゃん、と思う。
自分の耳に入る甘ったるい声が自分じゃないみたいで恥ずかしいし、つい目の前にあるものに噛み付いてしまう。
……だから、つい唇を拭うように触れた指に軽く歯を立ててしまうのは、癖みたいなもので……仕方ないと思う。
「ん、ふぅ……ん、は……ぁ」
「……俺の指すき?」
「ん、んう、しゅき……」
「俺は?」
「らいすき……んッ」
「ふふ、そっか」
ジルの指を、ぺろぺろ舐めながら、あれ、おれは?おれのことはすきって言ってくれないの、とぼんやり考える。
言ってくれたら嬉しい、安心するのに。
「じぅ……」
「うん?」
「お、おれは……?」
「かわいいよ」
「ちが、それじゃなくて……っう、」
わかってて逸らしてるんだろうな、って、おれだってわかる。
自分の唾液で濡れた指先を握り締めて、じっとジルを見つめる。
その間もナカを慣らす指先は止まらないから、時折躰が跳ねてしまう。
「……おれのこと、は?す、すきじゃ」
「愛してるよ」
「ぅえ」
「愛してる」
「……!」
その言葉だって何度か聞いた。聞いたけど、でも慣れることなんてない。
胸がきゅうきゅうする、恥ずかしくて、嬉しくて、満たされる。
「ふふ、嬉しい?ユキの躰はわかりやすいなあ」
「んッ、あ、あう」
「もう大丈夫そう?……ナカ、すごく欲しそうだけど」
「ん、ん、い、いぃ、からっ……」
早く挿入れて、なんて、いつから言えてしまえるようになったんだろう。
61
お気に入りに追加
3,552
あなたにおすすめの小説
竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。
重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。
少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である!
番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。
そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。
離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。
翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる